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ジャニー喜多川氏の性加害の問題で、ジャニーズ事務所は7日午後2時から都内で記者会見し、藤島ジュリー氏は性加害について認め、謝罪した上で社長を辞任したことを明らかにしました。後任は所属タレントの東山紀之氏だということです。

会見の内容を最新の情報から時系列で詳しくお伝えします。

会見で語った9つのポイント 専門家はどう見たか
会見を見つめる性被害を訴えてきたメンバーは

会見終わる 約4時間にわたって質疑

都内の会場で午後2時から始まったジャニーズ事務所の会見は、およそ4時間にわたり午後6時過ぎに終了しました。

東山氏「会社として機能していない」

会社のガバナンス体制の不備について質問を受けた東山氏は「間違っていたと思います。取締役が開かれていない、会社として機能していない。ちゃんと作っていくべきだと考えています」と述べました。

また、藤島氏は「社長になるまではジャニー氏とメリー氏の2人が株主で、2人が意思決定者で、私を含めて取締役が機能していませんでした。今まで出来ていなかった部分は会社法にのっとって、企業として信頼いただけるような体制を新社長に必ず作っていただきたい」などと述べました。

井ノ原氏「“そんたく”は日本にはびこっている」

テレビ局がジャニーズ事務所にそんたくしてきたのではないかという質問に、井ノ原氏は「ジャニーさんやメリーさんがこう言ったからこうしてるという昔のタイプのスタッフがいたのも事実で、今は、変えようということを毎日言っています。ただ、『そんたくをなくします』といっても急になくなるのは難しい。“そんたく”は日本にはびこっているからこれをなくすのは本当に大変だと思う。皆さんの問題でもあると思うので皆さんも一緒に考えてご協力いただきたい」と呼びかけました。

東山氏「これほどの落胆はなかった」

ジャニー氏の性加害を知った後の心情について、東山氏は「自分の根本であったものがすべて無くなった思いです。人生というのはいいことばかりではなく、思いのほか落胆の連続ですが、これほどの落胆はなかったです。生きている意味を含めて考えました」と述べました。

東山氏「自分の運命だと思い社長引き受ける」

東山氏は事務所の次の社長に就任することについて「僕が打診を受けたのが8月頭で提言を受ける前です。藤島が苦労していたので話を聞いて一晩考えて引き受けることにしました。ただ僕も非常に悩みましたし、できるできないかではなく、やるかやらないかだと思い、自分の運命だと思い引き受けることにしました」と述べました。

藤島ジュリー氏「ジャニー喜多川氏の性加害確かめなかった」

藤島ジュリー氏はジャニー喜多川氏の性加害を知っていたのではという質問に対し、「暴露本が出たり雑誌で特集が組まれているのは知っていたが、当時、確かめなかったのが私の責任であり、罪悪感がないというのは全くない。親族であっても物を言えなかったというのが弊社のいびつなところで当時は何もできなかった」と述べました。

東山氏「役職員は見て見ぬふり」

東山氏は「喜多川氏の性加害が行われていた当時から、役職員は見て見ぬふりをして何の対策もしなかった。事務所としてこの点に対して深く深くおわびいたします。新しい事務所、新社長として徹底した再発防止策を考えるとともにガバナンスの再構築を行っていきます。私はこのために命をかけて取り組んでいきます」と述べました。

井ノ原氏「親御さんにも不安にならないよう声がけ」

所属タレントや保護者への対応について、井ノ原氏は「今回の会見について何も説明もないままご家庭で見るのは不安に感じると思い、10代の子には直接会って、こういう会見があるよと伝えました。小学生の子たちにはリモートですが親御さんにも不安にならないような声がけをさせてもらいました。『うちの子はどうなんだろう』とかいろいろな不安があると思うので、出来るかぎりの時間を設けてお答えしたいと思っています」と述べました。

藤島ジュリー氏「失望してほしくない」

この会見を見ているファンに向けてと問われると、藤島氏は涙を浮かべながら「応援してくれているファンには本当に感謝の気持ちしかない。みんなそういうことがあってスターになっているわけではなく、1人ずつが本当に努力して地位を勝ち取っている。そこは失望してほしくない」と話しました。

