[ムンバイ 16日 ロイター BREAKINGVIEWS] – 15日に米サンフランシスコ郊外で約4時間にわたり開かれた米中首脳会談は、低かった期待値を上回る成果を収めたが、同時に世界の国内総生産(GDP)の4割を占める両国による協力の限界も浮き彫りにした。紛争管理が今後も世界最大の課題であり続けることも確認された。
バイデン米大統領と習近平国家主席の握手は周到に準備され、弱々しいものだったが、両国関係の安定化に向け心強い材料でもある。トランプ前米大統領が2018年から仕掛けた対中貿易戦争や、米本土上空に飛来した中国の偵察気球を米軍が今年2月に撃墜した問題などが尾を引き、関係は冷え込んでいた。
首脳会談では実際に進展も見られた。バイデン、習両氏は軍同士の対話再開で合意。台湾を巡り意図的ではなく偶発的な衝突が起きる確率がおそらく低下した。ただ、台湾は来年1月に選挙を控えているため、米中の決意がより早く試される可能性がある。
それ以外の成果は、会合中のワーキングランチに並んだタラゴン風味のローストチキンとハーブ風味のリコッタラビオリと同じくらい当たり障りのないものだった。両首脳は米国で薬物過剰摂取問題の主な原因となっている医療用麻薬フェンタニルの供給源への対処や人工知能(AI)から生じるリスクについて協議することで一致した。
しかし、習氏はバイデン大統領に、米国が中国に背を向けたり、中国を変えようとするのは非現実的だと釘を刺した。米政府は過去20年間、中国を変えようとし、失敗してきた。一方、米国は既に中国に背を向け、対中関係で大きな変化が起きている。貿易や金融、人材、地政学的なノイズを分析すると、両国の意識的かつ構造的なデカップリング(分断)の方向性があらわになる。
この現実にバイデン氏は立ち戻ることになるだろう。習氏は15日午後に予定されるアップル(AAPL.O)やブラックロック(BLK.N)など米大手企業の最高経営責任者(CEO)との非公式夕食会でこの現実を目の当たりにすることになる。
少なくとも両首脳は会談を開き、かなり低かった期待感を上回る結果を出せた。
●背景となるニュース
米国のバイデン大統領と中国の習近平国家主席は15日、1年ぶりとなる対面での会談を行い、首脳間のホットライン設置や軍同士の対話再開、薬物対策の協力で合意した。 もっと見る
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)