Alice Atkins、William Horobin

  • フランス債に重くのしかかる政治不安が27年の大統領選まで続く恐れ
  • 「特異的プレミアムは縮小しても完全になくならない」-ソシエテ

欧州2位の経済大国フランスで実施される国民議会(下院、定数577)選挙の結果、議会の勢力図が塗り替えられれば、経済に広範な影響が及ぶ恐れがある。フランス国債に対し、債券投資家はより高い利回りを何年も要求することになりそうだ。

  チューリッヒ・インシュアランスとニューバーガー・バーマンによれば、マリーヌ・ルペン氏が実質的に率いる極右政党・国民連合(RN)が圧倒的過半数に届かなくとも、フランス国債に市場はより高い利回りを引き続き求めると予想される。

Marine Le Pen
マリーヌ・ルペン氏Photographer: Clement Mahoude/AFP/Getty Images

  ソシエテ・ジェネラルなどは、フランス債相場に重くのしかかる政治不安が2027年の大統領選まで続くと見込む。

  欧州議会選でのRNの圧勝と中道の与党連合大敗を受け、マクロン大統領は今月9日、国民議会を解散し、総選挙を実施すると発表した。フランス10年国債のドイツ国債に対する上乗せ利回り(スプレッド)はその後30ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余り拡大。21日の取引では、一部で節目とみられた80bpに達した。

仏独10年債スプレッド、80bpに拡大-左派連合の支出計画を嫌気

  チューリッヒのチーフマーケットストラテジスト、ガイ・ミラー氏は「フランス国債がドイツ国債に対し今後取引される水準のステップは変化した。過去のようなスプレッド水準で再び取引されるとは思えない」と指摘する。

Markets See Risk Premium Weighing on French Bonds | Spread of 10-year yields over Germany nears highest since 2012

  このリプライシングの理由は2つある。世論調査でリードするRNは、フランスの債務負担を巡る懸念が膨らむ中でも大規模な支出が必要となる措置を依然掲げている。ただ最近になって、経済運営への信頼を高めようと公約の一部を撤回した。

  さらに、極右が台頭すれば欧州連合(EU)との関係が悪化し、将来的にユーロ圏の存続が脅かされる事態もあり得るとの懸念も出ている。

  フランス債利回りが高止まりすれば、経済に広範な影響を及ぼす。同国財務省の試算によると、総選挙実施発表後の利回り水準が1年間続けば、政府の債務負担は年8億ユーロ(約1360億円)増える。5年後もこの水準であれば年間で約40億-50億ユーロ、10年後なら90億-100億ユーロの追加費用が発生するという。

  マクロン大統領の与党連合が世論調査の結果を覆し、議会の過半数を得る予想外の展開となったとしても、リスクプレミアムは残る公算が大きいとソシエテは警告する。極右勢力の伸長で法案可決が難しくなり、改革が阻止される可能性があるためだ。

  ソシエテの金利戦略責任者アダム・クルピエル氏は、与党連合の過半数という市場にとって「ベストシナリオ」が実現するような場合も「フランス債の特異的なプレミアムは縮小しても完全な消失はあり得ないのではないか」と見解を示した。

  この場合、フランス債とドイツ債のスプレッドは縮小するだろうが、50-55bpのレンジを下回ることはないだろうとクルピエル氏は予想。RN勝利なら75-90bpあたりが新たなレンジになり得ると続けた。

  「フランス債の環境が変化するリスクを、当局は過小評価しているとみられる」と同氏は述べた。

原題:Le Pen’s Rise Sets Up French Debt Market for Years of Pain (2)(抜粋)