- 来週のFOMC、50bp利下げを市場織り込む-米国債利回りは低下
- S&P500種は週間で今年のベスト、金は連日の高値更新-原油反落
13日の米金融市場では、来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)で50bpの利下げを予想した動きが顕著になった。外国為替市場ではブルームバーグ・ドル指数が下落。円は今年の対ドル最高値を更新した。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1226.11 | -3.80 | -0.31% |
ドル/円 | ¥140.90 | -¥0.92 | -0.65% |
ユーロ/ドル | $1.1074 | $0.0000 | 0.00% |
米東部時間 | 16時51分 |
ドルは対円で一時1.1%下げて140円29銭を付け、今年の最安値を更新した。次は140円が節目となる。オプション市場では一部のヘッジファンドが円に強気のポジションを積み増している。円は7-9月(第3四半期)に、世界の通貨の中で最高のパフォーマンスとなっている。
来週のFOMCで50bp利下げが決まれば、ドルは140円を割り込む可能性があると、 ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループのグローバル為替責任者、ブラッド・ベクテル氏は予想。その水準まで円が上昇すれば、昨年7月以来となる。
一方、日本銀行は19、20日の金融政策決定会合で、市場動向に配慮しつつ、経済・物価見通しが実現していけば緩和的な金融政策を調整する方針を改めて示すと予想されている。大半のアナリストは今回の金利据え置きを見込んでいるが、日銀当局者の発言は年後半の利上げがあり得ることを示唆している。
ブルームバーグ・ドル指数は週間では2週連続の下落となる見通し。市場では50bp利下げが確率40%として織り込まれた。FOMCが利下げ幅を25bpにするか、50bpにするか検討しているとした、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)報道がきっかけ。
JPモルガン・チェースのエコノミストは来週の会合では50bpの利下げが行われるべきだとの見解をあらためて示した。
スイス・フランは対円で6日続落し、約1年ぶりの連続安。12月19日以来の安値となった。
ユーロは対ドルで一時0.3%上昇し、1週間ぶり高値。対ポンドではほぼ変わらず。
米国株
株式市場は続伸。大幅利下げ観測の台頭で、金融緩和の恩恵が期待できる銘柄へのローテーションが進んだ。S&P500種株価指数は週間ベースで今年ベストのパフォーマンスとなった。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5626.02 | 30.26 | 0.54% |
ダウ工業株30種平均 | 41393.78 | 532.07 | 1.30% |
ナスダック総合指数 | 17683.98 | 114.30 | 0.65% |
景気に敏感な銘柄が、強気相場を率いてきた大型ハイテク株を上回るパフォーマンスを見せた。小型株のラッセル2000指数は2.5%上昇。
S&P500種の均等加重バージョンであるS&P500イコールウエート指数は、S&P500種を上回り、株高の裾野が広がるとの期待を持たせた。イコールウエート指数ではエヌビディアもダラー・ツリーも同じウエートで算出され、トップ銘柄の変動の影響を受けにくい。
BTIGのジョナサン・クリンスキー氏は「過去24時間で最大のニュースは、来週のFOMCで50bpの利下げが決まる確率に変化があったことだ」と語る。「リスクリワードという点では、小型株の方が有利だ。大型ハイテク株は再度買い一服となるだろう。ただS&P500種が最高値を更新すれば、大型株もその波に乗る」と述べた。
ルネサンス・マクロ・リサーチのニール・ダッタ氏は、来週のFOMCが積極的な利下げに動く論拠は強いとみている。
「50bp利下げを否定する理由としてよく言われるのは、『FOMCは私たちの知らない何かを把握している』と市場が受け止めかねないという主張だ。私はそうは思わない」とダッタ氏。「私自身の感触では市場は歓迎する。FOMCが早めに味方につくのは好ましいことだ」と述べた。
ナットアライアンス・セキュリティーズのアンドルー・ブレナー氏は、50bp利下げが正しい判断だと考えるが「遅行性の数字にこれほどこだわる金融当局が50を決定するとはとても思えない」と話した。
来週のFOMC、50bp利下げ以外なら落胆-市場関係者の見方
ストラテガス・セキュリティーズのライアン・グラビンスキー氏は、ハイテク・通信からディフェンシブへのローテーションが水面下で広がってきた中で、問題が一つ浮上していると指摘。それはトップ銘柄の増益率がなおも他の指数構成銘柄を上回ると見込まれていることだという。
「数少ないグロース株に投資家が群がる状況となれば、流動性トップ級の大型ハイテク株が再び買いを集めても驚きではない」とグラビンスキー氏。「確かに法的係争や規制当局の調査といった課題はあるが、率直にいってこれらは今に始まったことではない。『マグニフィセント・セブン』を悲観し過ぎるのは、ポートフォリオに大きなリスクをもたらしかねない」と述べた。
つまりマグニフィセント・セブンはその成長期待から、「存在感が薄れるとは考えにくい」と結論付けた。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジストによれば、米雇用統計が明らかに強弱いずれかの兆候を示唆するまで株式相場は大きく動かない可能性が高い。