イギリスBBC「業界で隠されてきた最悪の秘密」

ジャニー喜多川氏の性加害問題に関する番組を手がけたイギリスの公共放送BBCは、ジャニーズ事務所の記者会見について、記者の解説を交えて伝えました。

このなかで、BBCの記者は「藤島ジュリー氏が、ジャニー喜多川氏が未成年に虐待をしたことを初めて認めた」と説明しました。

そのうえでこの問題に関するメディアの報道に関して「私が取材したほとんどの人がこれは日本のエンターテインメント業界で隠されてきた最悪の秘密だと話していた」と伝えました。

そのうえで、ジャニー喜多川氏は亡くなるまで若手を育てるなどして国民的英雄のような存在だったとした上で「こうした状況が被害の声をあげることを困難にしたほか、ジャニーズ事務所のタレントを起用する放送局がこの問題を報じることを難しくしていた」と解説しました。

井ノ原氏「権力持たないよう常日頃話し合っている」

事務所の風通しについて井ノ原氏は「僕はジャニーズアイランド代表取締役社長としてジャニーズJr.の育成をしている。僕は性加害はしませんが、権力を持つことはあり得るのですごく気をつけている。オーディションは僕の好みだけでなくいろんな大人の目でみているし、親御さんとも話し合いをしたいと思っている。僕や部下が権力を持たないように常日頃話し合っている」と述べました。

東山氏「まずは努力を続ける」

この会見を見ているファンに向けてと問われると、東山氏は「過去は変えられない。裏切られたと思った人もいる。信頼勝ち取るのは至難の業でこれから僕らが作るエンタメの世界を信じていただくためにタレント1人1人が自覚を持って取り組むことが近道だ。その信頼を勝ち取るのは個人の力、グループの力が合わさって初めて結実する。まずは努力を続けることだ」と話しました。

東山氏「平等でフラットな関係構築していきたい」

東山氏は「風通しがよかったかと問われると、絶対的な存在があったので風通しは悪かった。喜多川氏と藤島メリー氏が専制主義的な感じで存在していたので、ジレンマは常に感じていました。井ノ原と密に連絡を取り合い、みんな平等でフラットな関係を構築していきたいと考えています」と述べました。

東山氏「被害者救済の委員会設置」

東山氏は、第三者による被害者救済の委員会を設けるのかという質問に対し、「設置はする。それに向けてまさに動いている。補償も含めてこれから動きます」と述べました。

藤島ジュリー氏「ケア以外の業務執行には関わらない」

藤島ジュリー氏は「所属タレントも非常に傷ついている。彼らのケアをすることが私の仕事だと思っている。それ以外は業務執行には関わらないつもりだ」と話しました。

東山氏「メディアとは対話は必要」

特別チームの報告書で今回の問題の背景に「メディアの沈黙」があると指摘されたことについて、今後の方針を問われた東山さんは「メディアとは対話は必要だと思う。深いところは分からないが、喜多川氏やうちの事務所がすべて悪いと思っている。僕自身がやることで対話が深まればいいと思う」と話していました。

藤島ジュリー氏「私が十分な調査できていなかった」

性加害の認定について認識が変わったか問われた藤島ジュリー氏は「考えが変わった訳ではなく、あの時点では当事者も亡くなっていて私が事実認定をするに至らなかったことは、私が十分な調査をできていなかった中で大変申し訳ないと思っている。考えが変わった訳ではありません」と述べました。

