サンリオの株価が上場来高値を更新している。「ハローキティ」をはじめとする知的財産(IP)事業で収益を伸ばし、後に続くキャラクターも豊富だ。
株価は11月に入り最高値を付ける日が続いて年初来で2.5倍、東証株価指数(TOPIX)業種別で所属する卸売業指数では断トツで上昇率1位だ。創業者の辻信太郎氏から孫の辻朋邦氏に社長が交代した2020年7月以降では9倍弱になる。今期(25年3月期)営業利益予想は前期比52%増で過去最高を更新する。
キャラではキティが著名だが、総数が5700万票を超えた24年のサンリオキャラクター大賞では5位(1位は「シナモロール」)だった。実はキティが1位だったのは19年が最後で、以降は5位にも入れない年もある。このキティ以外の450種類ほどのキャラの多様性がサンリオの強みで、IP事業の裾野を広げている。
サンリオ株に21年から投資している英RBCブルーベイ・アセット・マネジメントの舟木麻弥ポートフォリオ・マネジャーは20年の体制変更を評価、海外売上高比率が急上昇しているキティ以外のキャラについて「成長余地は大きい」と述べた。さらに物語と結び付くディズニーのキャラに対してサンリオは「汎用性が高く、他のIPとの共存も容易だ」と優位性を指摘した。
1974年デビューのキティは24年に50年を迎えた。50周年効果も追い風になってサンリオの収益は好調だ。25年には「マイメロディ」や「リトルツインスターズ(キキ&ララ)」が50年を迎える。この2キャラは大賞では6位と10位だった。キティには19年に発表されたハリウッド映画への期待も膨らむ。
IP展開
岩井コスモ証券の川崎朝映シニアアナリストはサンリオについて「任天堂が切り開いたIP多面展開ビジネスモデルを本格的に追随する段階に入った」と評価、成長余地は任天堂に匹敵するとしている。農林中金全共連アセットマネジメントの中尾真也ファンドマネジャーは「他のIPビジネス企業と比べて主人公級の魅力的で分かりやすいキャラクターを多数保有している点が強み」と指摘した。
サンリオの今期売上高予想は1306億円と前期比で31%増加する。店舗やテーマパークでインバウンド(訪日外国人)を含めて顧客が増加、ライセンス事業も複数キャラ展開戦略が奏功して特に北米や中国でロイヤルティー売り上げが増えたとしている。
韓国NH投資証券の日本株アナリストであるキム・チェユン氏は、韓国アイドルや韓国で人気ブランドのアディダス、バレンシアガとの協業でサンリオの認知度が非常に上がったとして、韓国で引き続き高い実績を出す可能性が高いと予想した。
同時にリスク要因は「キャラのライセンス依存度が高いこと」として、グローバルマクロ的な要素が株価にネガティブな影響を及ぼす可能性がある点には要注意だとした。
「キティ」後
複数キャラ戦略が奏功して、物販・ライセンス事業の売上総利益に占めるキティの構成比率は前期で30%と10年前の76%から半分以下に低下した。
キティに詳しい関西国際大学の清水美知子教授はサンリオについて「近年は推し活の広がりとともにキティ以外のキャラが大きく成長している」と語った。
22年7月からサンリオ株を保有し始めたアセットマネジメントOne海外消費関連日本株ファンド株式運用グループのファンドマネジャー吉澤朋哉氏は、サンリオは10-14年辺りまで増益だったが、キティブランド乱用と自社物販拡大という戦略を進める過程で在庫ロスなどが発生して14年以降はつまずいたと指摘した。今のサンリオはキティ以外にも収益源を広げている。
サンリオ株は11月27日、一時17%安と急落した。主要取引銀行や経営陣が保有する株式を売り出すと発表して需給悪化を懸念する動きが一気に強まった。それでも翌日には一時9%高となり、その後に急落の穴はすぐに埋まった。
今期予想株価収益率(PER)は向こう12カ月のブルームバーグ・コンセンサスで33倍、任天堂の29倍やTOPIXの15倍に比べてサンリオ株は割高だ。
農林中金全共連アセットの中尾氏はサンリオ株について、投資指標のマルチプル的には過去の水準を超えているとして「1株利益(EPS)の成長予測が難しい面もある」と指摘した。同時にIP事業の世界的普及ストーリーが崩れない限り、高いバリュエーションは許容されると評価した。このストーリーを維持するためには複数キャラの一層の活躍が不可欠だ。
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