Dana Hull
- アド・アストラ、テーマ別やSTEMベースの活動など提供へ
- マスク氏、実践的な学習や問題解決能力を重視する教育を支持
米実業家イーロン・マスク氏の資産運用マネジャーであり、ファミリーオフィス代表であるジャレッド・バーチャル氏が最高経営責任者(CEO)に名を連ねる。古くからのマスク氏の側近で、宇宙開発企業スペースXや地下トンネル掘削会社ボーリングでの勤務経験を持つジェン・バラジャディア氏も、公式連絡先として記載されている。
両氏はマスク氏がテキサス州バストロップ郊外で開校を目指すモンテッソーリ式教育の新たな学校「アド・アストラ」の関係者だ。同州の情報公開請求制度に基づき入手した書類で明らかになった。
電気自動車(EV)やロケット、脳インプラント、ソーシャルメディアなど経営企業6社やトランプ次期米大統領の返り咲きに貢献した政治活動委員会(PAC)に加え、マスク氏はここにきて、幼稚園から大学に至るまで教育にますます情熱を傾けている。
ブルームバーグ・ニュースは昨年、同氏の財団がテキサス州オースティンにテクノロジーに特化した初等・中等教育課程の学校からいずれは大学の設立を見据え、約1億ドル(約153億5000万円)を確保していると報じた。 マスク財団の最新の納税申告書によると、昨年は現金および株式でさらに1億3700万ドルが振り向けられた。
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アド・アストラは実現に近づいている。テキサス州当局が先月、初期の許可証を発行したことが同州の文書から明らかになった。これにより、最大21人の生徒を受け入れて運営することが可能になる。
アド・アストラのウェブサイトには「現在、3-9歳までのすべての子供を受け入れている」と記載されている。同校のソーシャルメディア、X(旧ツイッター)のアカウントには、補助教員の求人募集が出ている。
アド・アストラは学校運営にあたり、富裕層との取引実績がある企業「エクスプロア・エデュケーション(Xplor Education)」と提携している。同社はオラクルの創業者、ラリー・エリソン氏が98%を所有するハワイのラナイ島でモンテッソーリ式教育の学校開設に携わった。
アド・アストラはオースティンから約50キロ離れたベッドタウン、バストロップ郊外のハイウエー沿いに位置しており、周辺にはマスク氏が経営する複数の事業拠点がある。マスク氏の従業員の子供たち、あるいはマスク自身の子供を念頭に置いて設計されているようだ。マスクには少なくとも12人の子供がいるが、そのうち6人は過去5年間に生まれた。
アド・アストラでは「テーマ別、STEM(科学、技術、工学、数学)をベースとした活動やプロジェクト」に加え、屋外での遊びや昼寝の時間もあるとしている。入学申請書にはバーチャル、バラジャディア両氏の名前が記載されているが、学校運営が実際に始まって、両氏が実質的な役割を担うかどうかは明らかではない。
マスク氏、バーチャル氏、バラジャディア氏にメールで質問したが、回答は得られなかった。学校への電話とメールについても返答がなかった。
アド・アストラの開校は、マスク氏にとって自身の教育に対するビジョンをアピールする機会となる。また経営企業の理念にもつながる実践的な学習や問題解決能力を重視する教育への支持を示すことにもなる。学びに対するマスク氏の発言は、保守派や「MAGA(米国を再び偉大に)」の主張を掲げる人々の間で広がる文化的な懸念と重なることが多い。
マスク氏は左派寄りのプロパガンダを吹き込む教師によって子供が洗脳されているとの立場で、折に触れてこの点を問題視している。DEI(多様性、公平性、包摂性)の取り組みに反対しており、8月には「多くの学校が白人の少年たちに自分自身を嫌うように教えている」と投稿した。
マスク氏が抱く教育への関心は、トランプ氏の「ファーストバディ」という新たな役割とも一致している。政府の歳出削減を主導する「政府効率化省(DOGE)」の責任者に抜てきされたマスク氏は12日、Xへの投稿で「教育省は米国の学校におけるDEI推進に10億ドル以上を費やした」と指摘した。
原題:Elon Musk’s Preschool Near Austin Shows His Education Ambitions(抜粋)