Rita Nazareth
- 製造業景況指数は8カ月で最大の活動縮小、10年債利回り4%割れ
- 失業率は「サーム・ルール」が示唆する危険領域に接近
1日の米金融市場では株が急落し、米国債相場が大きく上昇した。トレーダーの間では一連の弱い経済統計を受けて、9月まで利下げを見合わせたパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の決定は賢明だったのかという疑問が生じている。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5446.68 | -75.62 | -1.37% |
ダウ工業株30種平均 | 40347.97 | -494.82 | -1.21% |
ナスダック総合指数 | 17194.14 | -405.26 | -2.30% |
値動きは激しく、資産クラス間、セクター間で入れ替わる急速なローテーションが特徴的だった。逃避先には米国債が選好された。ナスダック100指数は2020年5月以来の大幅な反転となった。引け後に発表されたインテルの決算では、弱気な見通しが示され、株価は時間外で下げた。アマゾン・ドット・コムも決算を嫌気して下落した。アップル株は決算発表後に乱高下した。
資産クラスを超えて値動きは大きさを増している。FRBが景気刺激的な姿勢を見せたかと思えば、翌日には将来の成長不安を予兆するなど、投資家は経済と企業業績の予想に苦慮している。 米国債市場では10年債利回りが4%を割り込み、スワップ市場では年内3回の利下げが完全に織り込まれた。先週の米新規失業保険申請件数はほぼ1年ぶりの水準に増加し、米供給管理協会(ISM)が発表した7月の製造業総合景況指数は、過去8カ月で最大の活動縮小を示した。2日には7月の雇用統計が発表される。
国債 | 直近値 | 前営業日比(BP) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.28% | -2.3 | -0.52% |
米10年債利回り | 3.98% | -4.6 | -1.14% |
米2年債利回り | 4.15% | -10.3 | -2.42% |
米東部時間 | 16時41分 |
インタラクティブ・ブローカーズのホセ・トレス氏は「多くの経済要因が重なり、市場はパニックモードに近づいている。リスク資産を敬遠する動きが少しずつ加速している」と話す。「市場に吹く向かい風は嵐のようだ。特に完璧な状況を織り込んでいた株式には厳しい。今の経済からうかがわれるのは、不完全な状況だ」と述べた。
パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は7月31日の記者会見で、労働市場にさらなる軟化のリスクがあることを指摘し、インフレ面での進展が失速しない限り、9月に金利を引き下げる方向にあることを示唆した。2日に発表される7月の米雇用統計は、この議論に拍車をかける見通し。失業率は「サーム・ルール」でリセッション(景気後退)を示唆する領域に近づいている。サーム・ルールはFRBの元エコノミスト、クラウディア・サーム氏が考案。過去半世紀においてリセッションを100%の確率で予測している。
ルネサンス・マクロ・リサーチのニール・ダッタ氏は、経済データの「継続的な悪化」がこの日の朝、明らかになったと指摘。「連邦公開市場委員会(FOMC)は利下げを開始するまでは出遅れているように見えるだろう」と述べた。
ウルフ・リサーチのクリス・セニェック氏は「労働市場は数カ月前から警告シグナルを発信していた」と指摘。「過去の例から判断すると、パウエル議長は非常に危ない橋を渡っているとみられる。利下げ開始を長く待ちすぎると、手遅れになりかねない」と述べた。
株式市場ではナスダック100指数が2.4%、小型株で構成するラッセル2000が3%急落。「恐怖指数」として知られるCBOEボラティリティー指数(VIX)は、4月以来の高水準に接近。引け後に発表されたインテルの決算では、弱気な見通しが示され、株価は時間外で下げた。アマゾン・ドット・コムも決算を嫌気して下落した。アップル株は決算発表後に乱高下した。
インディペンデント・アドバイザー・アライアンス(IAA)のクリス・ザッカレリ氏は「FOMCがもっと劇的な利下げを決意するきっかけとなり得るのは、雇用市場に著しい悪化が見られることであり、われわれはその点を注視している」と述べた。
パウエル議長は前日の記者会見でサーム・ルールについて見解を問われ、「労働市場の正常化」が進行しているというのが政策当局者らの考えだとした上で、「それ以上の状況を示唆し始めれば、対応する用意は十分にある」と述べた。
FHNファイナンシャルのクリス・ロウ氏は「この発言を聞いて最初に浮かんだのは、その通り、雇用は正常化してきたという考えだった」と語る。「しかし失業率をはじめ一部の指標は最適水準を超え、労働力に過度なスラック(たるみ)が生じていることと整合する水準に向かっているかもしれない。分かりやすく言えば、FRBの責務である最大限の雇用確保と整合する水準に届かない状況が、危険なほどに近づいているという示唆だ」と説明した。
