アングル:強弱入り混じる米雇用統計、労働市場の先行き論議に決着つかず

[10日 ロイター] – 7日発表の5月の米雇用統計は労働市場の先行きを巡る議論を決着させるには至らなかった。

連邦準備理事会(FRB)は失業悪化を招かずにインフレを抑制できるのか、という問題に対し「ソフトランディング(軟着陸)」を予想するエコノミストも、疑問視するエコノミストも、それぞれの主張を裏付ける豊富な材料を今回の雇用統計に見いだしている。

確かに、非農業部門雇用者数は前月比27万2000人増と、ロイターが調査したエコノミスト77人全員の予想を上回った。広範な業種で雇用が拡大し、裾野の広さは16カ月ぶりの水準だった。 もっと見る

だが、2年以上にわたって4%を割り込んでいた失業率が4%に上昇したことも事実だ。しかも、これは「悪い」失業率の上昇で、労働力参加率が低下する中、失業者が増え、就業者が大幅に減っている。

エコノミストが注目したデータの一部を以下に挙げる。

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<広範な業種で雇用拡大>

5月の雇用増加数は、新型コロナウイルス流行前の10年間の平均(18万8000人)を8万4000人上回った。

また、労働省労働統計局(BLS)は250業種を調査対象にしているが、雇用増加の裾野の広さは2023年1月以来の水準。製造業(72業種)の雇用は22年10月以来の裾野の広さだった。

約1年半にわたって雇用が伸び悩んでいた製造業が好転している可能性がある。

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<全ての主要産業グループがコロナ前上回る>

雇用は全ての主要産業グループでコロナ前の水準を上回った。コロナ禍で最大の打撃を受け、唯一出遅れていたレジャー・接客業の雇用も、4月分のデータ修正を受けてコロナ前の水準を上回った。

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<失業率は歴史的低水準>

失業率は22年1月以来の水準に上昇したが、前月まで27カ月連続で4%を下回っていた。これは1960年代以降で最長の記録だ。

5月の失業率4%も、歴史的には低い水準で、これほど長期にわたって4%以下の失業率を維持できたのは、第2次世界大戦後の14人の大統領のうち6人だけだ。

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<働き盛りの労働力参加率>

5月の労働力人口は全体で25万人減少し、労働力参加率が低下したが、25─54歳と定義される「働き盛りの年齢層」の参加率は83.6%と、記録的な高水準だった。

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特に働き盛りの女性の労働力参加率が78.1%と記録的水準で、働き盛りの男性との差はわずか11.1%ポイントと、過去最少だった。

働き盛りの男性の労働力参加率は89.2%に小幅上昇したが、コロナ前の水準を下回っている。07─09年の金融危機前には90%を超えていた。

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<移民が存在感>

労働市場では依然として移民が存在感を示しており、外国生まれの労働者は、雇用の伸びと労働力人口の伸びに占める比率が引き続き最も高い。ただ、バイデン政権はメキシコとの国境を通じた入国を取り締まっており、今後数カ月で状況が変わる可能性がある。

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<労働力人口のフローに変化>

過去2年間は多くの期間で、就職や求職などで労働力人口に加わる人が、労働力人口から外れる人を上回っていたが、過去6カ月間の平均では、労働力人口から外れる人が、加わる人を上回っている。

また、新たに労働力人口に加わり、すぐに就職できる人の比率も低下している。

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<事業所調査と家計調査の乖離>

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5月の事業所調査では雇用者数が27万2000人増加したが、家計調査では雇用者数が40万人以上急減した。

この2つの調査は、月間の雇用の増減幅や方向性が異なることが少なくないが、長期的には連動する。

家計調査では約1年間、雇用は横ばいだが、過去8カ月中5カ月は減少している。事業所調査では月間平均で25万人以上の新規雇用が創出されている。

エコノミストは、ある時点で一方が他方に歩み寄ることになると予想しているが、どちらの調査に沿ったものになるだろうか。