マイケル・ハートネット氏率いるBofAのチームはリポートで、雇用が明確な方向性を示せば「曖昧な秋」が解消されるだろうと述べた。8月の雇用統計は非農業部門の雇用者数が前月比14万2000人増と、市場予想を下回った。
米国債
つい数日前に消えたと思われていた50bp利下げの観測が復活し、市場に織り込まれた。フェデラルファンド(FF)金利先物10月限の取引が活発になり、同年限としては過去2番目の出来高を記録。大幅利下げ見通しを背景に、ショートカバーと新規のロングが混在する取引となった。
国債 | 直近値 | 前営業日比(BP) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 3.98% | -0.5 | -0.13% |
米10年債利回り | 3.66% | -1.9 | -0.51% |
米2年債利回り | 3.58% | -5.5 | -1.50% |
米東部時間 | 16時51分 |
市場が織り込む50bp利下げの確率は13日に40%に上昇。今週初めの段階では4%だった。この動きを背景に米国債相場は上昇した。
TCWグループのブライアン・ウェーレン氏は「来週の利下げ幅が25bpなら、FOMCは後手に回っていることになる」と話す。17日に発表される8月の小売売上高が予想外の弱い数字となれば、50bp利下げへのモメンタムは強くなると予想。「25bpにとどまるなら、債券にはむしろ強気だ。FOMCがこの先もっと行動せざるを得なくなることを意味するからだ」と述べた。
50bp利下げ派と25bp利下げ派の綱引きとなったこの日の市場では、一時的に11月まで75bpの利下げが織り込まれた。次回2回の会合で一度50bp利下げがあるというトレーダーの見方を反映している。
原油
ニューヨーク原油先物相場は反落。暴風雨「フランシーヌ」が通過したメキシコ湾岸で、生産が再開されていることが材料視された。ただ、週間ベースでは1カ月ぶりの上昇。フランシーヌに伴う生産混乱や金融市場全般で広がるリスク選好ムードを背景に、売られ過ぎの状況は和らいだ。
朝方は主にショートカバーから値上がりしていたが、英石油大手シェルがメキシコ湾での生産再開を明らかにすると、下げに転じた。ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物価格は10日に終値で1バレル=66ドルを割り込み、2021年12月以来の安値に下落。これを受けて弱気なポジションが積み上がっていた。
みずほセキュリティーズUSAのエネルギー先物部門ディレクター、ロバート・ヨーガー氏は、この日発表された石油掘削装置(リグ)の稼働数の増加が原油を圧迫していると指摘。ポジションを手じまい、利益を確定させる動きが見られると述べた。
マーカス・ガーベイ氏らマッコーリーのアナリストは「最近のリビアでの対立や近年の一連の地政学情勢を踏まえれば、相場に上昇余地がないわけではない」とリポートで指摘。ただし、「石油輸出国機構(OPEC)非加盟国の供給増加や需要低迷で、OPECプラスが計画通りに供給を増やす必要性は限られる」と記した。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物10月限は、前日比32セント(0.5%)安の1バレル=68.65ドルで終了。週間では1.4%上昇し、8月初旬以来のプラスとなった。ロンドンICEの北海ブレント11月限は0.5%下げて71.61ドルで引けた。
金
金相場は続伸し、スポット相場は連日で最高値を更新した。来週の米利下げが広く予想される中、買いが強まり、前日に2%近く上昇した流れが続いた。
この日は一時1.1%高の1オンス=2586.10ドルまで買われた。週間での上昇率は3%を超える勢いだ。米金融緩和観測を追い風に、金は年初から25%余り値上がり。中央銀行による購入や、中東およびウクライナでの紛争を背景とした逃避需要にも支えられたほか、個人投資家の関心も高まっている。
トレーダーの間では来週のFOMC会合での大幅利下げの見通しが復活。きっかけとなったのはウォールストリート・ジャーナル(WSJ)の12日の報道だった。WSJによれば、政策当局者らは利下げ幅を巡り、通常の0.25ポイントか、もしくは0.5ポイントかで決めかねている。
来週のFOMC、市場は0.5ポイント利下げの確率40%と織り込む
金利低下は利回りを生まない金にとって総じてプラスとされており、金の先高観は強いとトレーダーはみている。
TDセキュリティーズのシニアマーケットストラテジスト、ダニエル・ガリ氏は金の最高値更新について、50bpの利下げ観測が強まっていることと関連していると述べた。
RJOフューチャーズのシニアマーケットストラテジスト、ボブ・ハーバーコーン氏は、安全資産としての需要もあると指摘。今週発表の統計で示された米インフレの小幅加速や労働市場の弱さを挙げ、投資家はリセッション(景気後退)に備えて金で資産を守っておきたいと考えている可能性があると話した。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時55分現在、前日比24.50ドル(1%)高の1オンス=2582.40ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物12月限は30.10ドル(1.2%)上げて2610.70ドルで引けた。
原題:Dollar Sinks on Bets of Half-Point Cut from Fed: Inside G-10(抜粋)
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