Rita Nazareth
- 決算発表に関するハードル高い、荒れた展開に備え必要との指摘も
- 米国債は短中期債売り、長めの国債に買い-9日にパウエル議長証言
8日の米株式市場では、S&P500種株価指数が小幅ながら5営業日続伸し、またも史上最高値で引けた。翌日以降に行われるパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言と、間もなく発表される企業決算を見極めたいとのムードが強かった。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5572.85 | 5.66 | 0.10% |
ダウ工業株30種平均 | 39344.79 | -31.08 | -0.08% |
ナスダック総合指数 | 18403.74 | 50.98 | 0.28% |
S&P500種が終値ベースで最高値を更新したのは、今年に入って35回目。大手米銀の決算発表は12日に始まる。シティグループの指数によれば、アナリストによる企業利益予想では上方修正が下方修正を上回った。ブルームバーグの集計データによると、S&P500種構成企業の1年先の利益予想は過去最高水準に達した。
オッペンハイマー・アセット・マネジメントのジョン・ストルツファス氏は、堅調な企業業績見通しと景気の底堅さを背景に、さらなる米株上昇があり得ると指摘。S&P500種の年末時点の目標を5500から5900に引き上げた。
ゴールドマン・サックス・グループのスコット・ルブナー氏は、非常に高い利益予想が既に織り込まれているとして決算発表に関するハードルは高いと指摘した。
ネーションワイドのマーク・ハケット氏は「決算発表シーズンが今週始まる中、幾分『荒れた展開』に備えるべきだ。ただ、企業が自社株買いを再開すれば相場は再び上昇する可能性が高い」と述べた。
エヌビディアは反発。UBSグループが「極めて強い」需要を理由に目標株価を引き上げた。
フランス国民議会(下院)選挙では絶対的な多数を得る政党がなかったため、政治的に膠着(こうちゃく)し大幅な政策変更は回避されるとの観測が広がっている。バイデン米大統領は民主党議員に対し、大統領選に残ると言明した。
モルガン・スタンレーのマイク・ウィルソン氏は、米大統領選や企業決算、米金融政策を巡り不透明感が漂う中、株式相場の調整に備える必要があるとの認識を示した。「大統領選までに10%の調整が入る可能性は高いだろう」とし、7-9月(第3四半期)は「平たんではない」とブルームバーグテレビジョンで語った。
パウエルFRB議長は9、10両日に金融政策に関する半期に一度の議会証言を行う。金融当局の利下げ開始にしびれを切らしている議員や、ウォール街の金融機関に対するFRBなどの資本要件強化案に不満を持つ議員からの圧力に直面する見通しだ。
11日に発表される6月の米消費者物価指数(CPI)は、食品とエネルギーを除くコアベースで前月比0.2%上昇の予想。実際にそうなれば、2カ月の数値としては昨年7ー8月以来の低い上昇率となり、米金融当局が望むペースに近い。
米消費者の1年先インフレ期待、2カ月連続で低下-NY連銀調査
グレンミードのジェーソン・プライド、マイケル・レイノルズ両氏は、経済を損なうことなくインフレが鈍化するなら、米国の緩和サイクルはリスク資産への追い風になり得ると指摘。「歴史上、世界的に歩調を合わせたような緩和サイクルは短中期的に株式への強気シグナルだ」と述べた。
米国債相場はまちまち。短中期債が売られ、長めの国債が買われた。パウエル議長の議会証言を控え、2年債利回りは2ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余り上昇。一方、30年債利回りは2bp近く低下した。
国債 | 直近値 | 前営業日比(BP) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.46% | -1.5 | -0.34% |
米10年債利回り | 4.28% | 0.0 | 0.00% |
米2年債利回り | 4.63% | 2.9 | 0.63% |
米東部時間 | 16時41分 |
ストラテガスのトーマス・ツィツォリス氏は、今年下期に債券に対するポジションはロングが多い状況で始まったようにみえると指摘。経済データが景気軟化を示唆しているほか、今秋に利下げが実施されるとの見方が背景にあると分析した。
