Rita Nazareth
- 米10年債利回りは4%台に上昇-雇用統計を受けた債券売り継続
- 北海ブレント80ドル台に上昇-中東情勢への懸念増大
7日の米株式相場は下落。米連邦公開市場委員会(FOMC)による大幅利下げの観測が後退する中、地政学的懸念や大型ハイテク銘柄の下落も相場を圧迫した。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5695.94 | -55.13 | -0.96% |
ダウ工業株30種平均 | 41954.24 | -398.51 | -0.94% |
ナスダック総合指数 | 17923.90 | -213.95 | -1.18% |
4日に発表された9月雇用統計が予想を上回る力強い内容となり、インフレの継続的な減速も見込まれる中、FOMCは11月6、7両日開催の次回会合で小幅な利下げを選択するとの見方が強まっている。短期金融市場では、年内の50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)追加利下げの可能性は排除され、25bp利下げの可能性ももはや完全には織り込まれていない。労働統計局が10日発表する9月の米消費者物価指数(CPI)は前月比0.1%上昇と、3カ月で最小の伸びと予想されている。
モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は「4日発表の力強い雇用統計は、11月の50bp利下げの可能性を消滅させたようにみえるだけでなく、経済データが今後も予想以上に強い場合、政策金利が据え置かれるとの観測も浮上させている」と指摘。「ただ先週示されたように、地政学的要因を無視することはできない。中東情勢のいかなる悪化も、ボラティリティーをさらに増幅させる可能性がある」と述べた。
地政学的な緊張が高まればリスク回避の動きが加速する可能性があると語るのは、モーニングスターのデーブ・セケラ氏だ。「リスク回避の局面では通常はディフェンシブ銘柄へのローテーションが起きるが、現在の環境では注意が必要だ」と同氏は指摘。「ディフェンシブ銘柄の一部はすでに割高となっている。典型的なリスク回避の取引とは異なり、石油株が上昇するのではないかとみている」と語った。
S&P500種株価指数のセクター別ではこの日、エネルギー株を除く全ての主要業種が下落。大型ハイテク株の「マグニフィセント・セブン」指数は1.9%下げた。個別銘柄では、グーグルの親会社アルファベットが2.4%安。アプリストア「グーグル・プレイ」を巡る米連邦地裁の判断が材料視された。一部アナリストから厳しい見方が示されたアップルとアマゾン・ドット・コムも安い。
この日は軟調となったものの、ウォール街の有力ストラテジスト2人は米国株に対する楽観姿勢を強めている。堅調な労働市場や景気の底堅さ、金利低下が背景。
ウォール街の有力ストラテジスト2人、米国株への楽観姿勢強める
モルガン・スタンレーのマイケル・ウィルソン氏は、より安全なディフェンシブ株との比較で景気循環株に対する判断を引き上げた。雇用統計が市場予想を上回ったことや追加利下げ見通しを根拠に挙げている。ゴールドマン・サックス・グループのデービッド・コスティン氏は、S&P500種の向こう1年の予想を従来の6000から6300へと引き上げた。現行水準から10%ほどの上昇を見込んでいることになる。
メイン・ストリート・リサーチの最高投資責任者(CIO)、ジェームズ・デマート氏は「CPIが発表され決算シーズンが始まる今週は、市場にとって重要な週となるだろう。これらのイベントでわれわれの強気姿勢が裏付けられ、S&P500種が年末までに6150に届くという当社予想が正当化されるとみている」と述べた。
国債
米国債相場は下落。雇用統計を受けた債券売りが続き、10年債利回りは4%を上回る水準に上昇した。金融政策動向に敏感な2年債利回りは一時10bp上昇した。
10年物米国債利回り、8月以来の4%記録-雇用統計で見通し再考
国債 | 直近値 | 前営業日比(BP) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.30% | 5.4 | 1.28% |
米10年債利回り | 4.03% | 5.8 | 1.47% |
米2年債利回り | 4.00% | 7.4 | 1.87% |
米東部時間 | 16時53分 |