被害者への補償について問われ「おじの起こした問題ですのでめいとして責任を取りたいと考えております」と述べました。

副社長も引責辞任

また藤島ジュリー氏は「白波瀬傑・代表取締役副社長も今回の事態を重く受け止め今月5日をもって引責辞任した」と述べました。

当事者の会メンバー会見を見つめる

ジャニー喜多川氏による性被害を訴えてきた「ジャニーズ性加害問題当事者の会」のメンバー9人は都内に集まり、事務所の会見を伝える中継をモニターを通して見つめました。

午後2時からの会見でジュリー氏がジャニー喜多川氏による性加害があったという認識を示し謝罪すると、「よし」、「夢を見ているようだ」という声があがりました。

一方、東山氏が「性加害のことを知っていたか」という質問に対して「うわさだと信じていた」と答えると、平本淳也代表は「残念だ」と漏らしていました。

東山氏「被害者は数百人の可能性 法超え救済補償」

被害者の心のケアについて東山氏は「提言を受けて被害者は数百人の可能性がある。大変センシティブな問題だ。心のケアという窓口を作って、そこで声を上げてくれたらうれしいがなかなかそういうことは難しいだろう。どのぐらい時間かかるか分からないが僕の考えは法を超えて救済補償が必要だと思っている」と話しました。

東山氏「人類史上最も愚かな事件」

東山氏は「特別チームの提言をいただき、そこから出来る作業には限界がありましたが、急ぎ私たちに何が出来るかを探っています。大変な事件、人類史上最も愚かな事件だと思います。大変な道のりになりますがまずその一歩を踏み出さなければいけない。皆さんの思いを受けてまずは再出発させていただこうと思っています」と述べました。

東山氏「名称に関して大変議論した」

「ジャニーズ事務所」という名称について、東山紀之さんは「名称に関して大変議論した。どうするべきか、これだけの犯罪なので、これを引き続き守るべきか。ただ僕が思ったのはジャニーズというのは創業者の名前であり初代でもあり、大事なのはこれまでタレントが培ってきたプライドなど、その表現の1つと思っている」と述べました。

社名は変更しないのかと質問を受けて「解体的見直しが必要との意見を踏まえたうえで理解している。沢山の人が被害に遭ったこともわかっています。僕自身も名前を変え再出発した方がもしかしたら正しいのかもしれません。ただ僕らはファンの方に支えられているのでそれをどこまで変更するのがいいのかと考えてきました。今後はそういうイメージを払拭できるほど、みんなが一丸となって頑張るべきかだと今は判断しています」と述べ、現時点で、社名変更の考えがないことを明らかにしました。

藤島ジュリー氏「同族経営が弊害」

藤島ジュリー氏は「同族経営が弊害であることは変えていかなければならないと 認識していますが、今すぐ株をどうにかできるかは簡単な問題ではありません。今ここで、いつ、どういう風に変えるかは大変難しいことなので、具体的に申し上げられない」と述べました。

東山氏「被害に遭った方との対話必要」

被害者が直接の対話を求めていることについて、東山氏は「被害に遭った方との対話は必要だと思う。双方の理解を深めるためにも意見交換という意味でも大事だ」と話し、藤島ジュリー氏は「全く同じ意見で被害を訴えている当事者の話はうかがっていきたい」と話していました。

井ノ原氏「えたいの知れない、触れてはいけない空気」

井ノ原氏は「僕は小学6年生でジャニーズ事務所に入り、そういった本が出ていたので、まわりもみんなそうなのかなとうわさはしていた。そうなったらどうしようという話もしていた。小学生とか中学生の自分たちがおかしいんじゃないかとか、うわさを聞いたぞと言えなかったのは今となっては後悔しています。 言い訳になりますが、えたいの知れない、触れてはいけない空気みたいなものがありました」と述べました。

東山氏「喜多川氏 正しいと信じていた」

会見で東山氏は「恥ずかしながらみずから行動することはできませんでした。うわさとしては聞いていましたが、現場に立ち会ったこともなく、相談もなかったので、みずから行動できなかったことを反省して今後は対応していきたい」と述べました。

また、問題が起きた背景について「喜多川氏は絶対的な存在で僕らは正しいと信じていた。今となっては恥じている。さまざまな暴露本が出ていて、そういううわさがあるのを知っていたが、あくまでもうわさだと喜多川氏を信じていた」と述べました。

藤島ジュリー氏「補償が進めば代表取締役から降りる」

藤島ジュリー氏は「いろいろ決めていく上で代表取締役でいるほうが良いと事務所で判断してとどまっていますが、補償が速やかに進めば代表取締役から降りるということは考えております」と述べました。

