Rita Nazareth

  • 円は一時1ドル=154円70銭まで上昇、米国債利回り急低下でドル安
  • CPIは間違いなく日銀を安堵させた-マネックスのギブン氏
relates to 【米国市況】株が最高値更新、CPIで利下げ観測強まる-154円台後半
Photographer: Daniel Acker

15日の米株式市場では、主要3指数がそろって終値ベースの最高値を更新。米消費者物価指数(CPI)統計でインフレ鈍化が示され、9月にも利下げがあり得るとの見方が強まったことで、相場が押し上げられた。米国債利回りは大幅に低下した。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数5308.1561.471.17%
ダウ工業株30種平均39908.00349.890.88%
ナスダック総合指数16742.39231.211.40%

  S&P500種株価指数は節目の5300を上抜いた。終値ベースで最高値を更新するのは、今年に入ってこれで23回目。4月の米CPIは変動の大きい食品とエネルギーを除くコアベースで、前月比の伸びが6カ月ぶりに鈍化した。

米CPIコア指数、6カ月ぶりに伸び鈍化-年内利下げへの一歩 (4)

  「恐怖指数」として知られるCBOEボラティリティー指数(VIX)は昨年12月以来の低水準に近づいた。米国債利回りは全ての年限で低下。金利スワップ市場では利下げ織り込みが進み、ドルは他の主要通貨全てに対して下落した。

  CPIと同時刻に発表された4月の米小売売上高は、景気を支えてきた堅調な消費需要が幾分軟化していることを示唆した。

4月の米小売売上高は横ばい、予想下回る-過去2カ月は下方修正 (2) 

米CPIと小売売上高、「秋利下げ説を補強」-市場関係者の見方

  エバコアのクリシュナ・グハ氏は「インフレ動向からすると、9月に最初の、12月に2回目の利下げがあり得る。実体経済が減速する中で、4月のCPIはそうした物価動向と整合的だ」と述べた。       

  ニュースレター「ザ・セブンズ・リポート」を創業したメリルリンチの元トレーダー、トム・エッセイ氏は今回のCPIについて、インフレに関してなお取り組むべき点があることを示しているとした上で、最も重要なのは、ディスインフレがなお起きていて、それが株式を支えることを投資家に想起させたことだと述べた。

  この日は、大手ハイテク株の比重が大きいナスダック100指数も終値で最高値を更新。エヌビディアを中心に半導体株が買われた。住宅建設株も堅調。いわゆるミーム銘柄であるゲームストップとAMCエンターテインメント・ホールディングスはともに下げた。

S&P 500 Climbs to Record on Rate-Cut Wagers

  ニューヨーク外国為替市場では、円が対ドルで1ドル=154円台後半まで上昇。一時1.1%高の154円70銭を付ける場面があった。米CPIと小売売上高を受けて米国債利回りが低下し、ドルが下落した流れを受けた。

  ブルームバーグ・ドル・スポット指数は1カ月ぶりの安値となった。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1244.39-7.77-0.62%
ドル/円¥154.86-¥1.56-1.00%
ユーロ/ドル$1.0884$0.00650.60%
  米東部時間16時51分

  金利スワップ市場は米CPI発表後、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合までに0.25ポイントの利下げが1回実施される確率を85%余り織り込んだ。

  クレディ・アグリコルCIBのG10通貨調査・戦略責任者、バレンティン・マリノフ氏は、ドル・円は「米金利投資家が利下げ開始の予想を前倒しした場合、最も大きく動く可能性がある」と指摘。円上昇を受け、日本当局が円買い介入に入るとの観測は後退した。

  マネックスの外国為替トレーダー、ヘレン・ギブン氏は「CPIは間違いなく日本銀行を安堵(あんど)させた」と指摘。「米国が利下げを開始するまで、上値は1ドル=150円。金利差は依然としてかなり大きい」と付け加えた。

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  バンク・オブ・アメリカ(BofA)のG10通貨戦略責任者アタナシオス・バンバキディス氏はCPIについて、「米金融当局が12月に利下げをする可能性が高いという当社の見解を裏付けた。市場は現在、9月利下げ開始を織り込みつつあるが、それは早過ぎるのではないか」と述べた。

  米国債相場は上昇(利回り低下)。物価の伸び抑制を示した米CPIと市場予想を下回った小売売上高を受け、利回りは一時、大幅に低下した。10年債利回りは一時10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の4.34%と、4月10日以来の低い水準となった。

国債直近値前営業日比(BP)変化率
米30年債利回り4.50%-8.2-1.78%
米10年債利回り4.34%-9.8-2.20%
米2年債利回り4.72%-9.1-1.89%
  米東部時間16時51分

  UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのブライアン・ローズ氏は、15日に発表された経済指標は「ソフトランディング(軟着陸)」シナリオを補強すると指摘。「インフレと個人消費がともに鈍っているようにみえるが、少なくとも今のところ、これらのデータのどこにも経済がハードランディングに向かっていることを示唆するものはない」とし、「9月に米利下げ開始という当社の予想を据え置く。その利下げを受けて債券利回りは年末までに低下していくはずだ」と述べた。

   米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、金融当局は現在の金利水準を「もう少し長く」維持する必要があるとの見解を改めて表明した。金融政策が経済にどれほどの下方圧力をかけているか、確かなことは分からないとも述べた。

ミネアポリス連銀総裁、「もう少し長く」金利を維持する必要がある

  ニューヨーク原油先物相場は反発。国際エネルギー機関(IEA)が今年の石油需要見通しを下方修正したことで需要懸念が広がったが、金融市場全体のリスクオンの流れなども受けて買いが優勢となった。

今年の世界石油需要伸び見通し、引き続き軟化-国際エネルギー機関

  ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は1バレル=77ドルを割り込み、日中ベースで2月以来の安値を付ける場面もあったが、米エネルギー情報局(EIA)の週間統計で在庫減が示されると値を戻した。同統計では原油在庫が3月以来初めて2週連続で減少した。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物6月限は、61セント(0.8%)高の1バレル=78.63ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント7月限は0.45%高の82.75ドルで引けた。

  金相場は続伸。スポット価格は4月19日以来の高値を付けた。年内の米利下げ観測の高まりが支援材料。

  サクソバンクの商品戦略責任者オレ・ハンセン氏は、金価格が過去最高値を更新するには「利下げの回数がもっと明確になる必要がある」と指摘。そうなれば上場投資信託(ETF)需要にプラスの影響を与える可能性があると述べた。

  ブルームバーグがまとめたデータによると、投資家は今年に入って金ETFを売り越しており、ETFの金持ち高は5.9%減少している。

  金価格は4月中旬に過去最高値を付けた後、ここ数週間はレンジ取引が続いている。

  ニューヨーク時間午後2時17分現在、金スポット価格は前日比30.15(1.3%)上げて1オンス=2388.27ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は35ドル(1.5%)高い2394.90ドルで終了した。

原題:S&P 500 Tops 5,300 in Record-Breaking Stock Rally: Markets Wrap(抜粋)

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