Rita Nazareth
- バンス上院議員、共和党にとって世代交代の可能性を示す
- 円はパウエル氏発言で一時157円台前半に上昇も、急速に上げ消す
15日の米株式相場は続伸。トランプ前米大統領の暗殺未遂事件を受けて同氏がホワイトハウス返り咲きを果たす可能性が高まったとの見方から、市場のボラティリティーが上昇するとの予想も出たが、それは現実のものとならなかった。トランプ氏はバンス上院議員を副大統領候補に選んだ。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5631.22 | 15.87 | 0.28% |
ダウ工業株30種平均 | 40211.72 | 210.82 | 0.53% |
ナスダック総合指数 | 18472.57 | 74.12 | 0.40% |
主要株価指数はそろって上昇。S&P500種株価指数は最高値付近で推移した。トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループは31%急伸。トランプ氏返り咲きの確率が高まるとの見方はこの他にも、石油生産会社や銃器メーカー、民間刑務所運営会社の株価を押し上げた。テスラも高い。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)はトランプ氏に献金した。一方、太陽光発電や大麻関連企業は下落。民主党の方がこうしたセクターに友好的とみられている。
大型ハイテク株は高安まちまちで、アップルは上場来高値を更新。モルガン・スタンレーがトップピック銘柄に指定したことが手掛かり。一方、エヌビディアは値下がりした。小型株で構成するラッセル2000指数は1.8%高。ゴールドマン・サックス・グループは上昇。自社株買いの減速計画を示したが、大幅な増益が好感された。メーシーズは急落。投資会社2社との間で進めていた身売り交渉を打ち切り、自力での再建計画を実行すると発表した。
バンス議員(39)はトランプ氏よりも40歳近く若く、共和党にとって世代交代の可能性を示す。ミシガンやウィスコンシン、ペンシルベニアといった激戦州でかつて民主党の基盤であった労働者階級へのアピールを強化したい共和党に、新鮮な声を提供する。プレディクトイットのデータによれば、トランプ氏が大統領選で勝利する確率は暗殺未遂事件の後に上昇した。
UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのトム・マクローリン氏は「米国の歴史上、歴代大統領の3分の1が副大統領を経験していることから、今回の決定は極めて重要だ」と指摘。「さらに今回のトランプ氏の決定は、若い世代の有権者にポピュリスト的なメッセージを伝えるという点で、事実上バンス氏を後継者に指名したことになる」と述べた。
市場はパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言にも注目。同議長は4-6月(第2四半期)の経済データで、インフレが当局目標の2%に向かって低下しているとの自信を政策当局者が深めたと述べた。
パウエルFRB議長、最近のデータでインフレに関する自信深めた (1)
米国債市場では30年債利回りが1月以来初めて2年債利回りを上回った。トランプ氏が11月の大統領選で勝利した場合、拡張的な財政政策を追求するとの見方が背景にある。
国債 | 直近値 | 前営業日比(BP) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.46% | 6.1 | 1.39% |
米10年債利回り | 4.23% | 4.7 | 1.11% |
米2年債利回り | 4.46% | 0.6 | 0.14% |
米東部時間 | 16時51分 |
オッペンハイマー・アセット・マネジメントのジョン・ストルツファス氏は「トランプ前大統領の暗殺未遂事件には衝撃を受けたが、市場はこのニュースを素早く消化し、大騒ぎしないだろう」と指摘。「衝撃的な出来事があっても投資家は動じない傾向がある。投資家は引き続き景気と企業業績に注目すると見込まれる」と述べた。
TDセキュリティーズのマーク・マコーミック氏は、市場は「選挙についてはそれほど騒いでおらず」、それよりも米経済指標、とりわけ最新の消費者物価指数(CPI)の意外な下振れを享受することに熱心なようだと話した。
ルネサンス・マクロ・リサーチのニール・ダッタ氏は「7月に利下げを見送る唯一の理由は『市場に備えさせる必要がある』という、思慮を欠いたお決まりのナンセンスだ」と指摘。「実に理解に苦しむが、それが現実だ」と話した。
ドル指数は上昇。パウエル議長の発言後に日中の高値に上げた。トランプ氏の暗殺未遂事件を受けて逃避の動きが強まったことも、ドルを支えた。
