Rita Nazareth
- FOMC、今年の想定利下げは1回に減少-米国債は伸び悩み
- 円はCPI発表後に155円72銭まで上昇、その後は上げ幅を削る
12日の米株式市場では、S&P500種株価指数が最高値を更新した。米連邦公開市場委員会(FOMC)は2024年の利下げ回数がわずか1回になると予想したが、少なくとも2回実施されるとの市場の見通しは変わらなかった。
FOMCは金利据え置き、24年利下げ予想1回に減少-来年は4回 (4)
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5421.03 | 45.71 | 0.85% |
ダウ工業株30種平均 | 38712.21 | -35.21 | -0.09% |
ナスダック総合指数 | 17608.44 | 264.89 | 1.53% |
強気相場入りから20カ月となったこの日、S&P500種は初めて5400の節目を超えた。金利スワップ市場は引き続き、11月と12月の0.25ポイント利下げを完全に織り込んでいる。
金利予測分布図(ドットプロット)中央値によれば、FOMC参加者は今年の利下げを1回にとどめ、2025年に4回の利下げを想定している。声明では文言を一部修正。ここ数カ月に「委員会が目指す2%のインフレ目標に向けては緩慢なる一段の進展が見られた」と記された。従来は「一段の進展は見られていない」としていた。
朝方に発表された5月の消費者物価指数(CPI)では、コア指数が前年同月比で3.4%上昇と、約3年ぶりの低い伸びにとどまった。
米CPIコア、2カ月連続でインフレ抑制示す-FOMCに朗報か (3)
【米CPI】利下げ開始「9月の可能性高い」-市場関係者の見方
カーソン・グループのソヌ・バーギーズ氏は「5月のCPIは予想より軟調で、第1四半期に見られた熱気をやや冷ました感があるが、『ドットプロット』はそれを考慮していない可能性が高い」と指摘。「われわれが予想するように、ディスインフレが続けば、2024年に2回の利下げが実施される可能性が高い」と述べた。
米国債相場は上昇。朝方にCPIが予想を下回ったために大幅高となった。FOMC当局者の経済見通しを受けて伸び悩み、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見中も上げ幅を縮小する展開となった。
国債 | 直近値 | 前営業日比(BP) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.48% | -6.0 | -1.33% |
米10年債利回り | 4.32% | -8.8 | -2.00% |
米2年債利回り | 4.75% | -8.2 | -1.70% |
米東部時間 | 16時53分 |
トレードステーションの市場戦略世界責任者、デービッド・ラッセル氏はこの日のFOMCについて、「何も挟まっていないハンバーガーのように見かけ倒しだった。FOMCは状況が改善していると知りつつ、利下げを急ぐ必要がない。強い経済のおかげで、パウエル議長は雇用を損なわずにインフレをシステムから締め出すことが可能になっている。ゴルディロックスの姿が見え始めている。しかし政策当局者はその言葉を口にすることで台無しにしたくない」と述べた。
外国為替市場では、CPIを受けてドル指数が1カ月ぶりの大幅安になる場面があった。ただ、FOMCがドットプロットを変更し、今年想定する利下げ回数を従来の3回から1回に減らしたため、下げ渋る展開となった。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1263.35 | -2.46 | -0.19% |
ドル/円 | ¥156.72 | -¥0.41 | -0.26% |
ユーロ/ドル | $1.0810 | $0.0069 | 0.64% |
米東部時間 | 16時53分 |
対ドルの円はCPI発表後に大幅高となり、一時は155円72銭まで上昇。その後は伸び悩み、156円台後半で推移した。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジスト、アレックス・コーエン氏は「米金融当局はデータ次第の姿勢を取っており、これからもその姿勢を維持するだろう。ドルは朝方の大きな動きの後、値固めとなっているようだ」と述べた。
ニューヨーク原油先物相場は続伸。インフレ圧力の後退を示すCPI統計を受け、リスクオンの流れで買われた。
米エネルギー情報局( EIA)が発表した週間統計では、原油の在庫が予想外に増加。ガソリン在庫も予想以上に増えた。これが重しとなり、マイナス圏に沈む場面もあった。ただ、その後は持ち直し、FOMC会合後も上昇を維持した。
シティー・インデックスのファワド・ラザクザダ氏は「今週の大幅な回復で、市場における弱気派の支配力は弱まったが、底値を確認するにはさらなる値動きが必要だ」と指摘。一方で、足元の持ち直し局面を経て、原油相場が再び圧力を受ける可能性はあると述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)でWTI先物7月限は前日比60セント(0.8%)高の1バレル=78.50ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント8月限は0.8%高の82.60ドルで終えた。
金スポット価格は値を消す展開。インフレ鈍化を示すCPI統計を受けて早期の米利下げ観測が強まり、当初は買いが優勢だったが、FOMC会合の結果発表後にほぼ変わらずまで押し戻された。
CPI統計後に米国債利回りが低下し、ドルが大きく売られたことで、一時は1.1%上昇していた。
MKS・PAMPの金属戦略責任者、ニッキー・シールズ氏はCPIについて「7日に強い雇用統計が発表された後だけに、ソフトランディングの可能性を高めた。そのため、全ての資産が上昇するゴルディロックス的で、リスクオンの内容となった」と指摘。「インフレ鈍化と堅調な雇用は米金融当局にとってこの上ない展開だ」と述べた。
金スポット相場はニューヨーク時間午後3時20分現在、前日比5.03ドル高の1オンス=2322.04ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は、前日比28.20ドル(1.2%)高の2354.80ドルで引けた。
原題:Stock Bull Run Breaks Record on Fed Decision Day: Markets Wrap(抜粋)
Treasuries Rally After CPI, Gains Fade After Fed’s Powell Speaks
Dollar Pares Post-CPI Slump After Hawkish Fed Plot: Inside G-10
Oil Gains as Risk-On Mood Outweighs Rising US Crude Inventories
Gold and Copper Gain as US CPI Bolsters Bets on Fed Rate Cuts