Rita Nazareth

  • 円は他の主要通貨をアウトパフォーム、2年債利回りは上げ幅縮小
  • パウエル氏会見、声明変更よりも「タカ派色かなり後退」-グーハ氏

29日の米国株式市場では主要3指数がそろって下落。米連邦公開市場委員会(FOMC)声明の発表後、市場では米金融当局がインフレへの警戒を強めているとの懸念が広がったが、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長がこれを和らげる発言を行い、相場は下げを縮めた。 

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6039.31-28.39-0.47%
ダウ工業株30種平均44713.52-136.83-0.31%
ナスダック総合指数19632.32-101.27-0.51%

  S&P500種は0.5%安。一時は1%近く下げていた。ナスダック100指数は0.2%、ダウ工業株30種平均は0.3%それぞれ下落。

  ハイテク大手は決算開始を前に軟調だった。引け後に決算を発表したマイクロソフトは時間外で一時5.5%下落。クラウド収入が市場予想に届かなかった。テスラとメタ・プラットフォームズは決算発表後に下げたが、その後持ち直した。

Stocks Rise As Jitters Over Tariff Threat Subside
米国株は下げを縮小したPhotographer: Michael Nagle/Bloomberg

  FOMCは予想通り、政策金利の据え置きを決定。政策声明では、インフレに関して前回と同様に「幾分高止まりしている」としたが、2%の目標に向けて進展を示したとの文言は削除された。これについてパウエル議長は単に文を短くするという決定であり、何らか有意なシグナルを送るものではないと説明した。

関連記事:FOMC、政策金利据え置き-インフレ見極めで利下げ一時停止 (1)

  エバコアISIのクリシュナ・グーハ氏は、パウエル議長の記者会見について、声明の変更よりも「かなりタカ派色が薄まった」との見方を示した。

  ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントのリンゼイ・ロズナー氏は今回のFOMC決定について「一時停止ボタンを押した」と表現。その上で「緩和サイクルはまだ終わっていないと当社では考えているが、FOMCは次の利下げに踏み切る前にインフレデータのさらなる進展を確認したいと考えている。インフレ抑制の進展に関する文言を削除した事実がそれを如実に物語っている」と述べた。

  バンクレートのグレッグ・マクブライド氏は「2%のインフレ目標に向けた進展は停滞しており、米金融当局もそれを認識している。政策声明に次回3月の会合で利下げが再開される可能性が高いことを示す手掛かりは示されなかった。そこへ到達するには良好なインフレデータが続く必要があるだろう」と述べた。

関連記事:【FOMC】一時停止ボタン、タカ派的据え置き-市場関係者の見方

Single Stocks Trail S&P 500 By The Most Since 1999

Only about one third of index members beat the benchmark

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Source: Bloomberg

  S&P500種は一握りの代表銘柄による支配がここ20年余りで最も強まっている。足元ではハイテク大手の株価は不安定な展開となっており、ウォール街にとっては特に大きな懸念材料だ。バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジスト、マイケル・ハートネット氏によると、データでは過去2年間にS&P500種を上回るパフォーマンスを達成できたのは、構成銘柄の3分の1未満にとどまる。

関連記事:米テク大手への集中、ITバブル以来の水準-DeepSeekショックで露呈

  アポロ・グローバル・マネジメントのトルステン・スロック氏は「DeepSeek(ディープシーク)ショックに伴うハイテク株の調整は、S&P500種における全体的な集中という問題を何ら変えていない」と指摘。「S&P500種に資金を投じている投資家は依然として、ハイテクセクターに対して極端に大幅なエクスポージャーを抱えている」と述べた。

  一方、ゴールドマン・サックス・グループのストラテジストは、テクノロジー銘柄が主導した今週初めの米国株下落は、明るい経済見通しを踏まえれば一時的にすぎないと指摘した。

  ピーター・オッペンハイマー氏率いるチームは、この株価下落は持続的な売りの前兆ではないとリポートで記述。「ほとんどの弱気相場は、リセッション(景気後退)懸念による減益予想によって引き起こされる」と述べ、今後12カ月でリセッションに陥る可能性は低いとの見方を示した。

関連記事:ハイテク株下落、米株弱気相場入りの前兆ではない-ゴールドマン

米国債

  米国債相場は長期債がアウトパフォーム。インフレ抑制の進展に関する文言が声明から削除された点を精査する動きが広がった。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.77%-0.6-0.13%
米10年債利回り4.53%-0.2-0.04%
米2年債利回り4.21%1.90.44%
  米東部時間16時55分

  金融政策に敏感な2年債利回りは一時約5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し4.25%を付けた。10年債利回りも一時は4bp上昇していた。

