▽プロジェクト2025、始動の準備着々-トランプ次期政権に執筆者ずらり<bloomberg日本語版>2024年11月23日 7:15 JST

Eric Martin

  • トランプ氏は選挙運動中に酷評、プロジェクト2025とは距離置いた
  • 政権中枢に少なくとも5人、「過激」なマニフェストが現実に昇華か
アイオワ州デモインで開かれたステートフェアに出店したヘリテージ財団(8月14日)
アイオワ州デモインで開かれたステートフェアに出店したヘリテージ財団(8月14日) Photographer: Charlie Neibergall/AP Photo

トランプ次期米大統領が選挙運動中に「最低だ」とこき下ろした政策マニフェスト「プロジェクト2025」。同氏自身が起用する政権人事が明らかになるにつれ、実現する見通しが鮮明になってきた。このプロジェクトに関わった人物、少なくとも5人が次期トランプ政権に加わることになりそうだ。

  プロジェクト2025が明るみに出たのは約1年前。選挙運動が過熱していた時期だった。保守系シンクタンクのヘリテージ財団が主導し、反移民や、反リプロダクティブライツ(性と生殖に関する権利)、小さな政府を支持する保守派の意見を取りまとめたのがこの政策マニフェストだった。民主党候補のハリス副大統領はこれをトランプ氏の「過激な」見解と表現し、格好の攻撃材料としていた。

  このマニフェストでは気候変動対策ルールの撤廃や、労働者保護の縮小、トランプ氏に忠誠を誓う人材の公職登用、教育と商務、国土安全保障3省の部分もしくは全面解体などが提唱されている。

  トランプ氏は選挙運動中、このマニフェストとは距離を置いてみせ、何も知らないと主張。提唱されている中身の一部について「まったくばかげており、最低だ」と非難していた。

関連記事:トランプ主義の脅威に矛先、ハリス氏「極端なアジェンダ」集中攻撃へ

  このプロジェクト2025に関与した人物で、少なくとも5人が次のトランプ政権に起用される方向だ。

  同マニフェストで連邦通信委員会(FCC)に関する章を執筆したブレンダン・カー氏は、そのFCCの委員長に起用された。同氏はプロジェクト2025の中で、コンテンツ規制が厳し過ぎるとして保守派の攻撃対象になっている大手ハイテク企業、とりわけメタのフェイスブックとアルファベットのグーグルについて、保護を限定することを提唱している。同氏は指名を受けた直後にソーシャルメディア「X(旧ツイッター)」に投稿し、「検閲カルテルを解体し、米国人に言論の自由を取り戻す」と訴えた。

  マニフェストの中核部分である連邦官僚制度の縮小と、大統領のコントロール強化について執筆したラス・ボートは、行政管理予算局(OMB)局長に指名される方向だとCBSニュースが伝えた。ボート氏が重点を置いたのは、政府の規模縮小と、政治任用者の権限を強化し官僚の決定を覆すことができるようにすること。政権スタート時から大統領令を積極的に発令することも奨励。トランプ氏自身もその方針だと、同氏の広報担当ジェイソン・ミラー氏は述べている。

  トランプ氏が国境警備・管理と不法移民送還の包括的責任者に起用したトム・ホーマン氏も、プロジェクト2025の協力者リストに含まれる。同マニフェストは数百万人もの不法移民、特に犯罪者の国外追放を強調。トランプ氏は国家緊急事態を宣言することで、移民の強制収容や収容キャンプの警備、国外追放に軍を動員できるようになると述べた。政権1期目でトランプ氏が打ち出した厳しい移民政策の顔となったホーマン氏は、今度はリベラル都市による抵抗を一切容認しないと言明。「協力しないのなら、さっさと出て行け」と、いわゆる「聖域都市」に警告した。

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  中央情報局(CIA)長官に起用するとの発表があったジョン・ラトクリフ元下院議員も、プロジェクト2025の主要な寄稿者だ。1期目のトランプ政権で国家情報長官を務めた同氏は、米国を中国から守る必要性を常に警告してきた。中国政府は経済と軍事、技術における支配を狙っており、同国の大手企業は共産党の利益のために動いているというのがラトクリフ氏の主張だ。プロジェクト2025は中国の脅威に備える必要性に長いページを割いている

  駐カナダ米大使には、元下院議員で情報委員会のメンバーだったピート・ホークストラ氏が指名された。1期目のトランプ政権で同氏は駐オランダ大使を務めたが、大使館に極右政治家らを招いてパーティーを主催し批判されたことがある。ホークストラ氏もプロジェクト2025の協力者リストに名前を挙げられ、同氏が1990年代に教育省の無駄を批判したことがリポートに記されている。トランプ氏は教育省を解体する意向を明らかにしている。

  上述の候補者にコメントを求めたが、誰からも返信がない。

  トランプ氏の広報担当者カロリン・リービット氏は「トランプ次期大統領はこれまでプロジェクト2025に一切関わっていない」と言明。「閣僚候補の指名や起用はすべて、トランプ氏のアジェンダに誠実に沿ったものであり、外部グループのアジェンダとは関係ない」と述べた。

  プロジェクト2025を執筆、編集した40人のうち、18人が第1次トランプ政権出身者で占められている。国土安全保障省の副長官代理だったケン・クチネリ氏、国防長官代行だったクリストファー・ミラー氏、そして国家通商会議(NTC)委員長を務めたピーター・ナバロ氏が含まれる。

原題:Project 2025 Goes From Pariah to Pipeline as Trump Staffs Up(抜粋)

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