Rita Nazareth
- 国債下落、逃避需要が弱まる-利回り上昇で3年債入札は順調
- 円は145円挟んだ値動き、米利下げ観測後退でドル指数は上昇
6日の米株式相場は反発。世界の市場を揺るがした大規模な売りが一巡し、押し目買いの動きが再び活発化した。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5240.03 | 53.70 | 1.04% |
ダウ工業株30種平均 | 38997.66 | 294.39 | 0.76% |
ナスダック総合指数 | 16366.85 | 166.77 | 1.03% |
S&P500種株価指数は主要な業種別指数が全て値上がり。同株価指数は急落でテクニカル上「売られ過ぎ」の領域まで押し下げられていたことから、割安となった銘柄に買いが入った。
恐怖指数として知られるシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー指数(VIX)は、2010年以来の大幅低下となった。
エヌビディアは3.8%値上がりし、半導体銘柄の上昇を主導。超大型ハイテク7社で構成するブルームバーグの「マグニフィセント・セブン」指数は1.2%高。小型株で構成するラッセル2000指数も1.2%上げた。その他の個別銘柄では、ウォルト・ディズニーが高い。ストリーミングサービス「ディズニー+(プラス)」の料金を引き上げると発表した。強気な業績見通しを示したキャタピラーも買われた。
弱い経済指標や期待外れのハイテク企業決算、伸び切ったポジション、季節的なトレンドの悪さをきっかけに下落していた世界の市場に、一定の落ち着きが戻った。ここ1カ月に見られたような大規模な下落の後に米国株を買うと、通常は利益を上げられることが、ゴールドマン・サックス・グループの分析から分かった。1980年以降、S&P500種は直近の高値から5%下落した後の3カ月に中央値で6%のリターンを上げているという。
5%下落後のS&P500種の買い、通常利益生む-ゴールドマン
LPLファイナンシャルのクインシー・クロスビー氏は「いかなる指標で見ても相場は『売られ過ぎ』で、反発の時期が来ている」と指摘。「市場を売りの連鎖に追い込んだ懸念は和らいでいるのか、疑問はくすぶっている。一定のボラティリティーは続くことが見込まれる」と述べた。
ソーンバーグ・インベストメント・マネジメントのベン・カービー氏は「過剰なものは燃焼される。気分がいいものではないが、健全なプロセスの一環だ」と話した。
逃避先資産への需要が弱まる中、米国債は下落。利回りの上昇に支えられ、580億ドル(約8兆4000億円)規模の3年債入札は順調な結果となった。
国債 | 直近値 | 前営業日比(BP) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.18% | 10.7 | 2.63% |
米10年債利回り | 3.89% | 10.2 | 2.68% |
米2年債利回り | 3.97% | 5.3 | 1.35% |
米東部時間 | 16時56分 |
アメリベット・セキュリティーズの米金利トレーディング・戦略責任者、グレゴリー・ファラネロ氏は「まずまずの入札だった。市場が値固めして、利回りが前日以降に低水準を離れたことが支えになった」と分析。「金利市場はこの水準では割安には見えない」とし、今後数日の入札では高めの利回りが求められる公算が大きいと付け加えた。
年内の大幅な米利下げ観測も後退している。金利スワップ市場が織り込む利下げ幅は約105ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)。前日には最大150bpが織り込まれていた。
CIBCプライベート・ウェルスUSのデービッド・ドナベディアン氏は「米金融当局が心配するのは金融市場のシステミックリスクだ。失望した投資家を気にしているわけではない」と指摘。「従って、同当局が株式相場の調整を理由に行動方針を変える可能性は低い。近くリセッション(景気後退)に向かうのか、それとも市場は過剰反応しているのか。成長減速が起きているのであり、リセッションではないと考える」と話した。
ナティクシス・インベストメント・マネジャーズのポートフォリオストラテジスト、ジャック・ジャナシウィック氏は「センチメントが行き過ぎている可能性はある」と指摘。「景気は減速しつつあることが確かに示唆されているが、減速しつつあると、減速では非常に異なる」と続けた。
外国為替市場で円の対ドル相場はもみ合い。ニューヨーク時間朝方に一時1ドル=144円ちょうど付近を付けた後は、おおむね145円を挟んだ値動きとなった。円は前日比ベースでは7月29日以来の下落。
米利下げ観測の後退を背景に、ドル指数は上昇した。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
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ブルームバーグ・ドル指数 | 1249.19 | 3.54 | 0.28% |
ドル/円 | ¥144.35 | ¥0.17 | 0.12% |
ユーロ/ドル | $1.0930 | -$0.0022 | -0.20% |
米東部時間 | 16時56分 |
バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジスト、アレックス・コーエン氏は「市場は適切な米利下げサイクルを十分に織り込んでいる。それが実現すれば、過去数年にわたってドルを支えてきた重要な柱の1つである相対的に高い実質金利が損なわれることになる」と指摘。「ドルのポジションはロング、バリュエーションは高いという状況がそれぞれ続いており、追加的な衝撃がない限り、広範なドル下落への道がさらに開かれている」と述べた。
ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループのグローバル為替責任者、ブラッド・ベクテル氏は「日本銀行や日本の財務省にしてみれば、こうした極端なボラティリティーは好ましくないかもしれないが、ドル・円相場が142-145円の近辺にあるのは勝利だ」と指摘。「日銀はここでしばらく落ち着いて、状況の進展を見守るだろう。150円を超える円安に戻る場合は、再びタカ派的な発言を増やす可能性が高い」と述べた。
BCAリサーチのチーフ・グローバル・ストラテジスト、ピーター・ベレジン氏は、米金融当局が利下げに向かう中、円は今後一段と上昇するとの見方を示した。また、日銀による追加利上げはないと予想。同氏は来年のドル・円相場の目標を1ドル=115円としている。
円は対ドルで115円に上昇へ、米利下げで-BCAのベレジン氏
原油先物相場は4日ぶりに反発。株式を中心にリスク資産が前日の急落から回復したため、買いが入った。原油は前日に7カ月ぶりの安値を付けていた。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は過去3営業日で6%余り下げていた。価格が年初来安値に近づくにつれ、売られ過ぎの兆候が複数表れた。
一方、現物逼迫(ひっぱく)の兆候に引き続き注目が集まった。こうしたリスクには、リビアの供給が一部停止されたことや、紛争で中東地域の生産が打撃を受けかねないとの懸念が含まれる。
ダーン・ストライフェン氏らゴールドマン・サックス・グループのアナリストはリポートで、原油相場はここ数日、中東情勢への反応は限定的で、株式と歩調を合わせて下落してきたと指摘。米国のリセッション(景気後退)リスクは限定的で、投機的なポジションが拡大する余地があるため、北海ブレントは1バレル=75ドルが支持線になるとの見方を示した。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物9月限は、前日比26セント(0.4%)高の1バレル=73.20ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント10月限は0.2%上げて76.48ドルで引けた。
金相場は続落。株式相場が世界的に前日の急落から持ち直す中、金には売りが続いた。
ドルの反発と米利下げ期待の後退も金の重しとなった。一方、上場投資信託(ETF)は直近の取引で金の保有を12万5101オンス増やした。
ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、前日比12.80ドル(0.5%)安の1オンス=2431.60ドルで引けた。ニューヨーク時間午後2時56分現在、金スポット相場は0.7%安の2394.52ドル。
原題:S&P 500 Climbs 1% After Wall Street’s Wild Rout: Markets Wrap(抜粋)
S&P 500 Climbs 1% After Wall Street’s Wild Rout: Markets Wrap(抜粋)
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