人口減少問題できのう、人口戦略会議(議長:日本商工会議所前会頭・三村明夫氏)が2100年に8000万人の安定人口を目指すべきとの中間報告をまとめ、岸田総理に提出した。76年後の目標実現に向けて、「内閣に司令塔となる『人口戦略推進本部』を設置するほか、有識者や経済界、地方自治体などが自主的に参加する『国民会議』を立ち上げて、総合的・長期的な視点から議論を行うとともに官民挙げて対策に取り組む必要がある」と主張した。各界各層から有志を集めた民間の会議に過ぎないが、提言の中身は政府の諮問会議並みのレベル(高いわけではない、役に立たないレベル)だ。今回は中間報告、年末に向けて最終答申を取りまとめる予定とある。現時点では総論だけで各論に乏しい。2100年に向けていま何をなすべきか、もっと具体論に踏み込むべきだろう。

提言の柱の一つは「人口戦略推進本部(仮称)」の設置。官民一体となった組織で、人口減少のスピードを減少させ、最終的に安定させる戦略(定常化戦略)と、現在より少ない人口規模で多様性に富んだ経済成長を目指す(強靱化戦略)を一体的に推進し、「出生率の回復」と「成長の持続力強化」を目指すという。これを見ただけで期待感が一気に萎んでしまった。官僚が机上で描いた空理空論と瓜二つ。日本のエリートたちが陥っている机上論の焼き直しだ。報告書の最後には以下の記述がある。「かつて吉田松陰は、『夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、

実行なき者に成功なし 故に、夢なき者に成功なし』と述べました。国は『希望の持てる国のビジョン』を国民に提示し、各企業や組織は『希望の持てる展望』を従業員や住民に提示し、それぞれがその実現に向けて取り組むことが重要です」と。

日本のエリート(政治家や官僚、大企業の経営者に学識経験者など主流派)たちによってこれまで夢や理想、計画、実行、希望に展望・・・、そうした言葉を盛り込んだ報告書が山ほど作られてきた。にもかかわらず現状はほとんど何も変わっていない。そればかりか日本全体の縮み志向、閉塞感、諦めにも似た期待感の喪失は国全体に広がるばかりだ。どうしてなのか?人口ビジョンビジョンを描く前に、「足りないものは何か」それを考える国民会議を開催したほうがいいのではないか。たとえば、政治家や高級官僚、大企業の経営者など日本の支配層ではない普通の庶民、もっと言えば若い世代だけを集めて「将来ビジョン」を検討させたらどうだろう。そのほうが過去にとらわれない有益な報告書がまとまるような気がする。過去を無視しろというわけではない。自由な発想の中から何かが生まれる、それを期待したい。

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