Ania Nussbaum
- 社会党、マクロン陣営の左派に働きかける用意
- 下院は複雑な分裂状態、連立形成のための駆け引き始まる
フランスの左派連合の一角を担う社会党は、マクロン大統領のグループの一部議員に歩み寄ろうとしている。過半数を制した勝者のいない選挙の後の政治的駆け引きが始まった。
社会党の交渉責任者でフランス西部のナントの市長を務めるヨハンナ・ロラン氏は9日、フランス2ラジオで「われわれは明確なビジョンを持っているがセクト主義ではないので、そのようなベースでわれわれとの交渉を望む人たち(特にマクロン陣営の左派について考えているが)に対して、オープンだ」と語った。
新たな多数派が合意できるテーマとして医師や地方警察官の不足を挙げ、議会がケースバイケースで法案に合意することが可能だと示唆した。
社会党、緑の党、極左の「不屈のフランス」を含む左派連合は、7日の決選投票でのサプライズ勝利の後、主導権を握ろうとしているもようだ。投票によって国民議会(下院)は複雑な分裂状態に陥り、連立与党を形成するための前例のない取引への扉が開かれた。
ロラン氏は、首相候補を提案するための新人民戦線メンバー間での協議にしばらく時間がかかる可能性があるとくぎを刺した。左派の他の議員たちは今週中か来週初めの提案が目標だと発言していたが、協議の複雑さがうかがわれる。
大統領は提案された首相を受け入れる義務はないが、解散総選挙で自国を政治的混乱に追い込んだマクロン氏にとって、首相選びは非常に困難だ。分裂した下院で不信任投票に耐えられる候補を見つける必要がある。マリーヌ・ルペン氏の極右政党「国民連合(RN)」と復活した左派に挟まれ、マクロン氏自身の権力基盤は縮小している。
意外な復活を遂げたとはいえ、左派は過半数に100議席以上及ばず、政権を狙うなら他党にも勢力を広げる必要がある。しかし、極左議員たちは不屈のフランスを過激と呼び親パレスチナの同党を反ユダヤ主義と主張して非難しているマクロン氏との協力に同意しそうにはない。
ロラン氏は9日、不屈のフランスのリーダー、ジャンリュック・メランション氏を首相候補から除外した。
「妥協と議論が必要だ」と述べ、左派連合の首相候補について投票を行うだろうと付け加えた。
緑の党と社会党が2022年の前回選挙に比べて議席を伸ばしたのに対し、メランション氏の不屈のフランスは横ばいで、同氏の勢いと穏健派にアピールする能力には疑問符が付く。メランション氏(72)は8日遅くに、格付け会社と独仏関係が重要だと述べ、攻撃的な姿勢を和らげたように見えた。
同氏はLCIテレビで「安定が必要だ」と語った。
メランション氏は、富裕税のようないくつかの政策について妥協点を見いだすことができると述べると同時に、新人民戦線は依然として健在だと再確認した。新人民戦線は選挙戦で、最低賃金の引き上げと企業や富裕層への増税を公約していた。
マクロン氏の盟友で中道政党、民主運動(MoDem)の党首、フランソワ・バイル氏も8日夜のLCIの番組で、政権の輪郭は不屈のフランスを除いた左派とRNを除いた右派にまたがるべきだとの考えを示した。不屈のフランスの政策は「危険」だとの立場を繰り返した。
マクロン派が新人民戦線の一部および中道右派との中道連立を模索するとの予想の中、後継者が決まるまで留任するアタル首相は9日に党員と会談する。とはいえ、駆け引きの余地は限られそうだ。
マクロン派は7日には168議席を獲得して予想以上の好成績を収めたが、多くの議席は極右の勝利を阻止するための左派との協力の結果だ。極右に対抗するいわゆる「共和国戦線」が、分裂の中で各派が協力する動機付けになるかもしれない。
トルナ・ハリス・インタラクティブが7日の投票終了後に実施した世論調査によると、2027年の次期フランス大統領選の第1回投票ではルペン氏が首位に立つ見込み。
原題:France’s Left Appeals to Macron Allies to Gain Edge in Coalition(抜粋)