中国のA Iスタートアップ・DeepSeekが米国の最先端A I企業をぶっ飛ばした。今朝起きて驚愕のサプライズを目にした。ブルームバーグの見出し「エヌビディア時価総額、米史上最大の5890億ドル減-DeepSeekショック」。円換算するとエヌビディアは一夜にして約91兆円を失ったことになる。これは日本の来年度予算(115兆円)に匹敵する額だ。ロイターは「AI株にディープシークの衝撃、エヌビディアは約5930億ドル消失」と見出しをつける。株価が急落したのはエヌビディアだけではない。A I関連銘柄は軒並み急落した。A Iに不可欠と見られていた超高性能の半導体の輸出が制限されている中国で、スタートアップ企業のDeepSeek がOpen AIが開発したチャットGPTを上回る性能のA Iをリリースしたというのだ。これが本当なら米国主導で展開されてきたA Iナラティブ(ストーリー)がひっくり返る。米国への巨額投資を発表したソフトバンクも簡単にぶっ飛んじゃうかもしれない。
発端は先週、ディープシークが低コストのAIモデルを披露したことにある。ロターによると「ディープシークは、既存サービスに比べてわずかなコストで少ないデータを使用しているという無料のAIアシスタントを公開。27日までに、このアシスタントはアップルのアプリストアでのダウンロード数が競合のチャットGPTを抜いた」というのだ。これを受けて昨日、AI用の半導体で世界をリードするエヌビディアの株価が暴落、AI関連銘柄も軒並み値を下げた。なぜこんなことが起きるのか?要するに米国を中心にAI開発にまつわるナラティブ(ストーリー)が存在しているせいだ。「どんなに巨額の開発費をかけてもAIは将来的に採算が取れるようになる」。投資家も開発者もこうした物語を信じ込んでいる。そこに疑念が湧いたのだ。低コストでも簡単にできる。ひょっとするとDeepSeekは西側が信じ込んでいる夢物語をぶち壊すかもしれない。そんな疑念が市場関係者の間に瞬時に伝わったのだ。
評価は分かれる。ロイターは相反する2つの見方を紹介する。1つはドイツ銀行のアナリスト、エイドリアン・コックス氏の見解。「(ディープシークは)これまでAI競争に拍車をかけてきた『大きければ大きいほど良い』というアプローチに疑念の種をまいている」。これに対してシノバス・トラスト・カンパニーのシニアポートフォリオマネジャー、ダニエル・モーガン氏は、「27日の売りは過剰反応だ」と指摘する。
同氏によると、ディープシークのAIモデルはデータセンターではなくスマホ向け。「本当に儲かるのはデータセンター向け」としており。AIのナラティブは依然として生きていると強調する。結果がどうなるかわからない。ただ、株式市場が想像以上の勢いで“夢物語”を追いかけている事実も浮かび上がった。AIの将来がどうなるかまだわからない。ただしDeepSeekという小さな会社が一夜にして世界に名を馳せたことは間違いない。