東山氏「新社長として再発防止を行う」

東山紀之さんは「被害者の補償については真摯に向き合って誠実に対応させて頂きたい。新しい事務所作る取り組みとして、新社長として特別チームの事実認定と提言を踏まえて、外部からコンプライアンス人権侵害防止の体制を整備するなど、再発防止策を行っていく」と述べました。

藤島ジュリー氏「被害者に補償」

藤島ジュリー氏は「被害者の方々に関しましてはジャニーズ事務所として補償を行ってまいります」と述べました。

東山紀之氏「年内に表舞台から引退」

東山紀之さんは「まずは喜多川氏の性加害を認め謝罪させて頂きます。被害にあわれた方々長きにわたり、心身ともに辛い思いをした方々に本当に申し訳なく思います。この事実に真摯に向き合うため私は年内をもって表舞台から引退をします。この人生をかけて取り組んでいく覚悟であります」と述べました。

藤島ジュリー氏 社長辞任 後任は東山紀之氏

ジャニー喜多川前社長の性加害をめぐる問題でジャニーズ事務所の藤島ジュリー氏が、性加害について認めて謝罪し、社長を辞任しました。
後任は、所属タレントの東山紀之氏だということです。

藤島ジュリー氏は「私は特別チームの提言を真摯に受け止め、9月5日をもって社長を辞任いたしました。新しい社長は同席している東山が務めます」と述べました。

性加害について事務所として初めて認め謝罪

ジャニー喜多川前社長の性加害の問題でジャニーズ事務所は、都内で記者会見し、前社長による性加害について事務所として初めて認め、謝罪しました。

会見の冒頭、藤島ジュリー氏が「故ジャニー喜多川による性加害問題について2023年8月特別チームによる提言が公表されましたが、ジャニーズ事務所としても個人としましてもジャニー喜多川に性加害はあったと認識しております。被害者の皆さまに心よりおわび申し上げます」と述べました。

14:00

【ジャニーズ事務所の会見始まる】

ジャニーズ事務所の会見が午後2時、都内の会場で始まりました。
藤島ジュリー氏と、東山紀之氏、井ノ原快彦氏などが出席しています。

会見出席者の略歴

藤島ジュリー氏とは

ジャニーズ事務所の藤島ジュリー氏は、ジャニー喜多川前社長の姉の藤島メリー氏の娘です。

1993年にジャニーズ事務所に入り、マネージャーやスタイリスト、通訳などの業務を担当したあと、1998年からは取締役として経営にも携わりました。4年前、ジャニー氏の死去後に代表取締役社長に就任してからは、経営の中心を担ってきました。

おととし、名誉会長だった母のメリー氏が死去したあとは、ジャニーズ事務所の100%の株主となっています。

ジュリー氏はことし5月、前社長による性被害を訴える元所属タレントなどに向け、お詫びする動画とともに、見解と対応を説明する文書を公開しました。このなかでジュリー氏は、性加害の事実を「知らなかったでは決してすまされない話だと思っておりますが、知りませんでした」と述べています。

そのうえで、会社運営に関わる重要な情報は、ジャニー氏とメリー氏の2人以外は知ることができない状態が恒常化し、会社の管理や運営に対する発言もできない状況だったと説明しました。

【報告書では】
一方、再発防止特別チームの報告書では、ジュリー氏が取締役に就任したころには、1980年代に出版された暴露本や1999年の週刊文春による特集もあり、前社長による性加害の疑惑を認識していたと認められると指摘しました。

さらに、自身が社長に就任してからも性加害の事実の調査などをせず、事務所としてあいまいな態度を維持してきたとして事務所が「解体的出直し」をするため、ジュリー氏は代表取締役社長を辞任すべきだと提言しました。

東山紀之氏とは

東山紀之さんは神奈川県出身の56歳。
1985年、3人組のグループ「少年隊」として「仮面舞踏会」でレコードデビュー、歌って踊れる男性アイドルとして次々とヒット曲を出し、人気を博しました。

