Rita Nazareth
- S&P500は日中軟調も、引けにかけて急速に下げ埋める
- 円は対ドルでほぼ変わらず、一時は151円57銭に上昇-原油は続落
9日の米金融市場では国債相場が上昇。市場では、翌日発表される3月の米消費者物価指数(CPI)が意識された。CPIは、金融政策の見通しを方向付ける一助になる。
国債 | 直近値 | 前営業日比(BP) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.50% | -5.3 | -1.18% |
米10年債利回り | 4.36% | -5.8 | -1.32% |
米2年債利回り | 4.74% | -4.6 | -0.96% |
米東部時間 | 16時49分 |
米経済データが底堅く推移し、金融当局者らが緩和観測を押し戻す中、市場では米利下げに対する見方が後退している。
モーニングスター・ウェルスのマルタ・ノートン氏は「経済の底堅さを踏まえ、投資家の間では6月の政策転換を疑問視する向きが強まっている」と指摘。「転換時期の遅れは起こり得る結果の範囲内だ。3月のインフレデータが上振れれば特にそうだろう」と述べた。
米当局が6月に利下げに踏み切るかどうかを決める上で、3月と4月のインフレ指標は非常に大きな役割を果たすと、エバコアのクリシュナ・グハ氏はみる。
「ハードルが極めて高いということはなく、利下げに動けるだけの十分良好なデータが発表されると考えられる」とグハ氏はリポートで指摘した。
スワップ市場では直近で、年末までに約65ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げが実施されるとの見方が織り込まれた。
22Vリサーチが実施した調査によれば、10日発表のCPIへの反応は「リスクオン」だと、投資家の53%が考えている。
22Vのデニス・デブシェール氏は「調査回答者の50%はインフレ率について、金融当局が望む目標に向けた穏やかな道を『たどっていない』と考えている」と指摘。「2月時点では、大多数がたどっていると考えていた。投資家は10日のCPIについては心配していないが、より長期の見通しについては懸念している」と語った。
セントルイス連銀前総裁のジェームズ・ブラード氏はブルームバーグテレビジョンのインタビューで、米経済が底堅さを維持し、インフレ率は当局目標に向けて鈍化する状況にあって、年内3回の米利下げが見込まれると語った。
年内3回の米利下げが「基本シナリオ」-前セントルイス連銀総裁 (1)
バンク・オブ・アメリカ(BofA)のメガン・スワイバー氏は「利下げ時期はインフレデータ次第だ」と指摘。「今後のインフレの道筋を占う上で、市場はコアの財価格と住居費に注目するだろう」と述べた。
米金融政策の道筋に対する市場の見方が変化する中で、債券利回りは当面変動の大きい状況が続くと考えられる。だがUBSの米州担当最高投資責任者(CIO)、ソリタ・マルチェリ氏は、国債や投資適格債など質の高い債券のリスクリワードはこの先も魅力的だとの見方を維持している。
マルチェリ氏は「われわれは引き続き、グローバルポートフォリオでは質の高い債券を選好し、投資家には現在の魅力的な債券利回りを確保することを推奨する」とし、「償還期間が1-10年の債券を選好しているほか、サステナブル債に価値を見いだしている」と語った。
米国株
米国株市場ではS&P500種株価指数が小幅高。日中は軟調に推移していたが、引けにかけて急速に下げを埋め、プラス圏で終えた。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5209.91 | 7.52 | 0.14% |
ダウ工業株30種平均 | 38883.67 | -9.13 | -0.02% |
ナスダック総合指数 | 16306.64 | 52.68 | 0.32% |
大型株ではテスラが高い。エヌビディアは下落。インテルが新型の人工知能(AI)向け半導体を発表したことに反応した。ボーイングも値下がり。「787ドリームライナー」の安全性に関する内部告発を米連邦航空局(FAA)が調査しているとの報道が嫌気された。
バーンセン・グループのデービッド・バーンセン氏は「現在バリュエーションは非常に伸長しており、経済データが完璧な水準を少しでも下回るか、地政学的なノイズによって大幅かつ急速な下落を引き起こし得る状況にある」と分析。「米利下げ予想が大きく変わり、『マグニフィセント・セブン』のリターンがまちまちであるにもかかわらず、相場は今年これまで好調だ」と述べた。
外為
外国為替市場ではドルがほぼ変わらず。ブルームバーグ・ドル・スポット指数は一時0.2%下げる場面もあった。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1240.75 | -0.27 | -0.02% |
ドル/円 | ¥151.76 | -¥0.06 | -0.04% |
ユーロ/ドル | $1.0857 | -$0.0002 | -0.02% |
米東部時間 | 16時49分 |
ドルは対円ではほぼ変わらずの151円76銭近辺。一時は151円57銭まで売られた。ユーロは対円で小幅に下げた。
ユーロは対ドルでほぼ変わらず。英ケンブリッジ大学クイーンズカレッジ学長のモハメド・エラリアン氏は、米金融当局と欧州中央銀行(ECB)の緩和ペースに相違が生じ得ることは「欧州と米国の間の相対的なプライシングに極めて大きな影響を及ぼす」とし、「債券市場や為替市場でそれが見られる」と語った。
米欧の利下げペース相違、「極めて大きな影響」及ぼす-エラリアン氏
原油
ニューヨーク原油相場は続落し、1バレル=85ドル近くで終えた。中東での外交努力が意識された。
イスラエルはパレスチナ自治区ガザでの停戦に向けた交渉が進展していると指摘。ただ、イスラム組織ハマスはこうした見方を否定した。一方、イラン革命防衛隊の幹部はイスラエルとの緊張が高まりつつある中でも、ホルムズ海峡を封鎖することはないと表明した。イランが戦争に直接関与すれば、世界の原油供給に著しい支障を来す可能性がある。
FGEのアナリストはリポートで、「相場はテクニカル的に買われ過ぎのようであり、足元の下げは利益確定の動きが中心となっている可能性が高い」と指摘。需給ファンダメンタルズの逼迫(ひっぱく)が原油価格急騰の全面的な理由だったわけではなく、地政学的要因も価格押し上げに寄与していたと付け加えた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物5月限は前日比1.20ドル(1.4%)安の1バレル=85.23ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント6月限は96セント下落し89.42ドル。
金
金スポット相場は、米国債利回りの低下を背景に上昇。欧州時間には一時1.1%高の1オンス=2365.35ドルと最高値を更新した。市場関係者は米金融当局の次の一手を探るため、米CPI発表を待っている。
10日に発表される3月のCPIは、一定程度のインフレ鈍化を示すと予想されている。予想通りとなれば、利子の付かない金の投資妙味が一段と高まる。
中東やウクライナの地政学的リスクの高まりや、中国を中心とした中央銀行による購入を背景に、金に対する強気モメンタムが増している。
サクソバンクの商品戦略責任者オレ・ハンセン氏は、「トレーダーの間で主流の戦略は依然として押し目買いで、金は基調的モメンタムの強さを享受している」と指摘。強気材料があまりに多いため「値固めが絶対的に必要だが、FOMO(乗り遅れることへの恐怖)が明らかに見られる」と述べた。
金スポット相場はニューヨーク時間午後1時52分現在、0.4%高の1オンス=2349.25ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は11.40ドル(0.5%)高の2362.40ドルで引けた。
原題:Bonds Rise as CPI to Shed Light on Fed’s June Call: Markets Wrap(抜粋)
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