Matthew Boesler
- 非農業部門雇用者数20.6万人増に鈍化-前月まで2カ月分は下方修正
- 失業率は4.1%に上昇-2021年11月以来の高水準
6月の米雇用統計では、雇用者数と賃金の伸びが鈍化した。一方で失業率は2021年11月以来の高さに上昇し、米金融当局が今後数カ月以内に利下げを開始するとの観測を強める内容となった。
キーポイント |
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・非農業部門雇用者数(事業所調査、季節調整済み)は6月に前月比20万6000人増加 ・エコノミスト予想の中央値は19万人増 ・前月は21万8000人増(速報値27万2000人増)に下方修正 ・過去2カ月分では計11万1000人下方修正 ・家計調査に基づく失業率は4.1%に上昇 ・市場予想は4% ・前月は4% ・平均時給は前月比0.3%増-前月は0.4%増 ・市場予想も0.3%増 ・前年同月比では3.9%増-前月は4.1%増 ・市場予想も3.9%増 |
雇用者数の伸びは、過去3カ月平均では2021年初め以来のペースに減速しており、4-6月(第2四半期)の労働市場が当初予想よりも冷え込んだことを反映。求人件数の減速傾向や失業保険申請件数の増加など、他の雇用関連指標とも整合する。
雇用の持続的な減速は最近のインフレ鈍化と相まって、米金融当局が早ければ9月にも利下げを行うとの見方を強める。
チャールズ・シュワブのチーフ債券ストラテジスト、キャシー・ジョーンズ氏は「過去2カ月分の下方修正と失業率の上昇が重要なポイントだ。賃金の伸びも鈍化している」と指摘。「これら全てが減速傾向ということになる」と述べた。
労働参加率は62.6%に上昇。25-54歳の労働参加率は83.7%と、22年ぶりの高水準に上昇した。
6月は雇用者数増加の約4分の3が、ヘルスケアと政府部門によるものだった。懸念される兆候の一つは、臨時雇用が過去3年余りで最も減少したことだ。また製造業の雇用者数は8000人の減少と、2月以来の大きな落ち込みとなった。
賃金の伸びは引き続き鈍化。平均時給は前年同月比では3.9%増と、過去3年間の最低水準と並んでいる。
スチュアート・ポール氏らブルームバーグ・エコノミクスのエコノミストは「失業率は年末までに4.5%まで上昇するとわれわれはみている。7月もしくは8月の雇用統計で4.2%に達すれば、連邦公開市場委員会(FOMC)は9月17-18日の会合で利下げに踏み切るだろう」と述べた。
ロンバー・オディエ・アセット・マネジメントのマクロ調査担当責任者、フロリアン・イエルポ氏は6月雇用統計について、「FOMCに9月利下げの確信を与える可能性がある」と指摘。「インフレ率が依然として目標を上回っているにもかかわらず、雇用市場の冷え込みが鮮明になっているためだ」とし、「今回はFOMCが待ち望んでいた類いの雇用統計だ。軟化してはいるが適度に強いデータであり、今年2回の利下げを正当化する可能性がある」と述べた。
他の市場関係者の間でも、今回の雇用統計は9月利下げ観測を補強する内容だとの指摘が多い。
【米雇用統計】FOMCに9月利下げの確信与える-市場関係者の見方
統計の詳細は表をご覧ください。
原題:US Payroll Growth Slows and Jobless Rate Ticks Up to 4.1%、Treasury Yields Sink as Jobs Bolster Fed-Cut Bets: Markets Wrap(抜粋)
▽米6月雇用20.6万人増、失業率4.1%に上昇 賃金伸び減速<ロイター日本語版>2024年7月6日午前 2:25 GMT+9
[ワシントン 5日 ロイター] – 米労働省が5日発表した6月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は前月比20万6000人増と、健全な伸びを示した。ただ、政府部門が増加分の3分の1以上を占めたほか、失業率は約2年半ぶりの高水準に達した。賃金の伸びも鈍化し、労働市場の緩みが浮き彫りとなったことで、米連邦準備理事会(FRB)が年内に利下げを開始する可能性が強まった。
失業率は前月の4.0%から4.1%に上昇し、2021年11月以来の高水準となった。昨年7月に付けた低水準の3.5%から0.6%ポイント上昇した計算となる。
ロイターがまとめた予想は非農業部門雇用者数が19万人増、失業率は4.0%だった。
5月の非農業部門雇用者数は27万2000人増から21万8000人増に、4月分は16万5000人増から10万8000人増にそれぞれ下方改定され、両月の雇用者数は計11万1000人減少した。
今年上期の雇用者数の伸びは、平均で月間約22万2000人となった。
時間当たり平均賃金は前月比0.3%上昇。5月(0.4%上昇)から減速した。前年比では3.9%上昇で5月(4.1%上昇)から鈍化し21年6月以来の低い伸びとなった。上昇率が3.0─3.5%であればFRBの2%のインフレ目標と一致するとされている。
フィッチ・レーティングスの主任エコノミスト、ブライアン・コールトン氏は「米労働市場の状況は緩慢なペースではありつつも確実に和らぎつつある」と指摘。「最近のインフレ面での改善と相まって、9月に利下げを開始できるという安心感をFRBに与えるだろう」と述べた。
BMOキャピタル・マーケッツの米国チーフエコノミスト、スコット・アンダーソン氏は「ここ数カ月の失業率の上昇は労働市場の減速を示す明確な証拠となった。金融政策担当者は、消費者物価上昇率が持続可能な形でまもなく目標の2%に戻るという『確信を強める』はずだ」と述べた。
金融市場が織り込む9月17━18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ確率は約72%。12月に2回目の利下げが実施される可能性があるという観測も高まっている。
業種別では、政府部門が7万人増、医療関連が4万9000人増で、全体の伸びを主導した。建設も2万7000人増加した。
一方、小売と製造が減少したほか、専門・ビジネスサービス部門は1万7000人減。将来的な雇用の行方を示すとされる人材派遣は約4万9000人減で、20年4月以来最大の減少を記録した。
LPLファイナンシャルのチーフエコノミスト、ジェフリー・ローチ氏は「現時点で労働市場に破滅的な兆候は見られないが、労働市場が政府の雇用者数によって支えられている状況を投資家は警戒すべきだ」と述べた。さらに雇用者数の増加の「過去2カ月分の下方修正は経済減速と一致している」という見方を示した。
労働力参加率は62.6%で、5月の62.5%から上昇。25━54歳の働き盛りの労働者の労働参加率は83.7%と、前月の83.6%から上昇し、02年2月以来の高水準となった。
また、経済的理由によるパートタイム労働者数は減少した。
インディード・ハイリング・ラボの北米経済調査ディレクター、ニック・バンカー氏は、労働市場が足元順調に推移しているとしつつも、「いずれ失速する可能性があるという証拠は増えている」と述べた。