Rita Nazareth

  • 「マグニフィセント・セブン」は週間で5%安-半導体も下げる
  • 円は対ドルで週間では3週連続高、今年最長の上げ局面

19日の米株式相場は続落。来週には大手テクノロジー企業の決算発表が控えており、ウォール街は正念場を迎える。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数5505.00-39.59-0.71%
ダウ工業株30種平均40287.53-377.49-0.93%
ナスダック総合指数17726.94-144.28-0.81%

  大型ハイテク株中心のナスダック100指数は約1%安。小型株で構成するラッセル2000指数は0.6%下げた。

  S&P500種株価指数はテクノロジー株を中心に下落。週間ベースでは4月以来の大幅安となった。米利下げに伴い今年の株価上昇が大型ハイテク以外にも広がるとの見方から、勝ち組銘柄のポジションを削減し、出遅れ組を選好する「ローテーション」が進んだ。こうした急速なポジション変更は、決算発表を控えたテクノロジー業界のみならず、あらゆるセクターを巻き込んだ下落予想に拍車をかけた。

Trading At The NYSE As S&P 500 Hits 5,500 After Encouraging Economic Data
S&P500種は週間で4月以来の大幅安Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

  ハイテク大手7社で構成する「マグニフィセント・セブン」の指数は週間で5%安。テクノロジー全体では半導体の下げが目立った。エヌビディアやインテルを含むフィラデルフィア半導体株指数は同9%近く下落。ローテーションの動きは弱まったものの、ラッセル2000は同1.5%超値上がりした。

  GDSウェルス・マネジメントのグレン・スミス氏は「目先の株価動向にとって、来週は重要だ。多くの大型ハイテク企業が決算を発表する」と指摘。「力強いハイテク決算とインフレ鈍化という強力な組み合わせが確認されれば、市場の最近の弱さが反転し、新たな株高を誘発する可能性がある」と述べた。

  マイクロソフトが自社のオンラインサービス全体に問題が生じたことを報告し、米国からアジア、欧州にかけて異常な障害が連鎖的に発生した。米サイバーセキュリティー会社クラウドストライク・ホールディングスのソフトウエア更新で不具合が発生、マイクロソフトの「ウィンドウズ」を基本ソフト(OS)とする世界各地のコンピューターを機能不全に陥らせた。クラウドストライクは一時15%下げた後、下げ幅を縮小した。

  来週は一連の企業決算に加え、個人消費支出(PCE)価格指数など主要な経済指標にも投資家の目が向かいそうだ。同価格指数は9月利下げの観測を維持させる内容になると見込まれている。

S&P 500 Has Worst Week Since April
S&P500種(週間騰落率)出所:ブルームバーグ

  ステート・ストリートのケイラ・セダー氏は「経済データは軟化しており、より緩和的な金融政策の論拠を支える」と指摘。「金利上昇で特に打撃を受けた小型株にとって、金利低下は好ましいことだが、これが大きな転換点を示唆するとの確信はまだない」と述べた。

  米連邦公開市場委員会(FOMC)による9月利下げの可能性に加え、ドナルド・トランプ氏が米大統領選で勝利するとの見方が強まり、米国株に資金が集まっていると、バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジストが指摘した。

  マイケル・ハートネット氏率いるチームは、EPFRグローバルのデータを引用し、17日までの1週間に米株式ファンドに約450億ドル(約7兆933億円)と、過去4番目の規模の資金流入があったとリポートに記述した。小型株ファンドの資金流入額は過去2番目の大きさとなる99億ドルで、大型株ファンドは274億ドルの資金流入があった。

米国株に資金流入、トランプ氏勝利と9月利下げ織り込みーBofA

  ゴールドマン・サックス・グループのプライムブローカーデスクによると、ヘッジファンドのネットレバレッジは7月初旬に54%に低下し、1月以来の低水準となった。ネットレバレッジはリスクテーク意欲のバロメーターと見なされることが多い。ヘッジファンドでは、市場で最もパフォーマンスが好調な株式を2カ月にわたって手放した結果、テクノロジーとメディア、通信が過去最大規模のアンダーウエートとなっている。

  しかしこれは弱気な取引ではない。いわゆるスマートマネーはむしろ、波乱の米大統領選に備えており、株式市場のボラティリティーが上昇し株価が乱高下し始める際に、即座に資金を投入できるようにしておきたいと考えている。

無風のうちに売り、嵐で買う-波乱の米選挙に備えるヘッジファンド

  米国債利回りは上昇し、今週の高水準付近になった。材料に乏しく、商いは薄かった。

国債直近値前営業日比(BP)変化率
米30年債利回り4.45%2.90.65%
米10年債利回り4.24%3.90.92%
米2年債利回り4.51%4.20.93%
  米東部時間16時51分