円は対ドルで小幅安。パウエル議長の発言を受けて一時値上がりし、1ドル=157円19銭まで買われる場面もあったが、その後は急速に上げを消した。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1252.12 | 2.57 | 0.21% |
ドル/円 | ¥158.11 | ¥0.28 | 0.18% |
ユーロ/ドル | $1.0896 | -$0.0011 | -0.10% |
米東部時間 | 16時51分 |
マネックスの外国為替トレーダー、ヘレン・ギブン氏は「円は他通貨よりも米金利スワップに敏感な状況だ。金利差が非常に大きいためだ」と指摘。「利下げへの期待は他のどの通貨よりも円に影響をもたらすだろう」と述べた。
米商品先物取引委員会(CFTC)が13日発表した9日終了週のデータによると、アセットマネジャーの円安・ドル高を見込むポジションは約1カ月ぶりに減少したものの、依然として2007年以来最大の水準に近い。
円は年初来では対ドルで約10%下落しており、主要10通貨で最悪のパフォーマンスとなっている。
ニューヨーク原油先物相場は小幅安。市場では米国と中国における需要低調の兆候が意識された。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は終値で1バレル=82ドルを割り込んだ。米国における今夏の原油消費は独立記念日の祝日(7月4日)ごろにピークを迎えたとみられており、価格は今月の高値から下げている。また最大の原油消費国である中国の経済データが予想を下回り、同国の需要を巡る懸念が強まった。
BOKファイナンシャル・セキュリティーズのシニアバイスプレジデント、デニス・キスラー氏は「原油相場には、7月最初の2週間が過ぎると高値圏に達するという強い季節的傾向がある」としつつ、弱気な経済ニュースを受けて「トレーダーは利益確定モードになっている」と述べた。
アルゴリズムも下方向のモメンタムを強める一因になった。WTIが1バレル=80ドルを割り込んだ場合、トレンドフォロワーは今後1週間に現在保有するロングポジションの80%近くを清算せざるを得なくなる可能性があると、TDセキュリティーズは予想している。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物8月限は、前営業日比30セント(0.4%)安の1バレル=81.91ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント9月限は18セント(0.2%)下げて84.85ドル。
金スポット相場は上昇し、過去最高値付近で推移。市場ではパウエルFRB議長の発言と、週末に起きたトランプ前米大統領の暗殺未遂事件による影響を意識する展開となった。
金は今月に入り約4%上昇。米金融当局の利下げ姿勢への転換がようやく近づいているという見方が背景にある。利下げは利息を生まない金にとってプラスとなる。高い借り入れコストをよそに、金は今年に入り連続して最高値を更新。中央銀行による購入や中国の消費者需要、地政学的緊張の高まりを背景とした逃避需要が金相場を支えている。
MKS・PAMPの金属戦略責任者、ニッキー・シールズ氏は金スポット相場について、当初はトランプ氏暗殺未遂に大きな反応を見せず、アジア・欧州時間ではほぼ横ばいで推移したが、その後に「時差を伴って強気の反応を示し」、上昇を再開したと分析。「金も米国株もトランプ・トレードとして選好されている」と述べた。
金相場はパウエル議長の発言を受けて上げを削った。議長はワシントンのエコノミック・クラブで行われたインタビューで、最近の経済データを受けてインフレ率が目標の2%に向かって低下しているとの確信を当局は強めたとしつつ、利下げのタイミングについて具体的なメッセージを送る考えがないことも明確にした。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時26分現在、10.67ドル(0.4%)高の1オンス=2422.10ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は8.20ドル(0.3%)上昇して2428.90ドルで引けた。
原題:Stocks Up as Trump Picks VP in Generational Shift: Markets Wrap(抜粋)
Stocks Up as Trump Picks VP in Generational Shift: Markets Wrap(抜粋)
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