Daryna Krasnolutska、Jennifer Jacobs、Alberto Nardelli

  • ロシア凍結資産利用を検討していたG7にサウジが「遠回しな脅迫」
  • サウジはフランス債に言及、動機は不明-関係者
ウクライナのゼレンスキー大統領とサウジアラビアのムハンマド皇太子(今年2月、リヤド)
ウクライナのゼレンスキー大統領とサウジアラビアのムハンマド皇太子(今年2月、リヤド) Photographer: Bandar Aljaloud/AP

主要7カ国(G7)がおよそ3000億ドル(約48兆3000億円)に上るロシア凍結資産の押収を決定すれば、サウジアラビアは保有する欧州債券の一部を売却する可能性があると今年に入り内々に示唆した。事情に詳しい関係者が明らかにした。

  サウジ財務省がG7の一部の国に対し、ウクライナ支援を意図したロシア凍結資産の押収案に異論を差し挟んできたという。関係者の1人は、サウジのメッセージを遠回しな脅迫だと表現した。サウジは具体的にフランス国債に言及したと、関係者の2人は語った。

  5月から6月にかけ、G7はロシア中銀の資産についてさまざまな選択肢を検討していた。米国と英国は直接の資産押収を含むより大胆な選択肢の検討を主張したものの、結局は資産そのものに手を付けず、資産が生む利益を活用することで合意した。

  ユーロ圏の一部の国は、ユーロの価値が損なわれる恐れがあるとして、ロシア凍結資産の直接の押収には反対した。

  非公開の会話を話しているとして匿名を要請した関係者によると、これらの国の消極的な姿勢にはサウジの影響があった公算が大きい。

  サウジ財務省は発表文で、「そのような脅迫は行われていない」と否定。「G7や他国とサウジの関係には、相互の尊重がある。世界の成長を促進し、国際金融システムの回復力を高めるあらゆる問題をわれわれは議論していく」と続けた。

  サウジが保有するユーロとフランス国債は数百億ユーロ相当に上る可能性がある。売却するとしても相場に大きな違いをもたらすほどではないとみられるが、それでも欧州当局者はサウジの動きに他国も追随する恐れがあると懸念した。

  サウジ当局者の1人は、このような脅しをかけるのは同国政府のスタイルではないが、ロシア資産押収があった場合の最終的な結果をG7諸国に説明した可能性があると述べた。

  G7が資産押収を回避する案を決定すると、サウジの姿勢は変わったと、関係者の1人は語った。

  関係者によると、サウジが資産押収の前例が作られ将来的に別の国にも使われる恐れから自らの利益を考えて行動したのか、ロシアとの連帯から動いたのかは定かではない。石油輸出国機構(OPEC)とそれ以外の主要産油国で構成する「OPEC」プラスをともに率いるサウジとロシアは、ロシアのウクライナ侵攻開始以降、緊密な関係を維持している。

  一方でサウジはウクライナとも関係を築き、ゼレンスキー大統領は先月サウジを訪問し、ムハンマド皇太子と会談した。

  いかなる動機であれ、国際舞台におけるサウジの影響力の強まりと、G7にとってウクライナ問題でいわゆる「グローバルサウス(新興・途上国)」の支持を確保することの難しさが浮き彫りになる。

  フランス政府はコメントの要請に今のところ応じていない。

原題:Saudis Warned G-7 Over Russia Seizures With Debt Sale Threat (1)(抜粋)