Joe Deaux

  • 株主の98%余りが支持、規制当局の精査に焦点移る
  • 「最終的にはホワイトハウスが決定」-アナリスト

USスチールは12日に開いた臨時株主総会で決議を行い、日本製鉄による141億ドル(約2兆1600億円)規模の買収計画を可決した。同計画の行方は米規制当局と政治家の判断に委ねられることになる。

  発表によると、1株当たり55ドルでの同買収案をUSスチール株主の98%余りが支持。可決は広く予想されていた。今後は規制当局による精査に焦点が移る。

  日本製鉄は昨年12月、USスチールを大幅なプレミアムで買収することで合意。しかしその後すぐに、USスチール工場の多くで操業を担う労働組合員や外資の所有を巡り懸念を表明する有力政治家の反発に遭った。米大統領選を11月に控え、重要な激戦州での労働者票獲得を争うバイデン大統領と共和党候補指名を確実にしたトランプ前大統領は、いずれもこの買収計画に反対している。

  バイデン氏はこれまでに、USスチールに対して米国資本の企業として存続するよう求めているほか、米労働者への支持を表明しており、日本製鉄が買収を完了できるのか疑問が浮上している。

  ウォルフ・リサーチのアナリスト、ティムナ・タナーズ氏は「株主投票にかかわらず、最終的にはホワイトハウスが決定することになると当社では引き続き予想する」とインタビューで述べた。

  日本製鉄は同臨時株主総会を受けて出したプレスリリースで、買収によりUSスチールを支え、成長させることが各ステークホルダー、さらには米鉄鋼産業および米国全体に多大なる利益をもたらすことを確信していると表明した。

  その上で、3月27日に米鉄鋼労働組合(USW)に送付した書簡で、少なくとも14億ドルの追加投資を行い、買収によるレイオフや工場閉鎖を行わないと約束したことなどに言及するとともに、USWや政府機関、地域コミュニティーなどステークホルダーとの対話を通じ、「強い決意」で買収を完了させる方針をあらためて示した。

  一方、事情に詳しい複数の関係者は、日本製鉄とUSスチールが買収完了の想定時期を正式に延期することを検討していると明らかにした。

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原題:US Steel Shareholders Approve Nippon Steel’s Takeover Offer (2)(抜粋)