▽ロシア、ウクライナ第2の都市陥落狙う-市民強制立ち退きへ偽情報も<bloomberg日本語版>2024年4月17日 3:35 JST

Daryna Krasnolutska、Jennifer Jacobs、Alberto Nardelli

  • ロシアのハルキウ攻撃激化、居住不能にする組織的取り組み-関係者
  • ウクライナはエネルギー支援の要求強める、冬を見据え電力復旧急ぐ

ウクライナ第2の都市ハルキウへの攻撃をロシアが激化させているのは、市民を強制的に立ち退かせることが目的だ。ウクライナと西側の当局者がこうした見解を示した。

  ロシア国境から車で1時間もかからない地点にあるウクライナ北東部のハルキウには、過去1カ月にわたりミサイルやドローン、大型誘導弾による激しい攻撃が続いている。この攻撃で発電インフラは破壊され、多数の住宅が廃墟と化した。

  戦前の人口が約150万人に上っていたハルキウは、2022年にロシアが全面侵攻を開始して以来、絶え間ない攻撃にさらされてきた。だが、ロシアの最近の行為は、同市への供給を遮断して人が住めない状況をつくり出そうとする組織的な取り組みに見受けられると、匿名を要請した関係者は語った。

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ミサイル攻撃後、砲弾の破片が落下した現場で検証作業を行うウクライナ法執行当局者(3月27日、ハルキウ)Photographer: Sergey Bobok/AFP/Getty Images

  ウクライナの弾薬不足や防空システムの脆弱(ぜいじゃく)性、兵士数の劣勢につけ込むロシアは、ハルキウ包囲を主要作戦目標の一つとしている。ロシアはまた、ウクライナ各地のエネルギーシステムに対する執拗(しつよう)な攻撃を強化するとともに全ての戦線で一定の前進をみせており、ウクライナ軍の限界が近づいている恐れがあると西側当局者は懸念する。

  ロシアは侵攻開始後の数週間にハルキウを制圧しようとしたが、果たせなかった。市民の多くはロシア語を話すものの、ウクライナ人とロシア人は単一民族だとして侵攻を正当化するプーチン大統領への反発は強い。そのような市民にとって、ロシア軍撃退は勝利だった。

  だが、侵攻開始から2年余りがたち、ハルキウでの生活は危険の度合いを増している。攻撃は和らぐことがなく、被害は極めて広範囲に及ぶ。実際、多くの市民がとどまるなら次の冬までに居住できる環境を整えることは難しいだろう。

主要目標

  今月初め、ロシア軍がハルキウを包囲し市民の避難が始まったとのメッセージが出回った。ウクライナ内務省は「敵意ある偽情報」だと指摘し、「戦場で意図した成果を上げられないロシア軍が、ウクライナ社会にパニックと混乱の種をまこうとしている」と警告した。

  ウクライナ当局にハルキウを断念する用意はない。クブラコフ・インフラ相はX(旧ツイッター)に投稿した発表文で、依然として約20万人が電気のない生活を強いられているハルキウと周辺地域のインフラを復旧させ、電力を供給する計画を明らかにした。

  ウクライナは同国を支援する欧州諸国に対し、エネルギー追加供給の要求を強めている。ハルシチェンコ・エネルギー相は国内の発電能力が「ほぼ全て」ロシアの攻撃で破壊されたと説明し、一部の電源を復旧させようと工事に入っていたインフラも攻撃を受けたと述べた。

  ハルシチェンコ氏はブリュッセルで記者団に対し、「冬が問題になる」と発言。「速やかに発電能力を引き上げられる方法について協議している」と語った。

  広大な都市をロシア軍が近く制圧できると予想する者はほぼ誰もいない。ウクライナ軍は防御を固めており、事情に詳しい関係者によるとゼレンスキー大統領は本格的な攻勢を仕掛けるほどの戦力がロシアにはないと見なしている。

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ミサイル攻撃の現場で、消火作業に当たる消防員ら(7日、ハルキウ)Photographer: Sergey Bobok/AFP/Getty Images

  米国などの西側当局者も、ロシアには大規模な兵員補充なしにハルキウを攻撃できる余力はないとの見解で一致していると、事情に詳しい関係者が明らかにした。

  ロシアは現時点で決定的な戦線突破を果たすほどの兵力がないかもしれないが、ショイグ国防相は年内に2つの新たな統合軍と14師団、16旅団を創設する計画を打ち出した。今のところロシア軍は手厚い報酬を約束して新兵を採用し、兵力の増強を進めており、年内には少なくとも25万人の増員を目指している。

原題:Russia Tries to Force Ukraine to Abandon Second-Biggest City (1)(抜粋)

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