Rita Nazareth
- FOMC議事要旨、高金利の長期化が望ましいとの見解で一致
- 円は対ドルで約0.4%下落、米国債利回り上昇が重し
22日の米国株式市場は下落。午後に公表された4月30日-5月1日開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で、利下げを急がない姿勢が示されたことが重しとなった。
一方、注目されていたエヌビディアの決算は市場予想を上回り、通常取引終了後の時間外取引で同社の株価は大きく値上がり。ナスダック100指数に連動する上場投資信託(ETF)も上昇した。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5307.01 | -14.40 | -0.27% |
ダウ工業株30種平均 | 39671.04 | -201.95 | -0.51% |
ナスダック総合指数 | 16801.54 | -31.09 | -0.18% |
議事要旨では、インフレ率を当局の目標に下げる上で金融政策が十分に景気抑制的かどうかを巡り、「多く」が疑問を抱いていることが分かった。一方で、当局者は政策が総じて景気抑制的だとみていると指摘されている。またインフレ率が持続的に2%に向かっている兆候が示されない場合は政策金利をより長期に維持し、労働市場環境が予想外に弱まった場合には景気抑制の度合いを和らげることを議論したと記されている。
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ブック・リポートの著者、ピーター・ブックバー氏はFOMC議事要旨の発表を受けて「要するに、目下の金融政策スタンスは臨機応変に対処するということだ」と指摘した。
また「一部の当局者が政策に関して『景気抑制的』との文言を使うのは『追加利上げはない』という意味であり、利下げに傾いていることを示している。だが、景気抑制的の定義を問えば、答えはそう簡単ではない」と述べた。
S&P500種は最高値から下落した。トール・ブラザーズが住宅建設株の下げを主導。裁量支出に関して慎重な見通しを示したターゲットは急落した。
米ターゲット株、大幅安-既存店売上高が4四半期連続で減少 (1)
ノースエンド・プライベート・ウェルスのマネージングパートナー、アレックス・マクグラス氏は、議事要旨はややタカ派的なサプライズだったと話す。「利下げについて何らか耳にするまでには少なくともあと1カ月は待つ必要があるだろう」と指摘。「想定外だったのは一部の参加者がさらなる政策引き締めに前向きだったことだ」と述べた。
一方、ストラテガス・セキュリティーズのライアン・グラビンスキー氏は、短期的には米金融当局よりもエヌビディアの業績の方が「重要」だと述べる。
S&P500種構成銘柄の総純利益のうち、エヌビディアが占める割合は3%近くまで高まったのみならず、人工知能(AI)ブームの申し子としてハイテク大手による設備投資の起爆剤になっていると同氏は指摘。
これに伴い、建設支出と資金手当てが必要な発電ニーズが増えた点に言及し、「エヌビディアに対する需要が弱まっている兆しが示されれば、他の市場にも広く影響を及ぼすことは想像に難くない」と話した。
米国債相場では、FOMC議事要旨の公表を受けて期間短めの国債を中心に売り圧力が強まった。インフレを目標に戻す上で、金融政策が十分に景気抑制的かどうか「多くの」当局者が疑問を抱いているとの文言に反応した。
国債 | 直近値 | 前営業日比(BP) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.54% | -1.0 | -0.21% |
米10年債利回り | 4.42% | 1.2 | 0.27% |
米2年債利回り | 4.87% | 4.5 | 0.93% |
米東部時間 | 16時52分 |
2年債利回りは約5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇の4.88%。イールドカーブは約1カ月ぶりの水準までフラット化した。
議事要旨の発表に先立ち行われた20年債入札(発行額160億ドル)では、最高落札利回りが入札前取引(WI)水準とほぼ同じとなり、堅調な需要を集めたことを示唆した。
ニューヨーク外国為替市場では、FOMC議事要旨を受けてブルームバーグ・ドル・スポット指数が1週間ぶりの高水準をつけた。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1250.76 | 3.18 | 0.25% |
ドル/円 | ¥156.79 | ¥0.62 | 0.40% |
ユーロ/ドル | $1.0821 | -$0.0033 | -0.30% |
米東部時間 | 16時52分 |
ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループのグローバル為替責任者、ブラッド・ベクテル氏は「ドルは現時点で、インフレ指標と米金融当局による情報発信に極めて敏感だ」と述べた。
円は対ドルで156円台後半に下落。米国債利回りの上昇が背景にある。終盤にかけて下げ幅を拡大。5月14日につけた安値156円74銭を超えて円安・ドル高が進んだ。
英ポンドは一時、対ドルで2カ月ぶりの高値を更新。その後はほぼ変わらずまで押し戻された。4月の英消費者物価指数(CPI)の上振れを受けて利下げ観測が後退。利下げ開始予想は従来の7月から11月に後ずれした。
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ニューヨーク原油先物相場は3日続落。ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は1%を超える下落。ガソリン需要の増加を示すデータなどを受けて早い時間には下げ幅を縮める場面もあったが、FOMC議事要旨発表後に株売りの動きが強まると、再び下げ足を速めた。
ただ、原油価格は今月に入り、約5ドルの狭いレンジでの取引が続いている。
トータス・キャピタル・アドバイザーズのシニア・ポートフォリオマネジャー、ロブ・サメル氏は「原油価格は次の材料が出るまではレンジ取引が続くだろう」と述べた。
複数の指標は現物市場の弱さを示している。北海ブレントのプロンプトスプレッド(当限月と来限月の価格差)は1月以来となるコンタンゴ入りに近づいている。コンタンゴは供給過剰を示唆する弱気シグナルとされる。ブレント原油現物の先物に対する相対的な指標であるブレントDFLも最近マイナスに転じている。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物7月限は、前日比1.09ドル(1.4%)安の1バレル=77.57ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント7月限は98セント安の81.90ドルで引けた。
ニューヨーク金相場は下落。約3週間ぶりの大幅安となった。インフレ高止まりによって米利下げが当初予想よりも遅れる可能性が意識される中、利益確定の売りに押された。
スワップ市場では今週、年内2回の米利下げを織り込む動きが後退した。高金利は通常、利息の付かない金にはマイナスとなる。
TDセキュリティーズの商品戦略責任者、バート・メレク氏は「高金利長期化を示唆する最近の当局者発言などを受け、ロングは勢いを失ったとみられる一方、ショートは若干の調整に動いている」と語った。
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ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は前日比33.40ドル(1.4%)安の2415.70ドルで終了した。
原題:‘Play It by Ear’ Signs in Fed Minutes Hit Stocks: Markets Wrap(抜粋)
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