俳優としてもドラマや舞台に出演するなど最年長の所属タレントとして事務所を支え、近年は、民放のニュース情報番組でメインキャスターも務めています。

井ノ原快彦氏とは

井ノ原快彦さんは東京都出身の47歳。
井ノ原さんは1995年、「V6」のメンバーとして「MUSIC FOR THE PEOPLE」でCDデビュー、数々のヒット曲を出し、人気を博しました。

個人としては俳優や司会業も行い、NHKの朝の情報番組のキャスターも務めました。
去年からは、滝沢秀明氏のあとを継ぐ形でジャニーズJr.をプロデュースする事務所の関連会社「ジャニーズアイランド」の社長も務めています。

会見の注目点

ジャニーズ事務所の記者会見で特に注目されるのが、事務所として性加害を認めるかや、被害者の救済に向けた具体策。そして藤島ジュリー社長の進退を含む今後の体制です。

1.前社長の性加害認め 謝罪するか

先月29日の外部の専門家による特別チームの報告書では、事務所が再出発を図る最初の1歩としてジャニー前社長の性加害が事実であることを認め、真摯に謝罪することが不可欠だと指摘しました。

事務所がことし5月に公開した動画では、藤島ジュリー社長が一連の性被害の告発について前社長が亡くなっているため個別の告発内容が事実か判断するのは容易ではないという見解を示していて、特別チームの報告書を受け事務所として前社長の性加害を認め、謝罪するかどうかが注目されます。

2.藤島社長の進退 今後の事務所体制は

特別チームの報告書では、問題が起きた背景のひとつに経営者による違法行為などが行われた場合に誰も止めることができないという同族経営の弊害などを指摘し、解体的出直しのため前社長のめいである藤島ジュリー社長は辞任すべきとしています。

7日の会見では藤島社長の進退を含む今後の事務所の体制についても示される見通しで、藤島社長が辞任した場合には誰が後任の社長となるかが注目されます。

さらに、前社長の名前が入った現在の事務所の名称を変更するかどうかや、藤島社長が現在所有している事務所のすべての株を手放すかどうかなども焦点となっていて、今回の問題を受けて事務所が変わっていく姿勢を示せるかが問われています。

3.被害者の救済 具体策は

特別チームの調査報告書では、前社長による性加害を受けた被害者に対して、被害者に真摯に謝罪し、すみやかに被害者と対話を開始してその救済に乗り出すべきであるとしたうえで、被害回復のための適正な補償をする「被害者救済措置制度」を直ちに構築すべきと指摘しました。

7日の会見では、前社長による性加害を受けた被害者を個別に認定していく手続きや、被害者への補償の中身など、救済に向けた具体策がどこまで示されるかもポイントになります。

英BBCの番組からこれまでの経緯

ことし3月、イギリスの公共放送BBCが、前社長からの被害を訴える元所属タレント3人の証言を、ドキュメンタリー番組で発信したことをきっかけに、波紋が広がりました。

4月には、2016年まで事務所に所属し、「ジャニーズJr.」として活動していたカウアン・オカモトさんが都内で会見を開き、前社長から受けた性被害について名前と顔を出して証言しました。

それまで報じて来なかったNHKを含むテレビや全国紙が報じ始め、被害を受けたと訴える元タレントたちが実名で次々と声を上げるようになりました。

こうした動きを受け、5月、ジャニーズ事務所は文書と動画を公表し、藤島ジュリー社長が被害を訴える人たちに謝罪しましたが、前社長の性加害については「知らなかったでは決してすまされない話だと思っておりますが、知りませんでした」と説明しました。

6月、元タレントたちが「ジャニーズ性加害問題当事者の会」を結成し、被害の認定と謝罪、それに補償を求めていくため活動を始めます。

波紋は国際社会にも広がります。
ビジネスと人権をめぐる問題を調査する「国連人権理事会」の専門家が来日し、この問題を調査。

先月会見した専門家は、「数百人が性的搾取と虐待に巻き込まれるという深く憂慮すべき疑惑が明らかになった」などとする見解を示しました。
会見を見守った当事者の会のメンバーの中には、涙を流す人も見られました。

