Alan Katz、William Horobin

  • ルペン氏の国民連合は3位に-左派連合の新人民戦線が最多議席
  • 政権が成立するには「少なくとも数週間はかかるだろう」と専門家

7日実施されたフランス国民議会(下院)選挙決選投票で、マリーヌ・ルペン氏率いる極右勢力は予想外の敗北を喫した。明確な多数派を持たない分裂議会が誕生したことで、フランスは長期にわたる政治的混迷へと向かっている。

  極左グループ「不屈のフランス」を含む左派連合が、下院577議席のうち178議席を獲得して最大勢力となるが、それでも絶対多数に必要な289議席には遠く及ばない。マクロン大統領のグループが2位で、ルペン氏の国民連合(RN)は3位にとどまった。

  先月の欧州議会選挙で右派が圧勝したため、投資家は極右による政権奪取を懸念していた。しかし、一部のアナリストはジャンリュック・メランション氏が率いる「不屈のフランス」が政権を獲得することをより懸念していた。メランション氏は財政を不安定にし、市場危機を招くリスクのある政府支出を公約に掲げていた。

  選挙結果は、メランション氏もルペン氏も自分たちの計画を実行に移すことができないことを意味し、実行能力のある政権の成立を極めて困難にした。

  アドバイザリー会社テネオの政治アナリスト、アントニオ・バローゾ氏は「極端な事態は回避された。しかし問題は、政権成立への簡単な道がないことだ」と話した。

  フランス国債とユーロはほぼ変わらず。フランス株の指標CAC40指数は0.3%高。フランス株は最近の下げのほぼ半分を取り戻し選挙発表前の6月9日に比べ3.8%安となっている。

  新人民戦線として知られる左派連合は、ルペン氏のグループが過半数を獲得するのを阻止するため、第2回投票の前にマクロン氏の中道派と協定を結んだ。フランス内務省によると、ルペン氏のRNは第1回投票で最大の得票率だったが、最終的にはマクロン氏のグループが獲得した156議席に対して143議席にとどまった。

  「フランスで政治が行き詰まり、議会が3つのブロックに分かれるというシナリオは、最もましなシナリオだ」とミラボーのディレクター、ジョン・プラサール氏は述べた。

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Source: Bloomberg

  マクロン大統領は、欧州議会選挙での敗北を受けて呼びかけた総選挙は、フランスの政治状況を明確にするためのものだと述べていたが、選挙はむしろ、可能な政権の形を探る数週間にわたる交渉の幕開けとなった。

  第5共和制の選挙規則は膠着(こうちゃく)状態を避けるように設計されているが、フランスは欧州の他の諸国と同様の政治的分断に陥った。

  オランダのスホーフ首相は、選挙から約8カ月後の今月就任した。スペインのサンチェス首相は、議会の最大会派である保守党が過半数を形成できなかったため、7つの異なる政党の支持を得て政権を担っている。ドイツではショルツ首相が約半世紀ぶりの3党連立を率いている。

  憲法や政治の専門家によれば、フランスで最も可能性が高いのは、大きな変化を目指すことなく国の運営を維持できるような最低限の政策を持つ政権だ。

  パリ政治学院(シアンス・ポ)の憲法専門家、メロディ・モックグリュエ氏によれば、1947年-54年のバンサン・オリオール大統領の時代までさかのぼらなければ、同じような状況は見られないという。政権が成立するには「少なくとも数週間はかかるだろう」と同氏は述べた。

  アタル首相は7日夜、8日に辞表を提出する意向を表明したが、マクロン大統領はアタル氏に、安定維持のため暫定的に首相にとどまるよう要請した。

  メランション氏はマクロン氏に、敗北を認めアタル氏に代わる左派の首相を任命するよう要求。新人民戦線は公約のプログラムを全面的に実施すると支持者に語ったが、社会党のオリビエ・フォール党首はフランス国民のニーズと要求に応えるための「道筋を見つける」のが党の責務だと、より融和的な姿勢を示した。

  「議会が分裂しているというだけでなく、政党自体が分裂しているのだ」とテネオのアナリスト、バローゾ氏は述べた。

  フランスの憲法では大統領が誰でも好きな人を首相に選ぶことができるが、首相の政党が議会で過半数を占めていなければ、内閣不信任案の影響を受けやすく法案を通すのは難しい。

  モックグリュエ氏によれば、マクロン大統領は本格的な交渉を始めるのを18日に国民議会が開かれるまで待つ見込み。新人民戦線を構成する政党は異なるグループを形成する可能性が高く、マクロン氏が社会党や緑の党と交渉する可能性があると同氏は述べた。

  次に何が起こるにせよ、フランスの政治家たちはより多くの妥協を伴う新しい活動方法を見つけなければならないというコンセンサスが生まれつつある。議会が大統領のプログラムを淡々と実行することに慣れているこの国では、それは容易なことではない。

  首相候補と目されている社会党のラファエル・グリュックスマン氏はTF1の番組で、「われわれはリードしているが、完全な多数派ではない」と述べた。「だから、大人らしく振る舞う新しい時代を始める必要がある。議論と対話が必要だ」と語った。

原題:France Dodges Far-Right Win But Macron Has No One to Govern (3)(抜粋)