梅川崇

神田真人財務官は2日、自身の私的懇談会での議論を取りまとめた。報告書の公表に際し、報道各社の取材に対して、今後、長期金利が一段と上昇する可能性があるとし、日本国債について「気をつけなければいけないのは格付けだ」との見解を示した。

  神田財務官は、財政危機に直面したギリシャやポルトガルを例に挙げ、「いったん格下げが始まるとものすごく動きが速い」と指摘。ひとたび変調をきたせば投資適格を失う動きに拍車がかかると語った。

  報告書では、日本国債は「直ちに格下げが生じる状況にはないと思われる」と記している。ただ、こうした状況に備えて財政を強靭(きょうじん)化する必要性を訴えた。

  赤字基調の貿易収支など日本経済が抱える課題に対する処方箋として、生産性の向上、人的資本への投資、国内投資の促進、財政健全化の四つの柱を指摘。日本が化石燃料依存から脱却するための技術活用では、「再エネの拡大や安全確保を大前提にした原発の再稼働を進めることが喫緊の課題」とした。

  懇談会は神田財務官が3月に立ち上げたもので、大学教授や金融機関の専門家20人で構成。貿易収支の基調変化や海外ネットサービスの利用増に伴う「デジタル赤字」の拡大などを踏まえ、課題克服に向けた政策の在り方を議論してきた。現職の財務官が懇談会を主催して政策の改善策を示すのは珍しい。

  為替相場では円安傾向が続いているが、神田財務官は今回の議論は為替とは切り離したものだとした上で、足元の動きは「投機で動いている部分が大きい」との認識を示した。