Rita Nazareth
- S&P500種は約400銘柄が上昇-AI関連ETFや小型株にも買い
- ドルは上げ縮小、市場はトランプ氏の関税政策を引き続き注視
21日の米株式市場は上昇。世界貿易を巡るトランプ大統領の発言が警戒されていたほどには強硬的ではないと受け止められ、同氏の政策が米企業をさらに後押しするとの見方が広がった。トランプ大統領がソフトバンクグループとオープンAI、オラクルが主導する人工知能(AI)への新たな大型投資を発表するとの報道も買い材料視された。
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株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 6049.24 | 52.58 | 0.88% |
ダウ工業株30種平均 | 44025.81 | 537.98 | 1.24% |
ナスダック総合指数 | 19756.78 | 126.58 | 0.64% |
S&P500種株価指数構成銘柄のうち約400銘柄が上昇。AI関連企業に投資する上場投資信託(ETF)は3年ぶりの高値をつけた。
保護主義的な政策から恩恵を受けるとの思惑から小型株も上昇。トランプ氏が対中関税をまだ発表していないことで中国の大企業に焦点を当てたETFも値を伸ばした。
引け後に決算を発表したネトフリックスは時間外取引で一時11%高と急伸。2025年売上高見通しを上方修正したことが好感された。
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ジェフリーズ・インターナショナルのチーフエコノミスト、モヒト・クマール氏は「リスク資産は規制緩和の恩恵を受けるはずであり、関税は懸念されていたほど悪くはない」と指摘。「警戒されていたほど厄介ではない関税や原油価格下落の可能性は、金利にもポジティブに働くだろう。ただ、ボラティリティーの要素が増えることは間違いない」と語った。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)の調査によると、トランプ大統領の通商政策スタンスが懸念されていたよりも控えめになるとの見方から、出遅れた株式の上昇に備える動きが見られる。
関税に関する懸念が「根拠のないもの」だと証明されれば、投資家の資産配分は高いリスク志向が続き、米国株の力強い上げに追随できなかった株式が追いつこうとするだろうと、BofAのストラテジスト、マイケル・ハートネット氏が述べた。
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パイパー・サンドラーのクレイグ・ジョンソン氏は「先週の株式市場は幅広い上昇を見せたが、これはインフ鈍化を示すデータ、堅調な銀行決算、短期的な売られ過ぎ状態とネガティブセンチメントからの回復を背景としたものだ」と指摘。「トランプ氏の『ビジネス寄りで投資家寄り』の政策が復活することで、株式相場はさらに上昇すると予想している」と語った。
UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのソリタ・マルチェリ氏は、「関税が発動されても成長」というのが米経済に関する同社の基本シナリオだと説明。「リスクについては注視していくが、当社の基本シナリオで想定した関税措置は米国の成長を頓挫させるほどではないだろう。また、こうした関税により、インフレが現行水準から低下するのを妨げられ、年内50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)利下げが不可能になるとも考えてない」と語った。
国債
米国債相場は上昇(利回りは低下)。10年債利回りは今年に入って最低の水準に近づいている。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.80% | -5.3 | -1.09% |
米10年債利回り | 4.57% | -5.5 | -1.18% |
米2年債利回り | 4.27% | -0.9 | -0.20% |
米東部時間 | 16時35分 |
一方、リソルツ・ウェルス・マネジメントのキャリー・コックス氏は、トランプ大統領が債務上限問題で深刻な課題に直面する可能性を指摘。「今後、債務上限を巡る協議についてのニュースが増え、短期国債へのストレスも強まり始める可能性がある」と述べた。
債務上限は議会での予算交渉に利用されることが多く、土壇場で合意されることも少なくない。債務上限問題を巡る混乱では、連邦政府がデフォルト(債務不履行)となった場合に最も影響を受けやすい短期国債への売り圧力が強まるケースがよく見られる。
為替
外国為替市場では、ドルが上げを縮小する展開となった。主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数はほぼ横ばい。アジア時間の取引では、トランプ大統領がメキシコとカナダからの輸入品に最大25%の関税賦課を計画していると表明したのを受け、同指数は一時0.7%上昇していた。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1302.36 | 0.60 | 0.05% |
ドル/円 | ¥155.51 | -¥0.11 | -0.07% |
ユーロ/ドル | $1.0425 | $0.0009 | 0.09% |
米東部時間 | 16時35分 |
アンドルー・ホレンホースト、ベロニカ・クラーク両氏らシティのエコノミストはリポートで「トランプ氏によれば、カナダとメキシコからの輸入品には2月1日から最大25%の関税が賦課される可能性がある。しかし、これらの国々に対する構造的な高関税を望んでいるというよりも、交渉のための手段という意味合いが強いのではないか」と指摘。
「関税は市場の懸念よりも緩やかなものになる公算が大きく、金融政策が著しくタカ派的になることはないだろうというのがわれわれの見方だ」と記した。
円相場は1ドル=155円台半ばでもみ合い。共同通信はこの日、日本銀行が23-24日に開催する金融政策決定会合で追加利上げを決定する方向だと報じた。トランプ米大統領就任を受けた金融市場で大きな波乱が見られず、追加利上げに踏み切る環境がほぼ整ったという。
市場ではすでに日銀利上げの観測が高まっており、同報道に対する反応は限定的だった。
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原油
ニューヨーク原油先物相場は3日続落。トランプ米大統領がメキシコとカナダに対する関税引き上げの方針を示したため、貿易戦争に発展するとの懸念が再燃し、売りが続いた。
サクソバンクの商品戦略責任者オーレ・ハンセン氏は「関税の脅威は現実的なもので、経済成長を押し下げるリスクがある」と指摘した。
トランプ大統領は20日の就任演説で、バイデン前政権下で1980年代以来の低水準まで落ち込んだ米国の戦略石油備蓄(SPR)について、「上限まで」補充する計画だと述べた。また、気候変動対策の枠組み「パリ協定」からの米国の離脱を命じた。さらに、米国のほとんどの沿岸水域での掘削を事実上阻止していた海洋石油・天然ガスのリース禁止措置も撤回した。
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ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物2月限は、前営業日比1.99ドル(2.6%)安い1バレル=75.89ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント3月限は1.1%安の79.29ドルで引けた。
金
金相場は上昇。トランプ米大統領による関税引き上げなどの政策がもたらす影響が意識される中、買いが優勢になった。
金と銀が包括的な関税措置の対象となる可能性があり、ここ数週間の値動きを荒くしている。
TDセキュリティーズの商品ストラテジスト、ダニエル・ガリ氏は「不確実性が続く限り、ジェットコースターは止まらないだろう」と発言。先週に買い越しを増やした投機筋は、不確実性をヘッジするために買いを続ける可能性があると指摘した。
インフレ見通しも意識されており、減税や歳出拡大といったトランプ大統領の国内政策により、今年も物価上昇圧力が継続する可能性がある。そうなると、金融緩和の継続が制限される可能性がある。金利を生まない金にとって、借り入れコストの上昇は逆風となることが多い。
スポット相場はニューヨーク時間午後2時39分現在、前日比34.43ドル(1.3%)高の1オンス=2742.64ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物2月限は前営業日比10.50ドル(0.4%)高の2759.20ドルで引けた。
原題:Stocks Get AI Boost as Trump Holds Fire on Tariffs: Markets Wrap
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