  金利スワップ市場が見込む年内の利下げ幅はFOMC声明発表前の48bpから43bpに縮小した。次の利下げが年央に行われるとの見方を織り込んでいる。

  パウエル議長が利下げを急がないと述べる一方で、インフレ抑制進展に関する文言を削除したことについては重視しない姿勢を示したことで、米国債は下げを縮めた。

  アクション・エコノミクスのエコノミスト、キム・ルパート氏は「パウエル氏はタカ派色が強いと思われた声明文の変更に対する市場の不安をいくらか和らげた」と述べた。

  ジュピター・アセット・マネジメントのマシュー・モーガン氏は「米金融当局は根強いインフレと米経済の底堅さを示すデータにますます懸念を強めている。投資家は2025年を通じて『より長くより高い』政策金利が経済に与え得る影響について警戒する必要があるだろう」と指摘。 「相対的に世界で突出する米経済の力強さ、ドル高、世界的な政策の乖離(かいり)は、米国の消費や雇用、住宅市場が冷え込み始めつつあるかもしれない時期に、不安定な状況を生み出す可能性がある。ボラティリティーは今後も継続すると予想され、経済のサプライズに対するヘッジ手段として足元の水準の国債には妙味がある」と述べた。

Traders Back Away From Pricing Two Fed Rate Cuts

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Source: Bloomberg

為替

  ニューヨーク外国為替市場ではドル指数がほぼ変わらず。パウエル議長は利下げを急ぐ必要はないとし、インフレ鈍化のさらなる進展を見極めるために利下げを一時停止したと説明した。一方、円は他の主要通貨をアウトパフォームした。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1302.120.930.07%
ドル/円¥155.25-¥0.29-0.19%
ユーロ/ドル$1.0422-$0.0008-0.08%
  米東部時間16時55分

  ブルームバーグ・ドル・スポット指数は声明発表後に一時0.2%余り上昇した。

  円はFOMC声明発表後に対ドルで一時は下げに転じ、155円60銭台を付ける場面もあったが、その後は155円台前半に持ち直した。 

  加藤勝信財務相は29日、米国のスコット・ベッセント財務長官とテレビ電話会談し、為替について両者の間で緊密に協議することを確認したと記者団に語った。

関連記事:為替で「緊密協議」を確認、加藤財務相がベッセント米財務長官と 

円は対ドルでしっかり

  カナダ銀行(中央銀行)による政策決定の発表後、カナダ・ドルは対米ドルで下げを縮小。同中銀は予想通り、0.25ポイントの追加利下げを決定する一方、トランプ米大統領による関税発動の脅威で景気先行きに不透明さが増す中で、今後の政策金利調整に関するガイダンスを撤回した。

関連記事:カナダ中銀、0.25ポイント追加利下げ-関税脅威でガイダンス撤回 (1)

  マネックスの外国為替トレーダー、ヘレン・ギブン氏は「今回のガイダンス撤回は、米国の金利および貿易政策が今後どうなるのか、世界が固唾(かたず)を飲んで見守っていることを浮き彫りにする」と述べた。

原油

  ニューヨーク原油相場は反落。米国の次期商務長官候補に指名されたハワード・ラトニック氏が、カナダとメキシコへの関税措置発動は回避可能との考えを示唆したことが材料視された。

  同氏は、不法移民や合成麻薬フェンタニルの問題で措置を講じれば、両国は新たな関税を避けられると述べた。

  サクソバンクの商品戦略責任者、オレ・ハンセン氏は「原油価格はトランプ米大統領の関税オーケストラのリズムに合わせて踊り続けている。2月1日に導入するとされるカナダへの関税措置が焦点だ」と指摘。29日の原油安については「全般的なレンジ相場において、悪いセンチメントが広がった」と付け加えた。

  石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成する「OPECプラス」は2月3日の次回会合で、トランプ氏の石油増産計画について議論する予定。タス通信が、カザフスタンのサトカリエフ・エネルギー相の発言として報じた。

関連記事:OPECプラス、2月に米国の石油増産計画について議論-タス通信

Oil Dips With Trade Risks and OPEC in Focus | Crude has had a bumpy start to the new year

  FOMCは予想よりもタカ派的だったと一部で受け止められ、それも石油需要に対する見通しを曇らせた。 

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物3月限は、前日比1.15ドル(1.6%)安の1バレル=72.62ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント3月限は1.2%安の76.58ドルで引けた。 

  金相場は下落。利下げを急ぐ必要がないというパウエルFRB議長の発言が影響した。

  利子の付かない金は通常、低金利下で投資妙味が高まる。

Gold Slips After Powell Says Fed in No Rush to Lower Rates | Bullion market also has been jolted by Trump tariff threats

  金スポット価格はニューヨーク時間午後3時5分現在、前日比9.33ドル(0.3%)安の1オンス=2754.18ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物4月限は、FOMC決定の発表前に1.10ドル(0.1%未満)安の2793.50ドルで引けた。

原題:Stocks Fall on Fed Day as Tech Earnings in Focus: Markets Wrap

Treasuries Slip as Traders Scrutinize Powell’s Inflation Remarks

Dollar Steady After Fed Pauses on Rates; Yen Gains: Inside G-10

Oil Sinks as Trump’s Commerce Pick Says Tariffs Can Be Avoided

Gold Declines After Powell Says Fed Is in No Hurry to Cut Rates(抜粋)