Rita Nazareth
- ADP雇用者数は予想下回る-円は一時1ドル=142円85銭に上昇
- 雇用統計への市場の反応、投資家の44%は「リスクオン」を予想
5日の米株式相場でS&P500種株価指数は続落。投資家の関心は6日発表の8月雇用統計に集中している。市場では、雇用統計の強弱が17-18日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)会合での利下げ幅を左右するとみられている。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5503.41 | -16.66 | -0.30% |
ダウ工業株30種平均 | 40755.75 | -219.22 | -0.54% |
ナスダック総合指数 | 17127.66 | 43.36 | 0.25% |
この日発表された経済指標では、8月のISM非製造業総合景況指数は予想を上回り、2カ月連続で活動拡大を示した。同月のADP民間雇用者数は2021年1月以来の低い伸びにとどまった。先週の新規失業保険申請件数は減少し、市場予想を下回った。
経済指標 |
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米ISM非製造業指数、小幅に予想上回る-2カ月連続で拡大圏 |
米ADP民間雇用者数、21年初め以来の低い伸び-市場予想下回る |
米新規失業保険申請件数、前週比0.5万件減の22.7万件-予想23万件 |
「統計は強弱まちまちだった。明日の雇用統計で、投資家は労働市場の状況をより明確に把握することになる」と、モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は指摘。「現在は『良いニュースは良いニュース、悪いニュースは悪いニュース』の環境にあり、市場は景気が過度に減速していないか、米金融当局が後手に回っていないかをまだ見極めようとしている」と述べた。
先月発表された7月雇用統計が市場に衝撃を与えただけに、明日の8月雇用統計を前に投資家が「神経質」になっているのも無理はないと、eToro(イートロ)のブレット・ケンウェル氏は指摘。雇用統計が予想を大きく下回った場合は9月の0.5ポイント利下げを織り込む動きが強まると同氏はみている。
「0.5ポイント利下げは株の強気派には朗報のように見える。しかし、米金融当局が大幅利下げに踏み切らざるを得ないと考える状況は、雇用市場には従来の認識より大きな懸念があることを示唆しているかもしれない」と語った。
22Vリサーチの調査によると、投資家の44%は雇用統計に対する市場の反応が「リスクオン」になると予想。「リスクオフ」の予想は27%で、「反応薄・まちまち」との回答が29%だった。
インタラクティブ・ブローカーズのスティーブ・ソスニック氏は、熱すぎず冷たすぎない「ゴルディロックス」シナリオこそ、株の強気派が求めるコンセンサス的認識だと述べた。
個別銘柄では半導体のエヌビディアが反発。バンク・オブ・アメリカ(BofA)のアナリストは、最近の株価下落で買いの好機が「強まった」とリポートで指摘した。同社を含む大型ハイテク7銘柄「マグニフィセント・セブン」の指数は1.6%上昇。
米国債相場は上昇(利回りは低下)。トレーダーは年内に計1ポイント余りの利下げを織り込んでおり、これは少なくとも1回の大幅利下げを見込んでいることを示す。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が労働市場に重点を置いていることを踏まえると、雇用統計次第で9月の利下げ幅が0.25ポイントになるか0.5%になるか決まるとの声がウォール街では多い。
米50bp利下げの行方、雇用統計が左右へ-市場は大幅変動に身構え
国債 | 直近値 | 前営業日比(BP) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.02% | -4.2 | -1.04% |
米10年債利回り | 3.72% | -3.4 | -0.90% |
米2年債利回り | 3.74% | -1.5 | -0.39% |
米東部時間 | 16時34分 |
為替
外国為替市場でドルは小幅安。トレーダーが雇用統計に身構える中、神経質な動きとなった。ブルームバーグ・ドル指数の翌日物インプライドボラティリティー(IV、予想変動率)は2023年3月以来の高水準に上昇している。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1230.71 | -2.33 | -0.19% |