ゴールドマン・サックス・グループのストラテジスト、ジョージ・コール氏はリポートで「利回りの上昇を予想していたが、ある程度段階的な調整を見込んでいた」とした上で「9月の雇用統計の強さは、政策による景気抑制の度合い、ひいては利下げの幅に関する新たな議論を呼び、利回り上昇のプロセスを加速させたかもしれない」と分析した。
為替
外国為替市場でドルはほぼ横ばい。ドル指数は前週、週ベースでは2022年9月以来の大幅高となっていた。
ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)の市場戦略グローバル責任者ウィン・シン氏は「雇用統計が米金融政策見通しの劇的な再調整につながった」と指摘。その上で「ドルには中東の緊張激化を受けた逃避需要もある」と語った。
BNYメロンのボブ・サベージ氏は「今週のCPIとFOMC議事要旨がリスクムードを変える主要な材料となるだろう」とリポートで指摘した。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1238.67 | 0.37 | 0.03% |
ドル/円 | ¥148.21 | -¥0.49 | -0.33% |
ユーロ/ドル | $1.0974 | $0.0000 | 0.00% |
米東部時間 | 16時53分 |
主要10通貨では円の上昇が目立つ。円は1ドル=148円を挟んで推移。ニューヨーク時間午前の取引では一時147円86銭を付けた。
原油
北海ブレント原油が上昇。1バレル=80ドルを上抜き、8月以来の高値を付けた。イランのミサイル攻撃を受けて、イスラエルがイランの石油インフラを攻撃するとの観測が強まっていることが背景にある。
ブレント原油は前週からの上昇基調を維持した。バイデン米大統領は4日、「イスラエルは攻撃に関して、まだ何をするか結論を出していない」と述べ、「私なら油田を攻撃する以外の選択肢を考えていると思う」と語った。
バイデン氏、イスラエルに自重促す-イラン石油施設への攻撃巡り (2)
CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏は「不安が募っている」と指摘。「長く待てば待つほど懸念は強まる。ジェットコースターに乗って頂上へと向かい、落下を予測しているような状況だ」と述べた。
中東は依然として緊張状態にあり、イスラム組織ハマスがテルアビブに向けて複数のロケット弾を発射。イスラエルは週末にガザ北部の一部地域に部隊を再び派遣した。イランの原油生産量はほぼフル稼働状態に戻っており、緊張が高まると生産が滞る可能性がある。
ダーン・ストライブン氏らゴールドマン・サックス・グループのアナリストは、イランの原油輸出が途絶えた場合、北海ブレント先物は90ドル台に急伸する可能性があるとの見方をリポートで示した。
ニューヨーク原油先物相場は5営業日続伸。ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)先物11月限は2.76ドル(3.7%)高の1バレル=77.14ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント12月限は3.7%高の80.93ドルで引けた。
金
金相場は下落。予想を上回る米雇用統計を受け、利下げ観測が後退した。ただ金相場は、最近付けた最高値を下回る水準で底堅く推移した。
金スポット相場は年初から約28%上昇し、史上最高値を何回も更新した。上昇基調の背景には利下げ観測があるが、中央銀行による旺盛な購入に加え、ウクライナや中東で紛争が続く中での逃避需要にも支えられている。
商品先物取引委員会(CFTC)が4日発表したデータによると、資産運用会社の買い越しは1日時点で、3週間ぶりの低水準となった。
サクソバンクの商品戦略責任者オレ・ハンセン氏はリポートで、「金と銀は最近の価格上昇の後、買い疲れが見られ、利益確定のための売りが出た」と指摘。「金については、地政学要因を背景にした急上昇を恐れて空売り筋が持ち高を減らした一方、長期にわたって買い持ちを維持してきた投資家が利益確定を続けたため、ロングとショートの両方のポジションが減少したことは注目に値する」と指摘した。
スポット価格はニューヨーク時間午後2時39分現在、0.4%安の1オンス=2644.03ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物12月限は1.8ドル(0.1%)安の2666ドルで引けた。
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