[ワシントン 9日 ロイター] – 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は9日、FRB当局者は金利がインフレとの戦いを終わらせるのに十分高い水準に達しているとは「確信していない」とし、財、サービス、労働力の供給改善に伴う物価上昇圧力の緩和には限界が近づいている可能性があると述べた。
国際通貨基金(IMF)の研究会議向けの準備原稿で、FRBは「インフレ率を長期的に2%に低下させるために十分制約的な金融政策スタンスを達成することにコミットしているが、われわれはそのようなスタンスを達成できたと確信しているわけではない」と指摘。「政策をさらに引き締めることが適切となれば、躊躇することなく引き締める」とした一方、さらなる政策的な動きは「数カ月間の良好なデータに惑わされるリスクと引き締め過ぎのリスクの双方に対処できるように慎重に」行うとし、「会合ごとに決定する」とした。
また物価安定の回復に向けた戦いには「まだ長い道のりがある」と語った。
会議では、パウエル議長はFRBが債券利回り上昇による金融状況の大幅な引き締めを「軽視するつもりはない」としつつも、金融政策対応との「直接的なライン」は存在しないと強調した。
FRBは過剰な政策引き締めを望んでいないものの、「われわれが起こし得る最大の過ちはインフレを制御できないことだ」とした上で、なお一段の措置を講じる必要があるか見極めようとしており、その後、金利をどの程度の期間高水準に維持するか検討するという認識を示した。
また、パウエル氏は原稿で「供給サイドのさらなる改善によってどれだけのことが達成されるかは明らかではない」とし、今後は「インフレ低下の進展の大部分は総需要の伸びを抑制する金融引き締め政策によってもたらされなければならないかもしれない」とした。
長期的に見れば、FRBは持続的な物価上昇の原因として供給ショックを無視することが過去ほどできなくなる可能性があるとし、パンデミック(世界的大流行)下での経験は「供給ショックと需要ショックをリアルタイムで切り離すことは困難であり、また、どちらがいつまで続くかを判断することも難しい」ことを示しているとした。
パウエル氏は、ダイナミックな経済では多くの供給問題は短命と仮定して「見過ごす」傾向があったことから、政策当局者は将来、供給主導の価格上昇に対しより反応しやすくなる可能性があるとした。
もう一つの重要な構造的疑問について、パウエル氏は、パンデミック前の数十年間で見られた低金利および金利低下の状態が永久になくなったのかどうかを知るには「時期尚早」だが、これは来年後半に開始されるFRBの次回の枠組み見直しの焦点になるとした。
パウエル氏の準備原稿は東部時間午後2時に発表された。講演自体は、化石燃料ファイナンスをやめるよう訴える環境活動家が抗議活動により一時中断されたが、その後再開された。パウエル氏のイベントが環境活動家によって妨害されるのは10月24日に続き2度目となる。会議にはイスラエル銀行(中央銀行)のヤロン総裁も同席していた。
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▽情報BOX:パウエル米FRB議長の発言要旨<ロイター日本語版>2023年11月10日午前 5:54 GMT+9