▽FOMC、政策金利据え置き-利下げ急ぐ必要ないとパウエル議長<bloomberg日本語版>2025年1月30日 4:09 JST 

Catarina Saraiva

  • 政策金利は中立金利水準を「有意に上回っている」-パウエル議長
  • 声明はインフレが2%目標に向けて進展を示したとの文言を削除
Jerome Powell
Jerome Powell Photographer: Al Drago/Bloomberg

米連邦公開市場委員会(FOMC)は1月28、29両日に開催した定例会合で、主要政策金利を据え置くことを決定した。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、FOMCは利下げを急いでいないと指摘。インフレ面でのさらなる進展を見極めるため、昨年に実施した連続利下げをいったん停止すると説明した。

FOMC声明:失業率は低水準でここ数カ月安定、労働市場は堅調維持

  会合後の記者会見で議長は、「金融政策スタンスが景気を抑制する度合いは以前より大幅に弱まっており、経済は強さを維持していることから、政策スタンスの調整を急ぐ必要はない」と述べた。

  フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジは4.25-4.5%。今回の政策決定は全会一致だった。2024年の終盤には合計で1ポイントの利下げを実施していた。

  力強い経済成長と堅調な労働市場を受け、金融当局としては政策金利を再調整する前にインフレ沈静化のさらなる証拠を待つ余裕が生まれている。またトランプ大統領による移民や関税、税制といった政策が経済に及ぼす影響を評価する時間も得られる。

  会見でパウエル氏は、「委員会はどのような政策が実施されるかを見守る姿勢だ」とし、「そうした政策が経済にどのような影響を及ぼすのかについて、妥当と考えられる評価を下す前に、政策自体が明瞭になるのを待つ必要がある」と述べた。

  次回3月会合で利下げを実施する可能性について問われ、当局者らは利下げに急いでいないとの発言をパウエル氏は繰り返した。その上で、FOMCはインフレ面でのさらなる進展を示唆する「指標が続けて示される」のを確認したいと強調した。

  約1週間前に大統領に就任したトランプ氏は、パウエル議長よりも自分の方が金利について理解しているとの見解を示している。パウエル氏はこの日の会見で、トランプ大統領からの接触はないとしたほか、最近のトランプ氏による金利に関する発言についてコメントを避けた。

  FOMC会合後に発表された声明では、インフレに関して前回と同様に「幾分高止まりしている」としたが、2%の目標に向けて進展を示したとの文言は削除された。

  この文言削除について記者会見で質問を受けたパウエル議長は、声明ではインフレに関する部分を「短く」すると決めただけだと説明。「シグナルを送ることを意図したわけではない」と述べた。

  声明では「委員会は雇用とインフレの目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると判断している」としたほか、「FF金利誘導目標レンジに対する追加的調整の程度とタイミングを検討する上で、委員会は今後入手するデータや変化する見通し、リスクのバランスを慎重に見極める」と改めて説明した。

  金融市場ではS&P500種株価指数が声明の発表後に下げを拡大したが、パウエル議長の会見後に下落幅を縮めた。米国債も声明発表の直後は下げが加速したが、その後は戻す展開となっている。円は対ドルで総じて堅調。1ドル=155円台前半での推移となった。

ドル・円の推移
ドルの対円相場出所:ブルームバーグ

中立金利

  金融当局はインフレ率が目標の2%に向けて確実に低下するよう、経済への下向きの圧力を維持したいと考えているが、現時点で当局者らにとって重要な問題は、金利がどの程度、経済活動を抑制しているかということだ。

  金融政策は有意に景気抑制的だが、非常に抑制的というわけではないとパウエル議長は説明。その上で、経済活動を促進も抑制もしない中立金利水準を政策金利は「有意に上回っている」と指摘した。政策当局者らはここ1年、予想を上回る経済活動や生産性の堅調な伸びを受けて、中立金利の予想を繰り返し上方修正している。

労働市場

  今回の声明ではまた、労働市場に関する表現が前回から変化。前回の声明では、労働市場の状況の緩和と失業率の上昇を指摘していた。

  この日の声明では「失業率はここ数カ月、低水準で安定しており、労働市場の状況は堅調を維持している」と記された。

  FOMCは昨年12月、2025年の利下げ回数が2回にとどまるとの見通しを示唆。回数の予想は従来の想定から減少した。

  FOMCは次回3月の会合で、参加者による最新の経済・金利予測を公表する。

原題:Powell Says Fed Doesn’t Need to Be in a Hurry to Lower Rates(抜粋)