そして先週、ジャニーズ事務所が設置した外部の専門家による特別チームが調査報告書を公表。
前社長がおよそ60年にわたり多数の未成年の少年に性加害を繰り返していたことを認定した上で、被害者への適正な補償制度を構築するよう事務所に指摘しました。

これに対し、当事者の会は制度の具体化に向けて事実の究明と被害者の救済に取り組む委員会の設置を求めています。

背景の一つに“メディアの沈黙”

これまで報じてこなかったメディアの責任も問われています。

先月29日の外部の専門家による特別チームの調査報告書では、裁判で性加害の事実が認定されているにもかかわらず、訴訟結果すらまともに報道されおらず、メディアとして極めて不自然な対応だとして、今回の問題の背景の一つに、“メディアの沈黙”があるとしています。

そのうえで「マスメディア側に前社長の性加害を報道するとタレントの番組出演や雑誌掲載がなくなるのではという危惧から、報道を控えた状況があったのではないか」と指摘しています。

また、この問題を調査した国連人権理事会の専門家も先月の会見で「日本のメディアは数十年にもわたりこの不祥事のもみ消しに加担したと伝えられている」と報道機関の責任について言及していました。

未成年の少年たちに対する長期にわたる広範な被害を認定した特別チームの調査報告書を受け、先週、テレビ局は相次いでコメントを出しました。

NHKは「調査報告書で、ジャニー喜多川氏による性加害について『マスメディアが正面から取りあげてこなかった』などと指摘していることを重く受け止めています」とした上で、「ジャニーズ事務所に対しては、被害者救済と再発防止に取り組むよう要望するとともに、その実施状況を確認しながら、人権尊重の観点から、適切に対応していきたいと考えています」などとコメントしました。

SNSなどではメディアがなぜこの問題をこれまで伝えてこなかったのか検証を求める声や、今後、タレントの起用などをめぐりどのような判断するのかを問う声が相次いでいます。

企業にも求められる人権を守る働きかけ

先月4日、ジャニー喜多川前社長による性被害の訴えについて調査を行った国連の人権理事会は会見で、「日本のすべての企業が積極的に『人権デュー・ディリジェンス』を実施し、虐待に対処するよう強く促す」と述べました。

「人権デュー・ディリジェンス」とは、企業が自社だけでなく取引先などでも人権侵害が行われていないかチェックし、問題があれば改善に向けて働きかける取り組みで、2011年に国連人権理事会で採択された、企業活動と人権についての国際文書の中に明記されました。

日本でも去年、国がガイドラインを策定し、企業に対して自社や取引先の活動に人権侵害がないかをチェックし、その恐れがあれば、関係先の企業に▽質問票を送ったり▽対話の場を設けたりして、防止や軽減する仕組みをつくるよう求めています。

ジャニーズ事務所のタレントをCMに起用する企業のなかにも、「人権デュー・ディリジェンス」の仕組みを設けているところがあり、NHKの取材に対し、▽事務所に対面を含めて問い合わせを行っていると答えた企業や、▽性加害の問題は自社の人権に関する基本的な考え方に反するといった見解を事務所に伝えたという企業もありました。

このほかにも▽事務所と対面で意見交換をした結果、所属タレントのCMでの起用を中止した企業もありました。

性被害を訴える元タレントたちの思い

ジャニーズ事務所の会見を前に、前社長から性被害を受けたと訴える元タレントたちからは、事務所として性加害を認めて謝罪し、しっかり向き合って欲しいという声が聞かれました。

そのひとり、大島幸広さんは中学2年生だった1998年にジャニーズ事務所に入り、入所した初日に前社長の自宅で性被害を受け、その後、退所するまでの2年間で200回以上の被害にあったと訴えています。

先月、「ジャニーズ性加害問題当事者の会」に加わり、初めて自身の被害を語った大島さんは会見を前に、「被害があったことを認めて謝ってもらうことで、傷が癒えるわけでも思い出さなくなることもありませんが、少しは楽になるんじゃないかと思います。謝罪の相手は世間やメディアではなく被害者であり、私たちの前でちゃんと謝ってほしい」と訴えました。

