Eric Martin
- 移民はコロンビア機で手錠なしで帰国、政府は低利融資で生活支援
- ペトロ大統領、「いじめ」に抵抗したリーダーと他国が認識へ
トランプ米大統領はつい先日、コロンビアへの移民送還に関し相手国の抵抗を封じ込めたとして勝利を宣言したが、実情はそれほどの快勝ではないようだ。
コロンビアのペトロ大統領はソーシャルメディアへの投稿で、米国への移民は27日、コロンビア空軍機で帰国を始めたと明らかにした。米国が26日に米軍機で強制的に送還しようとしていた移民だ。
事実はホワイトハウスが26日夜に出した声明と異なる。レビット大統領報道官はコロンビアが「米軍用機などで送還されるコロンビアの不法移民全員を制約や遅滞なく無制限に受け入れることを含め、トランプ大統領の全ての条件に同意した」としていた。発表ではコロンビアが自国の航空機を使うことには触れていなかった。
関連記事：トランプ氏、コロンビアへの関税賦課と制裁を保留－移民問題で合意
公的に話す権限を持たないとして匿名で話した米政府高官によると、トランプ政権は今後数週間にわたり、必要に応じて民間航空機とともに軍用機も使ってコロンビアへの強制送還を行う予定。コロンビアの航空機を利用することで、米国の納税者は軍用機利用の費用を負担せずに済み、米国の航空機を他国への強制送還に充てることができるという。
しかしペトロ大統領は自国民が帰国する方法において、その条件と見た目の両面でコントロールを拡大した。同氏は26日と27日に「Ｘ（旧ツイッター）」に投稿し、自国民の帰国を祝し、生活を始められるよう低金利の融資を提供すると述べた。
「同胞達は手錠をかけられることなく、米国から自由で尊厳を維持した状態で帰国している」とペトロ大統領。「彼らを愛する祖国に同胞は戻ってきた。移民は犯罪人ではない。生きるための労働と進歩を望む人間だ」と述べた。
トランプ式交渉
結局のところ、この取り決めは米国から不法移民を強制送還するというトランプ政権の主要目標を達成する。しかし一連の出来事は、トランプ大統領が最初の任期中に使い古した戦略に基づく。すなわち市場に打撃を与え、経済に影響しかねない危機を生み出す最大限の強硬姿勢を貫いた後で、その危機を解決し、完全勝利を宣言するという戦略だ。
コストの問題もある。アトランティック・カウンシルのジオエコノミクス・センターでシニアディレクターを務めるジョシュ・リプスキー氏によれば、強引な関税や金融制裁の脅威は実行に移されればコロンビアに壊滅的な打撃を与える一方で、米国には戦略的なリスクが伴う。つまり他国は米国が脅す経済的処罰を警戒し、米国以外の貿易相手国や決済システムへの多様化を決定する可能性がある。
コロンビアは昔から米国を最大の貿易相手国としてきたが、実際にはすでに中国との関係強化に動いている。米国からの関税賦課が目前に迫った26日、ペトロ大統領は他の市場との関係深化を訴えた。同国の経験を見て、他国も追随する可能性がある。
「代償に見合わないピュロスの勝利ではないかと疑わざるを得ない。この脅威を認識する国が増えれば、その分、貿易関係を見直して多様化を検討する国は増えるからだ」とリプスキー氏。「脅しの乱用は長期的なコストを伴う。目的はおおむね達成されても、今後数カ月地域全体でのコストは高まるだろう」と述べた。
かといってペトロ大統領の勝利だったとも言えないかもしれない。
コロンビアの経済団体は貿易戦争がもたらす潜在的な影響に強い懸念を表明した。対米輸出は全体の３分の１近くを占めており、昨年１－11月の販売額は130億ドル（約２兆200億円）に上る。元閣僚や企業幹部からは、危機的状況の解決には外交ルートを活用すべきだと要求が出た。米国の強制送還計画に対するペトロ大統領の反応は、短絡的で経済的影響を考慮していないと批判するアナリストもいる。
コンサルティング会社テネオのマネジングディレクター、ニコラス・ワトソン氏はただ「米国による『弱い者いじめ』という認識が広がれば、ペトロ氏はそれに最初に立ち向かったリーダーと見られるようになるかもしれない」と述べた。
原題：Trump’s Victory Over Colombia Less Clear as Details Emerge (1)（抜粋）
