Jerome Powell, chairman of the US Federal Reserve
Jerome Powell, chairman of the US Federal ReservePhotographer: Ting Shen/Bloomberg

米連邦公開市場委員会(FOMC)は11月6-7両日に開催した定例会合で、主要政策金利を0.25ポイント引き下げることを決定した。着実な景気拡大の維持を引き続き支援する。また米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、米大統領選で勝利したドナルド・トランプ氏に求められても議長を辞任しない考えを示した。

FOMC声明:インフレ2%目標に向け進展、労働市場はおおむね緩和

  パウエル氏は政策決定後の記者会見で、トランプ氏から求められたら議長を辞任するのかとの記者の質問に対し、「ノー」と回答。また、議長を含むFRB高官の解任や降格は「法律上、認められていない」と言明した。

  米大統領選についての質問には、当面の金融政策決定に「何ら影響しない」と回答。財政政策が変わる可能性について、その時期や内容を理解するには時期尚早だと指摘した。

  今回の利下げにより、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジは4.5-4.75%となった。決定は全会一致。FOMCは9月の会合で0.5ポイントの利下げを決定していた。

パウエルFRB議長の記者会見(一部抜粋)Source: Bloomberg

  記者会見でパウエル議長は、「われわれは時間をかけてより中立的なスタンスへと移行しており、そうした中で今回の政策スタンスのさらなる調整は、経済と労働市場の強さを維持する一助となり、インフレ面でのさらなる進展を今後も可能にするだろう」と述べた。

  今週の米大統領選ではドナルド・トランプ氏が勝利し、ホワイトハウス返り咲きを確実にした。トランプ氏はこれまでパウエル氏を公然と批判し、大統領1期目には解任の可能性も検討した。またトランプ氏はより積極的な関税や不法移民の取り締まり強化、減税を公約に掲げている。そうした政策は物価と長期金利に上向きの圧力をかけるとみられ、今後数カ月におけるFOMCの利下げ幅縮小につながる可能性がある。

  パウエル氏は「政策変更の時期や内容についてはどうなるか分からない」と発言。「よって、経済にどのような影響があるのか、具体的に言えばそうした政策が最大限の雇用確保と物価安定というわれわれの目標変数の達成に影響するのか、影響があるとすればどの程度になるのかについては分からない」と述べた。

  会合後に発表された声明は「雇用とインフレの目標達成に対するリスクはほぼ均衡している」と指摘し、「経済見通しは不確かで、委員会は2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」と続けた。

  今回の声明では、インフレが持続的に2%に向かいつつあることに関して「自信を深めている」との文言が削除され、インフレは当局の目標に向けて「進展した」と記された。

  また労働市場に関する文言もやや修正された。声明では「今年の早い時期以降、労働市場の状況はおおむね緩和してきた。失業率は上昇したが低いままだ」と記した。パウエル氏は労働市場について「堅調」と表現した。

  大統領選が近づくにつれて米国債利回りは上昇し、低迷する住宅市場でローン金利の押し上げにつながった。また選挙でのトランプ氏勝利を受け、S&P500種株価指数は過去最高値に上昇した。

  中長期債利回りの上昇には金融当局として注意を払っているとパウエル氏。利回り上昇は成長が力強さを増しているという認識に起因しているとの考えを示した。また債券利回りの経済への影響について確定的な評価を下すには、利回りの高い状態が続く必要があるとも述べた。

原題:Fed Cuts Rates; Powell Says Wouldn’t Resign If Asked By Trump(抜粋)