  バイデン大統領に選挙戦からの撤退を求める声が強まる中、米政治への注目は続いている。

  BNYメロンの市場戦略・インサイツ責任者、ボブ・サベージ氏は「債券市場はひどい状態だ。民主党候補がバイデン氏ではなくなるかもしれないという問題のせいで、トランプ・トレードが展開する確率に混乱が生じている」と指摘。「関税引き上げとドル安を伴う新たな米政策への懸念から、市場に圧力がかかり、世論調査もスクリーンの一部になっている」と述べた。

  外国為替市場の円はドルに対して前日比ほぼ変わらず。週間ベースでは3週連続で上昇し、今年最長の上げ局面となった。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1256.322.610.21%
ドル/円¥157.50¥0.130.08%
ユーロ/ドル$1.0881-$0.0016-0.15%
  米東部時間16時51分

  ブルームバーグ・ドル・スポット指数は上昇。世界的な大規模システム障害が発生し、銀行なども混乱に見舞われたことが背景にある。

  ソシエテ・ジェネラルのストラテジストは、日本銀行が7月半ばに円買い介入を実施した可能性は高いとし、円は最近の上げを拡大する見通しだと指摘。円に強気なオプションを勧めた。

  オリビエ・コルベール氏ら同行のストラテジストは「最終的な影響を判断するのは時期尚早だが、日銀にとっては現在の市場環境の方が4月下旬に介入した当時よりも好ましいようだ」とリポートに記した。

  ニューヨーク原油先物相場は下落。原油取引を活発にする売買高とボラティリティーが低下し、相場は大きく下げる展開となった。

  ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は1バレル=80ドル付近で終了。週間ベースでは2週続落となった。ブルームバーグがまとめたデータによれば、ボラティリティーは数年ぶりの低水準付近にとどまり、売買高は10日間平均を下回った。商品市場全体に弱気なセンチメントが広がったことも、原油相場に重しとなった。

  ただ、プロンプトスプレッド(当限月と来限月の価格差)は依然、バックワーデーション(逆ざや)となっている。これは近い将来に需要が供給を上回る強気シグナルだ。

Oil's Listless Trading | Prices have struggled for direction in recent days
WTI先物出所:ICE

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物8月限は、前日比2.69ドル(3.25%)安の1バレル=80.13ドルで終了。下落率は6月初旬以来の大幅となった。ロンドンICEの北海ブレント9月限は2.48ドル(2.9%)下げて82.63ドルで引けた。

  金スポット相場は3日続落。週間では4週ぶりの下落となった。過去最高値を記録した今週の上昇は行き過ぎだったとの観測が広がっている。

  金スポットは17日には一時1オンス=2483.73ドルと、過去最高値を更新する場面があった。金融当局がより早期かつ幅の大きい利下げを実施するとの見方が強まったほか、地政学リスクが高まる中で逃避先としても金は買われた。

  ただ市場では、この上昇は行き過ぎだったとの見方も一部にある。スタンダード・チャータードのアナリスト、スキ・クーパー氏は、戦術的な投資家の関心や上場投資信託(ETF)への流入が持続しない場合、金現物への季節的な需要が鈍化し、価格に重しとなる可能性があると分析。「今後数週間は引き続き下値を切り下げていく動きに警戒していく」とリポートに記した。

Gold Set for First Weekly Loss in Four | Some analysts view current rally as excessive
金スポット価格(週間騰落)出所:ブルームバーグ

  TDセキュリティーズの商品ストラテジスト、ダニエル・ガリ氏によれば、商品投資顧問業者(CTA)は向こう数営業日において売りに動く可能性が高く、ポジショニングのリスクは数カ月ぶりに非対称な形で下方に傾いていると指摘。TDが上海先物取引所の上位参加者のポジショニングを追跡したところ、一夜にしてかなりのポジションが手じまわれ、現物市場でもアジアの買い手が手控えていることが分かったという。「金の強気相場は一服する可能性がある」とガリ氏は付け加えた。

  金スポット相場はニューヨーク時間午後2時5分現在、前日比46.34ドル(1.9%)安の1バレル=2398.74ドル。週間では0.5%の下げ。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は、この日57.30ドル(2.3%)下落し2399.10ドルで引けた。

原題:Stocks Slide Before High-Stakes Megacap Earnings: Markets Wrap(抜粋)

Dollar Gauge Heads for First Weekly Gain in Three: Inside G-10(抜粋)

SocGen Recommends Dollar-Yen Puts On BOJ Induced Strength(抜粋)

Oil Falls With Broader Commodity Weakness Amidst Listless Trade(抜粋)

Gold Falls for Third Day as Some Analysts Question Record Rally(抜粋)