Ania Nussbaum、Samy Adghirni、William Horobin

  • 優勢とみられた極右のRN、マクロン氏連合にも及ばない見通し
  • 左派の支出拡大路線を投資家は警戒、ユーロは下落して取引開始
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Photographer: Mohammed Badra/AFP

7日投開票されたフランスの国民議会(下院、定数577)選挙で、左派連合が第1党となる見通しとなった。出口調査の結果で明らかになった。過半数を確保して次期政府の組閣を狙っていた極右政党・国民連合(RN)を実質的に率いるルペン氏は予想外の打撃を被った。

  出口調査によると、穏健派の社会党から極左の「不屈のフランス」まで寄り集まった左派連合「新人民戦線」は172-210議席を得る見通し。過半数に必要な289議席には大きく届かない。

  先週の世論調査では第1党になる見通しが示されていたRNは113-155議席で第3党にとどまる見込み。マクロン大統領の中道連合は150-175議席でRNを上回りそうな情勢だという。

  

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仏下院選決選投票で票を投じた後のマクロン大統領(7日)Photoprapher:Mohammed Badra/AFP/Getty Images

  フランスの公的財政状況を懸念する投資家にとって、新人民戦線の勝利は警戒すべき要因となる公算が大きい。選挙戦では、最低賃金の引き上げや定年の引き下げなど公的支出の大幅な拡大を公約。これらの措置は、欧州連合(EU)との深刻な対立を引き起こす可能性がある。

  左派勝利の見通しを受け、シドニーで始まった8日の外国為替市場でユーロは対ドルで下落している。

  「不屈のフランス」のメランション党首は7日、「新人民戦線は政策を実行する」と記者団に表明。「政策しかない。全て政策だ」と述べた。

  左派が単独で政府を担えるだけの議席を獲得しない場合、政府発足のため左派はマクロン氏に新たな支出への確約を要求する可能性が高い。

  いずれの政党も過半数の議席を取れない見通しのため、マクロン氏は少数内閣を率いる首相を指名することになる。首相は通常、議会内第1党から指名されるが、明確な勝者のいない結果であれば複数の政党が一定期間連立を組む展開もあり得る。

  フランス大統領府の発表文によると、次期首相の指名についてマクロン氏は新議会の構成を見てからさらなる決定を下す。大統領が7日夜に選挙結果に関して話すことはないという。

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出口調査発表後に支持者に話す極左「不屈のフランス」のメランション党首(7日)Photography:Sameer Al-Doumy/AFP/Getty Images

  マクロン氏は先週の第1回投票でルペン氏のRNに圧倒されたが、出口調査の結果通りであれば、議会解散に踏み切った同氏の決定は完全には間違っていなかったことになる。第1回投票で与党連合はRNに得票率で大差を付けられ3位にとどまり、解散の判断は広く批判されていた。

  マクロン氏は以前、「極端なグループ」を阻止するため対立する諸政党がともに統治することもできると示唆し、少数の中道連立内閣の可能性に言及した。

  獲得議席数の見通しをさらに詳しく各党に分けて予想したトルナ・ハリス・インタラクティブによると、マクロン氏のグループと新人民戦線の穏健派で数字上は306議席に達する見込みで、過半数を優に上回ることができる。 

  ただ、これらの政党が協力に前向きかは別問題だ。メランション氏は、マクロン氏の陣営と取引することは拒否すると明言していた。

原題:French Left Headed for Victory in Shock Reversal for Le Pen (1)(抜粋)

▽仏総選挙、左派が最大勢力の勢い 極右は第3勢力か<ロイター日本語版>2024年7月8日午前 7:16 GMT+9

By Juliette Jabkhiro , Layli ForoudiZhifan Liu

仏総選挙、左派が最大勢力の勢い 極右は第3勢力か

[パリ 7日 ロイター] – 7日投開票されたフランス国民議会(下院、577議席)総選挙の決選投票は、調査会社の予測によると、事前の予想に反して左派連合が極右を抑えて最大勢力になる見通しとなった。ただ、過半数には届かない見込みで、ハングパーラメント(宙づり議会)に陥る可能性が高い。

当初は第1党になるとみられていたマリーヌ・ルペン氏の極右政党「国民連合(RN)」は第3勢力にとどまり、マクロン大統領の中道与党連合がRNをやや上回り第2勢力となる見通しだ。

調査会社イプソスの予想では左派連合「新人民戦線(NFP)」が171─187議席、RN(連携勢力を含む)が134─152議席を獲得する見通し。

エラブの調査では左派連合が182─193議席、RNと連携勢力を合わせて136─144議席と予想されている。

左派と中道連合はRNの勝利を阻止するため多くの選挙区で候補者を一本化していた。

下院は左派、中道、極右という主張の異なる3つの大きなグループに分かれる見込みで、今後の見通しは不透明だ。

左派は燃料や食料品など必需品価格の上限設定、最低賃金や公共部門労働者の賃金引き上げ、富裕層への課税などを掲げる。

調査会社による議席予想を受けてユーロは下落。マネックス・ヨーロッパのFXアナリスト、サイモン・ハービー氏は「フランスの立法能力に空白が生じる」と指摘した。

重要な問題は急伸左派、環境政党、社会党が参加する左派連合が結束を保ち、今後の方針で一致できるかだ。

NFPに参加する急進左派「不服従のフランス(LFI)」を率いるメランション氏はさまざまな党派による幅広い連立を否定し、マクロン大統領は左派連合に政権樹立を要請しなければならないと述べた。

一方、マクロン氏の中道連合では党派を超えた幅広い連立を構想する動きも出ているが、LFIを含めることはできないとしている。