Augusta Saraiva

  • 5月のCPIコア指数、前月比0.2%上昇-市場予想0.3%上昇
  • 総合CPIは前月から横ばい、ほぼ2年ぶりの低水準

米経済の基調的なインフレ指標は2カ月連続で低下し、利下げのタイミングを見極めたい連邦公開市場委員会(FOMC)にとって朗報となった。

キーポイント
・食品とエネルギーを除いたコア消費者物価指数(CPI)は5月に前月比0.2%上昇-市場予想0.3%上昇
 ・前年同月比では3.4%上昇-予想3.5%上昇
  ・約3年ぶりの低い伸び
・総合CPIは前月から横ばい-予想0.1%上昇
 ・ほぼ2年ぶりの低水準
 ・前年同月比では3.3%上昇-予想3.4%上昇

  5月の統計は4月のコア指数低下と合わせ、インフレの下降局面が再開された可能性を示した。しかしFOMC当局者らはこれまで、利下げを検討するには数カ月にわたる物価圧力の低下を確認する必要があると強調してきた。とりわけ最新の雇用統計をきっかけに、金融政策が実際にどの程度景気を抑制しているのかという議論が再燃している。

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  米労働統計局が発表する数値は小数第1位まで表示されているが、インフレの方向性をより包括的に把握するため、当局者らは細かい数字に注意を払うようになっている。小数第2位まで表示すると、コアCPI指数は前月比で0.16%の上昇になる。

  当局者らはまた、単月の数字はトレンドを成さないと度々強調している。過去3カ月のコアCPIは年率3.3%の上昇。4月時点の計算では4.1%の上昇だった。

Cooler Inflation a Step in Right Direction for Fed | Core CPI rose a less-than-forecast 0.2% in broad easing, helped by services
棒グラフ:CPIコアの前月比変化率、折れ線グラフ:食品・エネルギー、住宅を除いたサービス価格の前月比変化率出所:米労働統計局、ブルームバーグ

  セントルイス連銀前総裁のジェームズ・ブラード氏は「FOMCには朗報だと思う。待望の弱い数字が出てきたのだから」とブルームバーグテレビジョンで話した。「金融緩和を進めていくには、この方向のニュースがさらに続く必要があるだろう」と指摘しつつ、「しかしながら早い時期の利下げを望んでいた向きには、希望をつなぐ統計ではある」と続けた。

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  ブルームバーグ・エコノミクスのアナ・ウォン、イライザ・ウィンガー、エステル・オウ3氏は「5月のCPIは心強い統計だ。個人消費支出(PCE)コア価格指数はもっと良い数字になると思われる。この夏は似たような統計が複数続き、9月に利下げを開始する舞台が整うだろう」と述べた。

  サービス分野で最大部分を占める住居費は0.4%上昇。持ち家のある人がその家を賃貸する場合の想定家賃である帰属家賃(OER)も同じく0.4%上昇した。ガソリンは下落した。

  ブルームバーグの計算によれば、エネルギー、住宅を除いたサービス価格は前月比で2021年9月以来のマイナスとなった。政策当局はインフレ軌道を見極める上で、こうした指標に目を向けることの重要性を強調しているが、実際には別の指標であるPCE価格指数に基づいてそれを算出している。

  サービスセクターでは幅広い分野でインフレが鈍化。中でもここ数カ月の価格圧力を上昇させてきた自動車保険は、21年以来の低下となった。航空運賃はほぼ1年ぶりの大幅下落。ケーブルテレビと衛星放送、動画配信サービスの価格はほぼ20年ぶりの大幅な低下を記録した。

  サービスとは異なり、財の価格はほぼ1年前から持続的に下げており、消費者の不安をいくらか和らげてきた。しかしこの先のディスインフレをけん引する役割として、財の価格低下はあまり頼りにならないというのがエコノミストの見解だ。

  食品とエネルギーを除くコア財価格は前月から横ばい。3月と4月には下げていた。中古車価格は今年最大の上昇率。処方薬は23年1月以来の大幅上昇だった。

  統計の詳細は表をご覧ください。

 原題:US Inflation Broadly Cools in Encouraging Sign for Fed Officials(抜粋)