ロシア、米記者ら釈放の兆候 複数国との大規模な捕虜交換の一環

[モスクワ/アンカラ/ベルリン 1日 ロイター] – 米国とロシアなどは1日、囚人の大規模な身柄交換を実施した。ロシアで収監されていた米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のエバン・ゲルシコビッチ記者や元米海兵隊員ポール・ウィーラン氏らを含む26人が釈放された。冷戦時代以来最大の身柄交換となる。

米ホワイトハウスは、米国がロシアやその他の国と複雑な交渉を進めていたと発表し、西側諸国で拘束されていた8人がロシアに送還される見通しを明らかにした。

バイデン大統領は、今回の身柄交換を「外交と友好の偉業」とし、米国と同盟国による「大胆で勇敢な決断」を称賛。「同盟国なしには不可能だっただろう」とし、「なぜ世界に友好国が不可欠なのかを示す強力な例となる」と述べた。

サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、今回の大規模な囚人交換で金銭のやり取りはなかったと述べた。また、合意にこぎ着けるために制裁措置を緩和することもなかったと述べた。

仲介役を担ったトルコによると、米ロのほか、ドイツ、ポーランド、スロベニア、ノルウェー、ベラルーシ計7カ国の受刑者が含まれ、未成年者2人を含む10人がロシアへ、13人がドイツへ、3人が米国へ移送された。

トルコ国家情報機構(MIT)は声明で「MITは近年で最も包括的なこの交換作戦で、主要な仲介役を果たした」とした。

身柄交換には、プーチン政権を批判した反政権活動家ウラジーミル・カラムルザ氏のほか、ロシアの野党政治家イリヤ・ヤシン氏、ロシアの人権団体「メモリアル」幹部だったオレグ・オルロフ氏らが含まれている。

クレムリン(ロシア大統領府)は、プーチン大統領が西側諸国との身柄交換の対象となった米国人3人を含む12人を大統領令で恩赦したと発表した。外国で拘束されているロシア人の返還を目的とした措置と説明した。

WSJのエマ・タッカー編集長はXに投稿した書簡で、ゲルシコビッチ記者が解放された「喜ばしい日」とし、「帰国に向け粘り強く決意を持って取り組んだバイデン大統領と政権に感謝する」と述べた。

ドイツ政府は、大規模な身柄交換の一環で、2019年に殺人罪で有罪判決を受け服役しているロシア人のワジム・クラシコフ受刑者を含む釈放すると発表。ただ、簡単な決定ではなく、「ドイツ国民を守る義務と米国との連帯が重要な動機になった」と説明した。

ロシアの同盟国ベラルーシで先月死刑判決を受けたドイツ国籍のリコ・クリーガー氏も身柄交換に含まれる。ベラルーシは今週、クリーガー氏に恩赦を与えていた。

各国の発表に先立ち、航空追跡サイト「フライトレーダー24」のデータは、過去に米国とロシアが関与した捕虜交換で使用されたロシア政府の特別機が首都モスクワからロシアの飛び地カリーニングラードまで飛行し、その後モスクワに戻ったことを示していた。その後、ロイターの映像によると、ロシア政府機はトルコの首都アンカラに着陸した。