- 市場を分断する不確実性、25bpと50bpで利下げ幅予想分かれる
- 17日に発表の米小売売上高が波乱要因になる可能性も
米債券市場で連邦公開市場委員会(FOMC)の予測がここまで二分されているのは、金融危機の直前以来のことだ。
FOMC結果発表まで残すところ2日。利下げ幅が25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)になるのか、あるいは50bpになるのかは五分五分とされている。ブルームバーグがまとめたデータで見る限り、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)初期2020年3月の緊急利下げを例外とすれば、FOMC定例会合での金利決定を巡る金利スワップ市場の予想がここまで不透明だったのは、2007年より後にはなかった。
この分析はFOMC発表日から2日前の金利スワップ市場が織り込む予測と、実際の金利決定の差に基づく。今週のFOMCで政策金利が引き下げられることを、連邦準備制度理事会(FRB)当局者らはほぼ約束しているも同然で、実際にそうなれば2020年以来の利下げとなる。しかし7日からのブラックアウト期間に入る前の段階では、労働市場の軟化リスクは25bpより大幅な利下げを正当化するのかという問題を巡り、各当局者が示した見解はばらばらだった。大幅利下げはインフレを再燃させかねないと指摘されている。
「きわどい判断だ」と語るのはラボバンクの米国担当シニアストラテジスト、フィリップ・マレー氏。標準的な25bpの利下げを予想する同氏は「パウエル議長からガイダンスが出ていないのは、FOMCがまだコンセンサスに達していないシグナルかもしれない。それに17日に発表される小売売上高で計算が狂う可能性もまだ残っている」と述べた。
複数のメディアが先週、元FRB当局者らが大幅利下げの論拠を指摘したと報じるまで、市場では25bpより大幅な利下げの可能性はほぼ排除されていた。
ニューヨーク連銀の前総裁で、現在はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストでもあるビル・ダドリー氏は16日のコラムで、50bp利下げに前向きな見解を示した。
今週のFOMC決定に関連付けられた金利スワップ取引は、現在のフェデラルファンド(FF)金利実効水準の約5.3%から37bpの低下を織り込んだ。25bp利下げと50bp利下げの間で予想が割れていることを示している。年末までの利下げ幅合計は117bpと織り込んでおり、今週ではないとしても今年残る2会合の一つで50bpの利下げがあるとの見方を反映している。今年はあと11月と12月に会合が開かれる。
外国為替市場ではブルームバーグ・ドル指数が一時0.4%下げ、1月12日以来の低水準を付けた。一方、円は対ドルでの上昇率トップ。注目されていた1ドル=140円の水準を上抜ける場面もあった。
ナショナルオーストラリア銀行(NAB)のストラテジスト、ロドリゴ・カトリル氏は、「間近に迫った米連邦準備制度の新たな緩和サイクルが、ドルにとって大きな逆風になるとみている」と指摘。「ドルは循環的な下落に入るだろう。米当局はフェデラルファンド(FF)金利を引き下げ、来年には中立金利を下回らないまでも、それに近づけるだろう」と述べた。
17-18日のFOMCを控え、当局者は金融政策に関する発言を禁じられている。トレーダーらが当局の意向を推し量るために頼りにするのは、17日に発表される8月の小売売上高などいくつかのデータだ。
原題:Traders’ Uncertainty About Fed Decision Is Highest Since 2007(抜粋)