同氏は一方で、ショート筋が市場に戻ってきている初期の兆候が見られるとも言及。「ポジショニングのデータを分析すると、利下げ見通しを受けたロングバイアスが示されているにもかかわらず、市場参加者を完全に納得させることはできていない状況が分かる。ショート筋がゆっくりと市場に戻ってきている」と述べた。
外国為替市場で、ドルはカナダ・ドルを除く他の主要10通貨に対して上昇。パウエル議長の上院銀行委員会での証言を翌日に控え、活発な取引は見送られた。
ブルームバーグ・ドル・スポット指数は小幅高。前営業日を挟んで上下に振れる展開だった。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1260.64 | 0.37 | 0.03% |
ドル/円 | ¥160.82 | ¥0.07 | 0.04% |
ユーロ/ドル | $1.0824 | -$0.0016 | -0.15% |
米東部時間 | 16時41分 |
円はドルに対してほぼ変わらず。朝方に1ドル=161円近辺を付けた後、午前の取引で160円台半ばまで小幅に上昇。その後は160円台後半での小動きとなった。
ポンドは対ドルで8営業日ぶりに下落。一時上昇していたが、小幅安に転じた。イングランド銀行(英中央銀行)金融政策委員会(MPC)のハスケル委員は、「タイトで損なわれた」労働市場がインフレを高止まりさせると警告し、来月の政策決定会合で16年ぶりの高水準にある金利の据え置きに賛成する意向を示唆した
ニューヨーク原油相場は続落。ハリケーン「ベリル」は米テキサス州の石油設備に大きな被害をもたらさないようだとの見方が広がった。
先週までのウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は、週間ベースで4週間連続高となっていた。ハリケーンがメキシコ湾岸とテキサス州の石油生産に影響を及ぼすとの懸念が、先物価格を押し上げる一因となっていた。しかし精製マージンの軟化は、ハリケーンがインフラストラクチャーに与える脅威は懸念されていたほどではないとの見方を反映している。
それでもテキサス州ではヒューストン港とコーパスクリスティー港の閉鎖で積み出しに遅延が生じる可能性はある。ヒューストン港の閉鎖は9日も続くが、コーパスクリスティー港は再開された。ヒューストンでは約85%の世帯が電力を失い、石油企業は操業を調整している。
原油価格は先週の取引で4月下旬以来の高値を付けた。ブレント原油先物市場では4週間連続で買い越しのポジションが拡大していた。夏場の需要増加と在庫減少が見込まれていたためだ。ただ中国での動向に軟化の兆候が見られることから、相場の上値は重かった。売買がせめぎ合う綱引き相場で大きな動きが抑制され、5日のボラティリティーの指標は2019年以来の水準に低下した。
今週は世界の石油需給に関するリポートが複数発表される。石油輸出国機構(OPEC)は10日に月間の見通しを明らかにし、国際エネルギー機関(IEA)は11日に予測を発表する。米エネルギー情報局(EIA)の統計も注目される。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物8月限は前営業日比83セント(1%)安の1バレル=82.33ドル。ロンドンICEの北海ブレント9月限は同0.9%下げて85.75ドル。
ニューヨーク金相場は反落。先週は週間ベースで3カ月ぶりの大幅上昇だった。投資家は中央銀行による金購入に注目している。
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、中国人民銀行(中央銀行)は5月と6月の2カ月連続で金購入を見送った。UBSの調査アナリスト、ジョバンニ・スタウノボ氏はこの件が投資家にとって懸念材料かもしれないと指摘した。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時30分現在、前営業日比1.5%安の1オンス=2356.20ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は同34.20ドル(1.4%)下げて2363.50ドルで引けた。
原題:S&P 500 Ekes Out Gain to Notch 35th Record in 2024: Markets Wrap(抜粋)
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