John Irish、Michel Rose、Andrew Gray
[パリ/ブリュッセル 27日 ロイター] – フランスのマクロン大統領は26日にパリで開催したウクライナ支援の国際会合で、欧米諸国の地上部隊をウクライナに派遣する可能性を排除しない考えを表明した。
その意図はロシアに対する「戦略的な曖昧さ」を提起することにあったが、あまりにも曖昧だったため、北大西洋条約機構(NATO)諸国に混乱といら立ちを巻き起こしている。
この発言は、タブー(禁忌)をあえて犯すことを好み、伝統的な思考に挑発的な姿勢を取りたがる「外交の破壊者」というマクロン氏の評判にふさわしいものだ。
実際、ウクライナへの派兵を否定しないことで、そうした行動はNATOとロシアが全面対決する世界戦争に発展するリスクがある、という見方に異議を唱えようとしている。
これをきっかけに、ウクライナとロシアの戦争に対する西側の直接的な関与拡大の道が開かれ、結局は先見性のある発言だったということになるかもしれない。
一方で、ウクライナ支援で西側の結束を強化したいというマクロン氏の最大の狙いが台無しになる恐れもある。
米政府はウクライナ派兵はしないと明言。ドイツ、英国、イタリア、スペイン、ポーランド、チェコもすぐさま、マクロン氏の考えに距離を置く姿勢を示した。
複数のフランス政府高官は、マクロン氏が議論に刺激を与えたかっただけで、派遣構想に含まれるのは地雷除去や国境警備、ウクライナ軍の訓練といった非戦闘部隊だと補足説明している。
フランスのセジュルネ外相は「われわれはウクライナ支援で新たな行動を検討し、非常に個別具体的なニーズに対応しなければならない。私は特にウクライナ領土での地雷除去、サイバー攻撃防止、武器保管場所の警備を考えている」と語った。
<独仏関係にもあつれき>
マクロン氏の発言は、欧州の政治的協調の要となるフランスとドイツとの関係という面でも、あつれきを増大させる恐れを招くことになった。
同氏は一部の国が2年前、ウクライナに「寝袋とヘルメット」しか送りたがらなかったと指摘し、ドイツに対して当初の消極姿勢を捨ててウクライナに攻撃兵器を供与するよう促している様子だった。
これに対して複数のドイツ政府高官は最近数週間、非公式の場でフランスこそウクライナに十分な支援を提供していないと非難している。
ある西側諸国の当局者は、マクロン氏がわざわざ状況をかき乱したり、あえて困惑をもたらしたりする行動を取っていると嘆く。欧州連合(EU)外交官の一人も、マクロン氏の発言で同盟諸国に不協和音が生じていると不快感をにじませた。
ただ、フランス外交筋は西側がウクライナに対して武器提供やその他の支援を宣言するだけの現在の方針を続ければ、ロシアのプーチン大統領に西側は弱いとの印象を与えかねないと主張。現実問題として、全欧州がロシアの勝利を目の当たりにする大きなリスクを背負おうとしている、と警告した。
東欧諸国などからは、西側はプーチン氏が予測しにくいような最後の一線を設けるべきだという考え自体には賛成する声も聞かれる。
ある東欧の外交官は「(マクロン氏の)発言は有意義だったと強く思う。一般の人々に対して事態が切迫していることや、何が重要かも示してくれた」と述べた。
<あらゆる選択肢>
オランダ国防軍制服組トップのオンノ・エイヘルセイム参謀総長は、マクロン氏が望んだのはプーチン氏にどんな選択肢もあるのだというはっきりとしたメッセージを送ることだったのだろうとの見方を示した。
チェコの武器工場を視察中、ロイターに「全ての選択肢をテーブルに載せる必要がある。地上部隊派遣は究極の選択肢で、NATO諸国はまだ、積極的に受け入れると思わない。しかし、何が起こるかは誰にも分からない」と説明した。
マクロン氏は今回の会合で、チェコがウクライナのために国外から砲弾を購入する資金にEU予算を充当する案について、フランスが反対姿勢を取り下げる意向も示唆した。
一部の欧州諸国の高官は、西側の派兵よりもこちらの方がずっと優先度が高いと評価している。
ドイツのハーベック副首相は「フランスがウクライナ支援強化の方法を考えていることは喜ばしい。だが、私が提案できるとすれば、武器をもっと多く送るということになる」と語った。