米利下げのタイミングを見極めようとする世界の投資家にとって、連邦準備制度理事会(FRB)は今週のキーワードだ。ただ異例なのは、米企業が決算発表後に行う電話会議でもこの言葉が極めて高い頻度で用いられたことだ。S&P500種株価指数とストックス600に採用されている企業が決算発表後に開いた電話会見を、ブルームバーグが分析した結果、「FRB」という言葉は約380回言及されていた。
このペースで行けば、データベースがさかのぼれる2001年以来で最高の頻度となる。
7月の雇用統計では雇用者の伸び減速が示されるというのが、エコノミストらの予想。失業率は4.1%で横ばいとみられている。
22Vリサーチがまとめた調査によれば、投資家の42%が雇用統計に対する市場の反応が「リスクオフ」になると予想。「反応薄・まちまち」との回答は36%、「リスクオン」の予想はわずか22%だった。
「投資家の関心は雇用者数に集中している」と22Vリサーチ創業者のデニス・デブシェール氏は指摘。「しかしその次に注目されている失業率は、コンセンサス予想が4.2%だ」と述べた。
外国為替市場ではドルとスイス・フランが上昇。弱い米経済データが複数発表されたほか、中東の緊張激化が意識され、逃避の買いが入った。ポンドはイングランド銀行(英中央銀行)の利下げを受けて下げた。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
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ブルームバーグ・ドル指数 | 1257.98 | 4.21 | 0.34% |
ドル/円 | ¥149.57 | -¥0.41 | -0.27% |
ユーロ/ドル | $1.0787 | -$0.0039 | -0.36% |
米東部時間 | 16時41分 |
ブルームバーグ・ドル指数は2週間ぶり低水準から反発。スイス・フランは対ユーロでほぼ6カ月ぶりの高値。
ドルはアジアの時間帯に付けた148円51銭より上の水準を維持した。
原油先物相場は反落。中東情勢の緊張化による供給懸念はあるものの、米経済減速の兆しの方が強く意識された。ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は前日には4.3%上昇していた。
この日は米製造業の大幅な活動縮小を示す統計を受けて金融市場全体でリスク敬遠の動きが広がり、原油相場でも売りが優勢となった。一方、イランがイスラエルに対する報復を計画しているとの報道もあり、紛争拡大が原油輸出に支障をきたす恐れがあるとの懸念も高まっている。
BOKファイナンシャル・セキュリティーズのシニアバイスプレジデント、デニス・キスラー氏は、地政学的緊張が「市場の関心事項であることは間違いない」ものの、最近の原油相場の上昇は行き過ぎだったと指摘。世界的な景気減速の兆候を踏まえれば、実際に供給面で大きな支障がない限り、原油相場は買われ過ぎの領域にあると述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物9月限は、前日比1.60ドル(2.05%)安の1バレル=76.31ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント10月限は1.20ドル(1.5%)下げて79.52ドルで引けた。
金スポット価格は一連の米経済指標を消化する中でもみ合いとなった。午前の取引では一時1オンス=2462ドルまで上昇し、7月に付けた過去最高値まで約20ドルに接近する場面もあった。
朝方発表された米新規失業保険申請件数は、ほぼ1年ぶりの水準に増加。景気の冷え込みが示唆されたのを受けて年内利下げの観測が強まった。金利低下は通常、利子を生まない金にとって強材料と見なされる。
サクソバンクの商品戦略責任者オレ・ハンセン氏は「パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が前日に9月利下げの可能性を示唆したが、そうした動きはデータ次第だとしていた。新たに発表されたデータを基にすれば、利下げへの道はさらに少し広がった」と語った。
中東における地政学的緊張の高まりも金への逃避需要を高めている。
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ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は続伸し、前日比7.80ドル(0.3%)高の2480.80ドルで引けた。
原題:Stocks Sink Before Jobs as Tech Hit in Late Hours: Markets Wrap(抜粋)
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