Bailey Lipschultz
- 傘下ソーシャルメディア企業上場なら、トランプ氏純資産は倍増も
- 関連ＳＰＡＣ、トランプ氏が共和党候補指名に近づく中で株価急騰
トランプ前米大統領は今年に入り、金銭面で悲惨なニュースが続いているように見える。わずか１カ月の間に、２つの訴訟で合計約５億4000万ドル（約810億円）の支払いを命じられ、選挙運動用資金にも影響するとの観測も広がった。
だが、あまり関心を集めていない事実もある。トランプ氏が毎日投稿するソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」を運営するトランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループに関連する銘柄の株価が急騰し、トランプ氏に約40億ドルの棚ぼた利益が生まれている。
今のところは帳簿上の利益に過ぎず、トランプ氏が現金化するには数カ月待たなければならないなど、この数字にはいくつもの注意事項が付く。それでも株価の急騰は、富豪でありながら突然の現金不足に陥ったトランプ氏に資金面での強い追い風となり得る。
トランプ氏に新たな資産をもたらしそうなのは、新型コロナウイルスのパンデミック（世界的大流行）期の金融緩和が引き起こした株価高騰の時期にウォール街で一時的に人気を博した特別買収目的会社（ＳＰＡＣ）が絡む複雑な取引だ。今回の場合、トゥルース・ソーシャルの運営会社は既に上場しているＳＰＡＣのデジタル・ワールド・アクイジションとの合併によって株式公開を果たす見通しだ。
合併期待からデジタル・ワールドの株価は年初来で161％高と急騰。米証券取引委員会（ＳＥＣ）の承認も取得した合併取引は、来月に株主の採決にかけられる見通し。そこで承認されれば、トランプ氏は合併企業の58％余りの株式を保有することになる。デジタル・ワールド株の27日終値は45.63ドルのため、トランプ氏保有株は36億ドル相当となる。さらに株価が一定の目標を達成する場合、トランプ氏は追加で13億ドル相当を手にできる可能性もある。
How Trump’s Net Worth Could Soon Add Up to Over $7 Billion
Former president’s SPAC deal set to multiply wealth even after $540 million in fines
Source: Bloomberg
Note: Trump Media shares’ valuation based on SPAC share price as of Feb. 27
売上高はわずかで赤字が続き、ライバル企業に比べてごく小さなユーザー基盤しか持たないソーシャルメディア会社の株式がトランプ氏の純資産を２倍余りに膨らませ得るとは、多くのアナリストにとって考えがたいだろう。
だが、大統領選の共和党候補を選ぶ予備選でトランプ氏が圧勝を重ね、11月の本選挙でバイデン大統領との再戦が有力視されるようになると、個人投資家がデジタル・ワールド株に殺到した。ウォール街のモメンタム・トレーダーも加わり、わずか６営業日で200％という驚異的な上昇を遂げた。
「これはミーム銘柄だ。株価収益率（ＰＥＲ）が参考になるような銘柄ではなく、そのようなものは見ない方がいい」とタトル・キャピタル・マネジメントのマシュー・タトル最高経営責任者（ＣＥＯ）は述べ、「デジタル・ワールドは事実上、トランプ氏の支持・不支持に賭ける手段になった」と指摘した。
それでも現時点で多くの世論調査が大統領選でトランプ氏の有利を示しており、同氏が実際にホワイトハウスに復帰すれば、少なくとも理論上は大統領のメッセージを伝える会社の一部を保有できるとして、価値が生まれるかもしれない。
罰金と手数料
トランプ氏の見込み利益は、金融詐欺を働いたとしてニューヨーク州裁判所に支払いを命じられた４億5400万ドルを補って余りある規模だが、デジタル・ワールドが時期の前倒しを申請しない限り同氏が株式を現金化するには少なくとも５カ月待つ必要がある。
ジョージア大学法科大学院のウシャ・ロドリゲス教授は「トランプ氏は資金を必要としているだろうが、一度にあまり多くは売れない。株価を急落させる恐れがあるからだ」と指摘。「ロックアップの解除後、保有株をローンの担保に利用し、株式を売らずに資金にアクセスすることもできるだろう」と語った。
ロックアップ期間にある株式を担保に、銀行が多額の資金を融資する可能性は低いと、フロリダ大学でファイナンスを専門とするジェイ・リッター教授ら業界の専門家はみている。
デジタル・ワールド、トランプ・メディア、トランプ・オーガニゼーションの代表はすぐにはコメントの要請に応じなかった。
原題：Trump Eyes $4 Billion Stock Windfall as His Legal Bills Pile Up（抜粋）