ドル/円 | ¥143.40 | -¥0.34 | -0.24% |
ユーロ/ドル | $1.1110 | $0.0028 | 0.25% |
米東部時間 | 16時34分 |
UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのブライアン・ローズ氏は「6日の雇用統計で雇用者数の伸び悩みや失業率の上昇が示されれば、市場は0.5ポイント利下げを完全に織り込むかもしれない」とリポートで指摘。「17日発表の8月小売売上高も極めて重要だ。消費者が支出を控えるようになれば、景気拡大を維持することは難しくなるからだ」と記した。その上で、年末までに計1ポイントの利下げと景気の「ソフトランディング」がメインシナリオだとした。
円相場も方向感を欠く動き。ニューヨーク時間午後4時15分現在は1ドル=143円台前半で推移。朝方のADP民間雇用統計発表直後は円買いが優勢となり、一時142円85銭と1カ月ぶりの円高ドル安水準を付けたが、その後は144円台前半まで押し戻される場面もあった。
原油
原油先物相場はほぼ変わらず。約1年ぶり安値付近にとどまった。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成される「OPECプラス」は計画していた供給拡大を2カ月遅らせることで合意したが、金融市場全体に広がったリスクオフのセンチメントが重しとなった。
国際指標である北海ブレントはほぼ変わらずの1バレル=72.69ドルと、終値としては2023年6月下旬以来の安値。OPECプラスに関する報道を受けて一時2%余り上昇する場面もあった。10月から日量18万バレルの供給拡大が計画されていたが、主要メンバー国はこれを2カ月間遅らせる方針を固めた。この日は株式相場が軟調な展開となり、リスク資産のモメンタムが失速、原油の上げ縮小につながった。
最近の原油下落は、トレンドフォロー型のアルゴリズム取引によって加速。原油市場におけるロングポジションは記録的な水準に落ち込んだ。商品投資顧問業者(CTA)のポジションが既に最大限のショートとなる中、市場参加者はこの日の早い時間の上昇はそうした投資家による押し目買いがもたらしたと捉えている。
TDセキュリティーズのコモディティーストラテジスト、ダニエル・ガリ氏は「向こう1週間にCTAのショートカバーに火は付くのは難しいことではないだろうが、買い戻しの規模はそれほど大きくはならないとみられる」と分析。「これは目先の価格反発には好材料だ。ただ中期的には下落圧力が強まり続けるだろう」と述べた。
ロンドンICEの北海ブレント11月限は1セント安の1バレル=72.69ドルで終了。ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物10月限は、5セント(0.1%未満)下落し69.15ドルで引けた。
金
金スポット相場は続伸。米政策金利の道筋を見通す上で手掛かりとなり得る雇用統計を翌日に控える中、朝方発表された労働市場関連データを消化する展開となった。
ADPが発表した8月の米民間雇用者数は、2021年1月以来の低い伸びにとどまった。先週の新規失業保険申請件数は市場予想を下回った。こうしたデータは労働市場の減速を示唆する新たな兆候であり、物価上昇圧力を一層抑制する上でプラスに働く可能性がある。
米金融当局者らはインフレよりも労働市場へのリスクを懸念するようになったと表明している。物価上昇圧力が新型コロナ禍のピークから大きく後退していることから、当局は9月に利下げを開始すると見込まれている。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時20分現在、前日比19.37ドル(0.8%)高の1オンス=2515.09ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は17.10ドル(0.7%)上げて2543.10ドルで引けた。
原題:
S&P 500 Hit as Jobs Leave ‘Little Room for Error’: Markets Wrap
Stocks Whipsaw Before ‘Make-or-Break’ Jobs Report: Markets Wrap
Dollar Weaker as All Eyes on Jobs Data for Fed Path: Inside G-10
Oil Holds Steady as Risk-Off Mood Undercuts OPEC+ Output Pause
Gold Holds Gains as Traders Mull Jobs Data, Await Payrolls Print