Rita Nazareth
- トランプ氏関税発言で不安定な値動きに、カナダとメキシコ通貨下落
- 円は対ドルで上昇、オプション市場では円買い需要の高まり示唆
30日の米国株式相場は反発。ただ、トランプ大統領が予告通り、２月１日にカナダとメキシコに対する関税を発動する方針を改めて表明したことで、引けにかけて不安定な展開となった。
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| 株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| Ｓ＆Ｐ500種株価指数 | 6071.17 | 31.86 | 0.53% |
| ダウ工業株30種平均 | 44882.13 | 168.61 | 0.38% |
| ナスダック総合指数 | 19681.75 | 49.43 | 0.25% |
引け後に発表したアップルの決算は精彩を欠く内容だった。
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当初は米経済の主力エンジンである個人消費の力強さが改めて意識され、企業収益拡大への期待から堅調に推移していた。
2024年10－12月（第４四半期）の米国内総生産（ＧＤＰ）は前期比年率2.3％増と、伸びは市場予想の2.6％増を下回った。だが、個人消費が4.2％増となり、2023年１－３月（第１四半期）以来の大幅な伸びを記録した。
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Ｓ＆Ｐ500種株価指数の構成銘柄のうち約80％が値上がり。小型株など景気敏感株が総じてアウトパフォームした。Ｓ＆Ｐ500種の均等加重バージョンであるイコールウエート指数は１％上昇。さらに幅広い銘柄に買いが広がり強気相場を支えるとの期待が高まった。
これはＳ＆Ｐ500種におけるハイテク株の「集中リスク」に対する懸念を和らげるだろう。
リソルツ・ウェルス・マネジメントのキャリー・コックス氏は「この強気相場はまだ続いており、経済が順調に推移し金利が下がれば、今後数か月に株高の裾野がさらに広がると想定すべきだろう」と指摘。人工知能（ＡＩ）のストーリーが「尽き果てた」のではなく、「長らく無視されてきた人気のないセクターに多くのチャンスがあるということだ」と述べた。
テスラ、メタ・プラットフォームズ、ＩＢＭが前日引け後に発表した決算で明るい見通しを示したことも相場を支援した。半面、見通しが期待外れとなったマイクロソフトと宅配大手ユナイテッド・パーセル・サービス（ＵＰＳ）は売られた。
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クリアブリッジ・インベストメンツのジョシュ・ジャムナー氏は「全体的に見ると、米経済は2025年にかけて堅調に推移している。経済成長と企業収益の間には強い相関関係があることを考慮すると、リスク資産を支えるはずだ」と述べた。
米連邦公開市場委員会（ＦＯＭＣ）は前日、予想通り政策金利の据え置きを決定。インフレ鈍化の進展が停滞していることを受け、忍耐強いアプローチが正当化されるとの認識を示した。
ステート・ストリート・グローバル・マーケッツのシニア・マクロ・ストラテジスト、マービン・ロー、ホープ・アラード両氏は「今年半ばまで『忍耐強く』『急がない』というのがＦＯＭＣの方針のようだ」と指摘。インフレの軌道は不安定なため、米金融当局は良好なデータが出ても、後になって例外的な数値だと判明するリスクもあるため、深読みしないよう慎重になるだろうと述べた。
米国債
米国債相場では、10年債利回りがほぼ変わらずの4.53％で終えた。トランプ氏の関税発言で利回りが押し上げられる場面もあった。
| 国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
|---|---|---|---|
| 米30年債利回り | 4.76% | -0.6 | -0.13% |
| 米10年債利回り | 4.52% | -1.2 | -0.27% |
| 米２年債利回り | 4.21% | -0.6 | -0.15% |
| 米東部時間 | 16時56分 |
前日のＦＯＭＣ声明を消化する動きが続いたほか、欧州中央銀行（ＥＣＢ）の政策決定後のユーロ圏債券の上昇、米新規失業保険申請件数の予想外の減少などが材料視された。
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為替
ニューヨーク外国為替市場では、ブルームバーグ・ドル・スポット指数が上昇。トランプ大統領がカナダとメキシコに対する関税措置を発表する意向を改めて表明したことで、この日の高値をつけた。カナダ・ドルは１％余り下落した。
