Mark Gurman
- 新たなAIシステムの名称は「アップル・インテリジェンス」
- iPhone、iPad、MacそれぞれのOSの新バージョンに搭載へ
米アップルは通常、新しい製品カテゴリーに最初から飛びつくことはしない。スマートフォンの「iPhone」、腕時計型端末「Apple Watch」、複合現実(MR)ヘッドセット「Vision Pro」もそうだった。すでに立ち上がっていた分野に製品を投入し、自らの足跡を残す方法を見つけてきた。
人工知能(AI)分野でもそれをしようとしているようだ。生成AIの熱狂が始まってから2年近くが過ぎた今、この技術に関するビジョンを打ち出す準備を進めている。米太平洋時間10日午前10時(日本時間11日午前2時)に開幕する世界開発者会議(WWDC)で同社は、主要なアプリや機能にAIを深く統合する計画を発表するとみられている。プライバシーとセキュリティーへのコミットメントも忘れないだろう。
アップルの計画に詳しい関係者によると、同社の新たなAIシステムは「アップル・インテリジェンス」と呼ばれ、iPhone、iPad、Macそれぞれの基本ソフト(OS)の新バージョンに搭載される。対話型AIの「ChatGPT」を開発したオープンAIとの提携もあるだろう。
通常は約2時間行われるWWDCでの基調講演だが、今回はその約半分をAI関連が占めるとみられる。アップルの広報担当はコメントを控えた。
基調講演で予想されるAIに関する主な内容は以下の通り。
- アップルは、ユーザーの日常生活を楽にするような方法で可能な限り多くのアプリにAIを統合するアプローチを採用。画像や動画の生成など目を見張るような技術にはあまり重点を置かず、幅広い訴求力を持つ機能に注力している。
- 新機能はユーザーの同意を前提とする「オプトイン」方式となり、ベータ版の位置づけとなる。こうした新機能を使うには、iPhoneでは最新上位機種「15 Pro」もしくは今年発売される機種の利用が必要になる。iPadやMacの場合はM1チップの搭載モデルが必要。
- アップルのAI機能は独自のテクノロジーとオープンAIのツールによって提供される。タスクの複雑さに応じて、手元デバイス上での処理かクラウドベースでの処理になる。新しいOSには特定のタスクでどちらのアプローチを取るべきかを決定するアルゴリズムが含まれる。
- データ処理にクラウドサーバーを使用することは長年控え、使用していた競合他社を批判することもあっただけに、アップルがAIでクラウドを利用することは物議を醸す可能性もある。そのため発表の大部分は、データセンターで使用しているチップのセキュリティー機能など、同社が取っている安全上の措置に焦点が当てられることになるとみられる。同時に、利用可能な場合のオンデバイス処理のメリットもアピールするだろう。
- 主要な機能は要約だ。アップルはブラウザーの「Safari」で記事やウェブページを素早く要約できる機能を計画している。会議メモやテキストメッセージ、電子メールの要約も可能になるだろう。電子メールなどへの返信をユーザーに代わって自動的に作成できるようになる機能も見込まれる。
- 生成AIの中核技術である大規模言語モデル(LLM)に基づいて音声アシスタント「Siri」を刷新することも計画している。Siriのユーザーは初めて、各アプリ内の機能やアクションを正確にコントロールできるようになる。例えば、メールの削除や写真の編集、ニュース記事の要約などをSiriに指示できるようになる。
- メールアプリも大幅にアップグレードされる。受信メッセージを自動的に分類するグーグルのGメールのような機能が搭載されるとみられる。
- Z世代などの間で特に注目を集めそうなのが絵文字だろう。入力されたフレーズや単語を表す絵文字をAIがその場で作成する機能だ。
- ボイスメモには、録音内容を自動的に書き起こすという待望の機能が追加されることになる。グーグル「Pixel」やサードパーティ製録音アプリが何年も前から持っている機能だ。
- AIは写真アプリにも搭載され、写真編集に新たな機能が追加される。これにより、画像を強調したり、フレームから人物や物体を削除したりすることが容易になるとみられる。
原題:What Apple Plans to Show at Its AI-Focused Developers Conference(抜粋)