Esha Dey

  • 市場心理を測る指標、歴史的低水準に落ち込んだ後には株反発の傾向
  • VIX指数の記録的な上昇後はボラ沈静化まで時間かかる-シティ

今週はじめに米株式市場が売り一色に染まるなか、センチメントに関するシグナルは歴史的な低水準まで落ち込み、市場が「極度の恐怖」に包まれていることを浮き彫りにした。だが、この急落はむしろ株式にとって吉兆だとの声も出ている。

  センチメントレーダーのシニア分析アナリスト、ディーン・クリスチャンズ氏は、S&P500種株価指数と長期債を比較して株が国債に対して割安か割高かを見極める株式・国債レシオは、市場心理を測る指標にもなっていると話す。同氏の分析によれば、今回のようにパニックが恐怖をあおった過去の事例においても、S&P500種はその後に好調なリターンを記録した。

  同レシオがここまで下がったケースは1962年以降13回のみで、このうち90%以上は、1年後にS&P500種が大きく上昇した。テクノロジー株は同期間に、消費財やヘルスケアなどのディフェンシブ銘柄とともに、平均で市場全体をアウトパフォームした。

  クリスチャン氏は今週のリポートで「株・国債レシオは歴史的な低水準に沈んだ。円キャリートレードの巻き戻しに伴い株から国債へと資金がシフトしたためだ」と指摘。SPDR・S&P500・ETFトラストiシェアーズ20年プラス国債ETFを使って算出されたこのレシオは5日にマイナス3.75まで落ち込んだと述べた。

  その後、8日に米国株が急反発したため、レシオは回復。8日の取引終了後はマイナス1.4前後で推移しているという。

A historic plunge in the stock/bond ratio
株式・国債レシオは歴史的な水準に急落出所:センチメントレーダー

  8日に発表された新規失業保険申請件数が大幅減となったことで、過度な景気減速懸念が和らぎ、米国株は力強い回復を見せた。しかし、市場関係者は、今週に入っての相場急落で投資家心理は打撃を受けたとの見方でほぼ一致している。恐怖指数として知られるシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー指数(VIX)は今週、新型コロナウイルス禍以来の水準に急上昇。JPモルガン・チェースは足元の急落を踏まえても、株式のポジショニングとバリュエーションはなおリスクにさらされていると指摘した。

  市場ストラテジストは、株式のボラティリティーが安定するまでには時間がかかるかもしれず、この先も波乱含みの展開に備えるべきだと話している。シティの株式トレーディングストラテジスト、ビシャル・ビベック氏は、過去のデータからはVIXが記録的な上昇となった場合、通常は正常化に時間がかかることが多く、指数はその後の1カ月で上昇分の27%しか戻らないと指摘している。

  それでも、クリスチャン氏の分析では、実際に好転が訪れれば、かなり妙味が大きい可能性を示唆している。

  株式・国債レシオがマイナス3.5を割り込んでから1年後の平均リターンは約15%だったとクリスチャン氏。1カ月後、2カ月後、3カ月後、半年後で見ても相当なリターンを記録したという。

原題:‘Extreme Fear’ in Sentiment Hid a Silver Lining: Taking Stock(抜粋)