Jarrell Dillard

  • 雇用率とレイオフ率は共に上昇、雇用市場の流動性示唆
  • 失業者1人に対する求人件数は1.2件、21年6月以来の低水準

5月の米求人件数は予想外に増加した。件数は数カ月にわたって減少傾向にあり、労働需要の緩やかな減速を示していたが、一服する格好となった。

キーポイント
・5月の求人件数は814万件に増加
 ・予想の中央値は794万6000件
 ・前月は791万9000件(速報値805万9000件)に下方修正
  ・3年ぶりの低水準
US Job Openings Unexpectedly Rise | The ratio of openings to unemployed workers was unchanged

  雇用率とレイオフ率は共に上昇し、雇用市場の流動性を示唆した。

  米金融当局が注視する失業者1人に対する求人件数は前月と同じ1.2件と、2021年6月以来の低水準にとどまった。ピークは22年の2件。

  米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は2日、ポルトガルのシントラで開かれた欧州中央銀行(ECB)主催のフォーラムで、労働力需要と供給のバランスが改善の方向へ「大きく」動いたと指摘。雇用市場を引き続き強いと評価しつつ、適切に冷え込みつつあると述べた。

パウエル議長、最新データを歓迎-利下げにはさらなる確信必要 (2)

  今回の統計は健全な労働需要を示唆しているが、1カ月で結論を出すのは難しい。他の統計は雇用市場が徐々に冷え込み、コロナ禍前のようになりつつあることを示唆している。雇用と賃金の伸びはここ数カ月で緩やかになり、歴史的に低い水準で推移していた失業保険の受給者が増えている。

米失業保険継続受給者、21年末以来の高水準-失業期間が長期化 (2)

  5月の求人件数増加は製造業や政府機関、医療関係がけん引した。一方、宿泊・飲食サービス業での求人減少が目立った。

  採用の回復をけん引したのは、専門職・ビジネスサービス業と建設業だった。ビジネスサービス業はレイオフも最も多く、転職者数の増加を示唆している。全体として、解雇者数の増加の大半は南部が占めた。

  自発的離職者の割合である離職率は前月と同じ2.2と、2020年以来の低水準にとどまった。離職率の低さは、数年前と比べて新しい職を見つける自信が薄れていることを示唆している。

  回答率が低いことなどから、この労働省雇用動態調査(JOLTS)の信頼性を疑問視するエコノミストもいる。

「ゴースト求人」が増える米雇用市場、求職者やエコノミストを悩ます

  JOLTSの詳細は表をご覧ください。

原題:US Job Openings Unexpectedly Increase From a Three-Year Low(抜粋)