トランプ次期米大統領は選挙戦最終日、ピッツバーグの集会で鉄鋼労働者に囲まれてステージに登壇し、米国の雇用と製造業を守ると約束した。だがスピーチでは、日本製鉄へのUSスチール売却を阻止するという、これまで何度も言及してきた公約には意外にも触れなかった。

  141億ドル(現在のレートで約2兆1800億円)規模のUSスチール買収計画で一般労組組合員や政治家から支持を取り付けるため、日鉄の森高弘副社長がピッツバーグ訪問を予定しているが、次期大統領はこの取引について沈黙を守ったままだ。

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  この取引を支持すれば、選挙戦でのトランプ氏の主張に反することになる。だがこの問題は一部鉄鋼労働者の間でますます物議を醸している。こうした労働者は同氏が激戦州ペンシルベニアでの勝利に向け取り込もうとした労働者層の代表格だ。

  全米鉄鋼労働組合(USW)でローカル2227副会長を務めるジェイソン・ズガイ氏は今週のインタビューで、自身とトランプ氏の間で行われた会話を明らかにした。「お願いしたいことがある。全米のテレビやあなたを支持するために集まる数千人の鉄鋼労働者の前で、この取引を阻止する方針とは言わないでほしい」とトランプ氏に話したところ、「OK」との答えが返ってきたという。

  この会話はトランプ氏の集会後に楽屋裏で交わされたという。ズガイ氏はトランプ氏に対し、日鉄への売却計画を多くの鉄鋼労働者が支持していることを伝えた。

  ズガイ氏によると、トランプ氏は外国企業へのUSスチール売却になお懸念を抱いていると述べたが、ズガイ氏は、この取引は外国から米国に投資を呼び込むというトランプ氏の公約の一つを実現するもので、鉄鋼労働者も仕事を維持するために必要としていると伝えた。

  トランプ氏はミシガン州で行われた選挙戦最後の集会でこの計画には言及せず、大統領選勝利後もこの件について公に発言していない。トランプ氏の政権移行チームにコメントを求めたが、返答はなかった。

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原題:Trump Pivots to Silence on US Steel Deal Amid Growing Tensions(抜粋