また、「当事者の会には35年間被害を訴え続けてきた人もいる。事務所が一方的に決めたものは救済ではなく押しつけになってしまうので、被害者と同じ目線で話し合いながら決めてもらいたいですし、今は被害を告白できない傷を抱えたタレントを含めて救済してほしい」と話していました。

また、1998年から7年間事務所で活動した橋田康さんは、13歳の頃に前社長から被害を受けたとしてことし5月に被害を告白しました。

その後、当事者の会とは別に、被害にあった人たちのための相談窓口を独自に設置するなどしてきた橋田さんは、「声を上げた人もそうでない人も、いろんな人が苦しんだ期間だったと思う。会見ではしっかりと腹を決めてうみをしっかりと出し切ってもらいたい。救えた人がいたにも関わらず何もしないことで助長してきたメディアを含む構図が再びできないよう、厳しく注視していきたい」と話していました。

そして、事務所の今後については、「何か問題があった時に声をあげやすい環境を整え、応援してくれる人たちが『もう大丈夫なんだ、まっすぐ応援していいんだ』と思えるような事務所になってほしい。昔からうわさはあったものの目を向けずにきたのが社会全体の問題だと思うので、それが払拭(ふっしょく)されよい会社になれば、多くの人が告白してよかったと思えるはずなので、早くそういう形に変わってもらいたい」と話していました。

専門家「再発防止体制 いかに作るか」

ジャニーズ事務所にも詳しい、大衆芸能の歴史が専門の江戸川大学の西条昇教授は、「一般企業と比べ、特殊な部分というか、そこがあったからこそ逆に成功した部分、強み、特徴を出せた部分があった。そこを取締役会といった今まで機能していなかった部分を一般企業のようにすることが再発防止につながる」と指摘しました。

そのうえで、「考えなければならないのは性加害問題の被害者への謝罪や賠償、再発防止体制をいかに作るかということだ。認めるところは認め、謝るところは謝り、賠償するシステム作りをして再発防止にきちんと向き合い、企業として問題のあった点を直していく、正していくということを第一優先にしてもらいたい」と話していました。

ジャニー喜多川氏とジャニーズ事務所

ジャニー喜多川氏は、日本の大手芸能事務所、ジャニーズ事務所の創業者で4年前に死去するまで半世紀以上にわたり、日本の芸能界で活動しました。

ジャニー氏はアメリカ・ロサンゼルス生まれで、幼いころ家族と日本に帰国したあと、戦後、16歳で再びアメリカに渡りました。その後、日本に戻り、1962年、ジャニーズ事務所を創業し、タレントを売り出すためのプロデュースをみずから手がけました。

時代ごとに人気男性アイドルグループを次々にデビューさせ、芸能界での影響力を強めました。また、デビュー前の少年たちを「ジャニーズJr.」として育成しながら芸能活動をさせる独自の手法で、ファンを獲得していきました。

半世紀にわたる活動の中で、ジャニーズ事務所を国内随一の男性アイドルの芸能プロダクションにまで押し上げ、「ジャニーズ」は男性アイドルを象徴することばとしても定着しました。

ジャニー氏は、87歳で死去する直前まで舞台の演出やプロデュースに携わるなど日本の芸能界で存在感を示していました。

ジャニーズ事務所の沿革と芸能界で果たしてきた役割をまとめました。

事務所のホームページなどによりますと、ジャニーズ事務所は4年前に死去したジャニー喜多川氏が1962年に設立した芸能事務所で、人気の男性アイドルグループやタレントが多数所属しています。

社員数は190人、タレントグッズの販売を手がける会社やレコード会社など13の関連会社を抱えています。

【退所相次ぐ】
2016年には国民的アイドルだった「SMAP」が解散し、2017年以降、元SMAPのメンバー3人をはじめ、人気タレントの相次ぐ退所も大きな話題になってきました。

2019年にジャニー喜多川氏が死去、2021年にはジャニー氏の姉で事務所の最高権力者とも言われた藤島メリー氏が死去し、メリー氏の娘の藤島ジュリー氏が代表取締役社長を引き継ぐ形となっていました。