Rita Nazareth

  • S&P500は4営業日続伸、6100上回り過去最高値を更新
  • ドル小幅安、2年債利回り低下-原油先物は5日続落
A Donald Trump 2024 campaign hat on the floor of the New York Stock Exchange, Jan. 21, 2025.
A Donald Trump 2024 campaign hat on the floor of the New York Stock Exchange, Jan. 21, 2025. Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

23日の米国株式市場でS&P500種株価指数は4営業日続伸。取引終盤に値を伸ばし、6100を上回って過去最高値を更新した。トランプ大統領が演説で利下げを促し、石油輸出国機構(OPEC)には原油価格の引き下げを要請する方針を示したことが相場の押し上げ材料となった。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6118.7132.340.53%
ダウ工業株30種平均44565.07408.340.92%
ナスダック総合指数20053.6844.340.22%

  S&P500種構成銘柄のうち約320銘柄が上昇。一方でASMLホールディングを中心に半導体銘柄は下落。 米国のさらなる輸出規制を巡る懸念に加え、ASMLの顧客である韓国半導体大手SKハイニックスの設備投資に対する慎重な姿勢が弱材料視された。

  トランプ氏はこの日、世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)でオンライン演説を行い、OPECに原油価格の引き下げを要請する方針を示した。また、金利の即時引き下げを要求すると主張。金利上昇により財政赤字が膨らみ、バイデン前政権下で経済的惨事を招いたと述べた。

  さらに、各界のリーダーを前に、第2次政権では関税を使って製造業の国内回帰を目指すと表明。 「あなた方が決めることだが、米国で商品を製造しないのでれば、関税を支払わなければならない」と述べた。

関連記事:トランプ米大統領、OPECに原油価格下げ要請-利下げも要求

  シティー・インデックスのアナリスト、ファワド・ラザクザダ氏はトランプ氏の演説について、貿易政策の新たな手掛かりを注視していたトレーダーにとっては、関税に関しては落ち着いたトーンだったと指摘。原油や金利に関する発言も「投資家の不安を和らげる」ことにつながったとの見方を示した。

S&P 500 Hits 6,100 Milestone

   ルネサンス・マクロ・リサーチのニール・ダッタ氏は「トランプ氏は正しいか正しくないかは別として、エネルギー分野におけるポジティブな供給ショックを望んでいる」とし、「それはインフレ期待を低下させ、ひいては金利を引き下げるだろう」と語った。

   「インフレ圧力が弱まる中での成長促進策をトランプ氏がもし実行に移せるのであれば、景気循環株や小型株、非米国資産へのローテーションが実現する可能性は高い」。こう語るのは、ロサンゼルス・キャピタル・マネジメントのハル・レイノルズ氏だ。ただ政策リスクが高まっていることを背景に、同社の銘柄選択モデルは引き続き、世界的な大型株への選好度合いが若干高い傾向があるという。  

  メイン・ストリート・リサーチのジェームズ・デマート氏の目には、株式市場は「嵐の前の静けさ」にあると映っている。来週には米連邦公開市場委員会(FOMC)会合と大手テクノロジー企業の決算発表があるが、「どちらも市場にボラティリティーを引き起こす公算が高い」と同氏はみている。

  その上で、相場に調整局面が訪れた場合は買いの好機だとし、「AIとテクノロジー主導のビジネスサイクルと強気相場はまだ始まったばかりであり、現在は約2年が経過しているが、今後さらに5年続く可能性がある」と語った。

国債

  米国債相場はまちまち。政策金利動向に敏感な2年債の利回りは一時2ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下。原油価格引き下げや利下げを求めたトランプ大統領演説に反応した。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.87%4.70.97%
米10年債利回り4.64%3.30.71%
米2年債利回り4.29%-1.1-0.25%
  米東部時間16時33分

  この日発表された経済指標では、失業保険の継続受給者数が2021年11月以来およそ3年ぶりの高水準となっ。一方、新規失業保険申請件数は小幅増にとどまった。 

関連記事:米失業保険の継続受給者およそ3年ぶり高水準、新規申請は小幅増

  モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は「失業保険申請は若干の上振れサプライズになったかもしれないが、ここ数カ月で定着した低い範囲にとどまっている」と指摘。「雇用は引き続き米経済のアウトパフォーマンスを浮き彫りにしている」と述べた。

為替

  外国為替市場ではドル指数が小幅に下落。米国の金利引き下げを求める考えを示したトランプ大統領発言が材料視された。

  マネックスの外国為替トレーダー、ヘレン・ギブン氏は「金利引き下げを求めるというトランプ氏の発言は、株式相場では間違いなく歓迎されるが、ドルにとっては素晴らしいニュースではない」と述べた。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1301.79-2.11-0.16%
ドル/円¥156.02-¥0.51-0.33%
ユーロ/ドル$1.0416$0.00070.07%
  米東部時間16時33分

  デービッド・アダムス氏らモルガン・スタンレーのストラテジストは「ドル弱気派は目立ちはしないものの、投資家が考えているよりはるかに多く存在する」とリポートで指摘。「その多くは手元資金を抱え、ショートに入る合図を待っている。3月に向けて連邦政府の財政交渉とインフレデータは両方とも、彼らが動く材料になり得るだろう」と記した。

  主要10通貨では円がアウトパフォーム。市場が追加利上げを織り込む日本銀行の金融政策決定会合が意識される中、円はトランプ氏の演説を受けて上げ幅を拡大し、対ドルで一時0.5%高の1ドル=155円75銭を付けた。

ドル・円相場の推移

原油

  ニューヨーク原油先物相場は5日続落。トランプ氏がサウジアラビアなどOPECに原油価格引き下げを働き掛けると発言したため、売りが優勢となった。

  OPECと非加盟産油国で構成するOPECプラスは長年にわたり、生産量の抑制で価格を支える取り組みを続けてきた。潜在的に市場に供給できる余剰生産は1日当たり数百万バレルあり、これまで数度の延期を経て、4月からこの生産量の大部分を徐々に復活させることを表明している。

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  アンティモのシニアポートフォリオマネジャー、フランク・モンカム氏は「原油市場は今年、エネルギー価格における『トランプ・コールオプション』という新たな変数に直面している」と述べた。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物2月限は、前日比82セント(1.1%)安い1バレル=74.62ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント3月限は0.9%安の78.29ドルで引けた。

  金スポット相場はほぼ変わらず。トランプ大統領が関税を使って米国への製造業回帰を目指す考えを改めて示したほか、金利の即時引き下げを要求したため、金は下げ幅を縮小した。

  トランプ大統領発言を受けてドルの動きが荒くなり、金相場は序盤の下げを埋めた。通常、借り入れコストの低下は金にとって強材料となる。

  トランプ新政権と他国との関係が悪化する可能性が意識され、金は逃避需要の高まりに下支えされている。

  米失業保険の継続受給者数がおよそ3年ぶりの高水準となったため、朝方は売りが優勢になった。

  スポット相場はニューヨーク時間午後2時46分現在、前日比45セント(0.1%未満)安の1オンス=2756.03ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物2月限は5.90ドル(0.2%)安の2765ドルで引けた。

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