26日(日)に投開票された川越市長選挙は、都議選や参院選を控える既成政党にとっては、穏やかならざる結果となった。昨日までこういう選挙があったことすら知らなかった。知人に教えられて調べてみた。大変に興味深い結果になっている。川越市は埼玉県の中核都市の一つだ。市長選は前市長の引退にともなって行われたもの。結果は東京新聞によると以下のようになっている。「無所属新人で元裁判官の森田初恵氏(42)が、いずれも無所属新人で、元県議の山根史子氏(40)=自民、立民、国民推薦=、元市議の樋口直喜氏(41)、元市議の小野沢康弘氏(70)の3氏を破り、初当選を果たした。同市で女性市長が誕生したのは、1922年の市制施行以来初めて」。当日の有権者数は29万543人、投票率は33.66%(前回22.05%)。投票率が低いのが気になるが、有力候補と見られる山根氏が敗北したことが目を引く。
断っておくが、川越市の政治情勢や候補者の評判などに関する知識は皆無。メディアが報じた選挙結果から、裏に隠されている有権者の投票行動を類推、推測するだけだ。それも独断と偏見ベース。注目すべきは元県議の山根氏が敗北したことだ。立候補した4人はいずれも無所属。山根氏だけが自民党と立憲民主党、国民民主党の推薦を受けている。ローカルな市長選挙は国政とは別物と考えていい。だから現在進行中の国会における予算審議と今回の選挙結果にはなんの関連もない。とはいえ、日本の将来を左右する主力3党が推薦している山根氏が敗北した。同氏の資質に問題があったとすれば、そんな候補を推薦した3党の推薦責任が問われる。東京新聞によると同氏は「民主党・野田佳彦内閣で外務副大臣を務めた故山根隆治氏を父に持ち、民主、国民、無所属で県議を3期務めた」とある。資質の問題ではなさそうだ。
次に考えられるのは推薦政党の中に自民党が入ったことだ。地方選挙とはいえ自民党と手を組む候補者は勝てない。これを立証した選挙だったのかもしれない。中央政界における一連の裏金疑惑、石破総理の不甲斐なさ、そんなことが有権者の投票行動を左右した。だとすれば立憲も国民もこの先、自民党とは組めなくなる。維新が賛成して予算が成立しても、参院選での敗北は目に見えている。かくして来年度予算の年度内成立は困難になり、石破総理は退陣に追い込まれる。もう一つの可能性は、既成政党離れが静かに始まっている事実だ。石丸伸二氏が立ち上げた新党「再生の道」は綱領も公約もない。政党にあらざる政党と思っていたが、地方政治は元々無所属本位なのだ。都議選を目指す石丸氏はひょっとすると、政治の先の先を見据えているのかもしれない。右派とか左派とか候補者の“色”も政党も、いまや無用の長物。有能な候補者がいれば政治は動く。もしかすると既成政党の“溶解”が始まったのかもしれない。