| 為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| ブルームバーグ・ドル指数 | 1302.74 | 0.62 | 0.05% |
| ドル／円 | ¥154.29 | -¥0.93 | -0.60% |
| ユーロ／ドル | $1.0392 | -$0.0029 | -0.28% |
| 米東部時間 | 16時56分 |
ドル指数はトランプ氏の発言を受けて一時0.2％上昇。その後はほぼ変わらずに押し戻されている。
ドル指数は取引時間の大半をマイナス圏で推移していた。これについてマネックスの外国為替トレーダー、ヘレン・ギブン氏は、米ＧＤＰの伸びが市場予想に届かなかった点は重要な要因だとし、「第３四半期（７－９月）よりも前に利下げが実施される可能性が意識された」と述べていた。
円は対ドルで上昇。一時は約0.9％高の153円79銭まで買われた。
日本銀行の氷見野良三副総裁は日銀の経済・物価見通しが実現すれば、追加利上げによって金融政策の正常化を継続していく方針を改めて示した。
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氷見野氏の発言後、通貨オプション市場では円に対する強気な見方が約２カ月ぶりの水準に高まった。
ドルを買って円を売る権利（コール）の需要とドルを売って円を買う権利（プット）の需要の差を示すリスクリバーサル（１カ月物）はマイナス1.4％と、終値ベースで昨年12月以来の水準を付けた。これは円買い需要が高まっていることを示す。
ユーロは対ドルで下落。欧州中央銀行（ＥＣＢ）の政策会合を受けて、一時は0.4％上昇していた。
ＥＣＢはこの日、0.25ポイントの利下げを決定。より大幅な利下げを求める声が出るのではないかと警戒されていたが、ラガルド総裁が「決定は全会一致」だったと述べ、こうした懸念が和らいだ。
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原油
ニューヨーク原油先物相場は小幅高。日中は方向感に欠く展開となった。市場では、トランプ米政権による関税賦課の可能性が意識されている。
トランプ大統領に次期商務長官候補に指名されたハワード・ラトニック氏は29日、不法移民と合成麻薬フェンタニルの問題に取り組めばカナダとメキシコは共に関税を回避できる可能性があるとの見解を示した。トランプ氏はカナダとメキシコに25％の関税を２月１日発効で賦課すると示唆している。
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カナダは１月、日量平均410万バレルを米国に輸出した。カナダ産原油の価格は不安定な状況が続いている。関税への懸念でカナダ産原油の米国産原油に対するディスカウントは一時、過去半年で最大となったが、その後ラトニック氏の発言を手掛かりに縮小した。
ニューヨーク商業取引所（ＮＹＭＥＸ）のウェスト・テキサス・インターミディエート（ＷＴＩ）先物３月限は、前日比11セント（0.15％）高の１バレル＝72.73ドルで終了。ロンドンＩＣＥの北海ブレント３月限は29セント（0.4％）上昇し76.87ドルで引けた。
金
金相場は反発。スポット価格は過去最高値を更新した。ドルが下落したほか、トランプ米大統領の関税措置を巡り懸念が広がる中で安全資産を求める動きが強まった。
金スポットは一時1.4％高の１オンス＝2798.59ドルと、昨年10月に付けたそれまでの最高値を上回った。金はドル建てで取引されるため、ドルが下落すると金の投資妙味が高まる。
ブルー・ライン・フューチャーズのチーフ市場ストラテジスト、フィル・ストライブル氏は「トランプ大統領が今後どのような政策を打ち出すかは不透明だ。関税などの政策は米国の成長に影響を与え得る」とした上で、「物価が上昇する中で成長が鈍化すれば、スタグフレーションに陥る。そうした環境下では、金は特に高いパフォーマンスをもたらす商品の一つだ」と指摘。「投資家はその状況に備えてポジションを組んでいると思う」と述べた。
膨張する米国の債務に対する継続的な懸念も、金の妙味を高めている。中央銀行が準備資産の多様化を図り、ドルへの依存度低下を目指す中、多くのアナリストは金が今年も上昇を続けるとみている。
金スポットはニューヨーク時間午後２時50分現在、前日比33.56ドル（1.2％）高の１オンス＝2792.92ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物４月限は、51.70ドル（1.85％）上昇の2845.20ドルで引けた。
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