Rita Nazareth

  • 市場は7日の雇用統計待ち、ベッセント長官発言で国債は下げ渋る
  • 業績見通し嫌気しアマゾンは時間外で大幅安、金は反落-原油は続落

6日の米株式市場ではS&P500種株価指数が小幅続伸。強弱混在の企業決算を消化しつつ、7日発表の雇用統計に身構える格好となった。引け後にアマゾン・ドット・コムが発表した業績見通しはアナリスト予想に届かず、株価は時間外で大きく下げた。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6083.5722.090.36%
ダウ工業株30種平均44747.63-125.65-0.28%
ナスダック総合指数19791.9999.660.51%

  クアルコムは新型端末向けの需要が振るわないとの懸念から、株価が下落。ペロトン・インタラクティブは強気な業績見通しを好感して上昇。フィリップ・モリス・インターナショナルは上場来高値を更新。ニコチンパウチの売上高が好調だった。フォード・モーターは利益見通しが警戒されて株価は下げた。

US Stock Futures Slump After Trump Follows Through On Tariffs
ニューヨーク証券取引所Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

  この日発表された経済統計では、新規失業保険申請件数が増加したが比較的抑制された状況は続いていることが示された。米労働生産性は2024年10-12月(第4四半期)、着実なペースで上昇した。7日は1月の雇用統計だけでなく、前年3月までの12カ月間の年次ベンチマーク(基準)改定にも注目が集まる。

  モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのマネジングディレクター、クリス・ラーキン氏は「今週発表された統計はこれまでのところ、労働市場では雇用も解雇も大規模ではなさそうだということを浮き彫りにした」と指摘。「7日の雇用統計も似たような状況を描くのか見てみたい。それが分かるまで市場は様子見の姿勢でいたいかもしれない」と述べた。

  パイパー・サンドラーがまとめたデータによると、雇用統計発表後のS&P500種は上下いずれかの方向に0.9%動くとの見方が、オプション市場からうかがわれる。過去1年に実際の雇用統計発表後に見られた値動きの平均とほぼ一致する。

  ハイテク株の比重が大きいナスダック100指数は0.3%上昇。大型ハイテク株7強で構成する「マグニフィセントセブン」指数は0.5%上げた。小型株のラッセル2000指数は0.3%下げた。

Revision Suggests More Moderate US Payrolls Growth

Drop in early benchmark tally based on state unemployment data biggest since 2009

https://www.bloomberg.com/toaster/v2/charts/308d138082f34e2e9cc0dbc82bf47d04.html?brand=cojp&webTheme=default&web=true&hideTitles=true

Source: Bureau of Labor Statistics, Bloomberg

  ニュースレター「ザ・セブンズ・リポート」の創業者トム・エッセイ氏は「7日の雇用統計が市場にとって重要なのは、ゴルディロックス的な内容となれば関税や政策といったノイズが存在する今の環境において相場のサポートになりそうだからだ」と指摘。「しかしゴルディロックスではなかった場合は、リスク資産への向かい風を強め、株価を圧迫する可能性が高い」と述べた。

  米労働統計局(BLS)が発表する毎年1月の雇用統計には、前年3月までの12カ月間の年次ベンチマーク(基準)改定が含まれる。通常ならあまり注目されることはないが、BLSが8月に発表した推計値では81万8000人と、2009年以来最大の下方修正となることが示されており、今回は市場関係者の関心が高まっている。

  エコノミストは年次改定での下方修正幅が、実際には60万-70万人程度になると予想しており、予想通りならば市場には安心材料になり得る。1月の非農業部門雇用者数は17万人増が予想されている。その前の2カ月はいずれも20万人を超える増加だった。大型ハリケーンによる被害からの回復が反映された。

  パラス・キャピタル・アドバイザーズのガウラブ・マリク氏は「非農業部門雇用者数の伸びが17万から20万人の間に収まれば、市場はボラティリティーを引き起こすことなく、この数字を十分吸収できるはずだ」と指摘。「これを大きく上回る数字だった場合、年内の追加利下げ見通しはなくなる可能性がある。大きく下回る数字なら、労働市場の冷え込みに対する懸念が浮上する」と述べた。

Source: 22V Research.
雇用統計の注目点出所;22Vリサーチ

  22Vリサーチが実施した投資家調査によれば、雇用統計のデータが「リスクオン」を誘発するとの回答はわずか24%。30%が「リスクオフ」を予想し、46%が「まちまち/軽微」と答えた。

  22Vのデニス・デブシェール氏は「投資家の焦点は平均時給に移った。前月は雇用者数と失業率に関心がはるかに集中していた」と述べた。

JPMorgan
個人投資家のセンチメント出所:JPモルガン

  個別企業のニュースとしては、ソフトバンクグループ傘下の英半導体設計会社アーム・ホールディングスが、今四半期の慎重な売上高見通しを示した。ハネウェル・インターナショナルはアクティビスト(物言う投資家)からの圧力を受け、会社を分割しそれぞれ別の株式上場企業とする。

米国債

  米国債相場は小幅安。ベッセント財務長官の発言を受けて下げ幅を縮小した。ベッセント氏はトランプ政権下で10年債利回りが低下軌道をたどるとの見方をあらためて示した。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.64%0.10.02%
米10年債利回り4.43%1.40.32%
米2年債利回り4.21%2.50.60%
  米東部時間16時50分

  朝方に発表された新規失業保険申請件数は予想を上回り、市場はわずかに反応した。国債発行見通しに関するベッセント氏の発言は、前日に発表された四半期定例入札の規模を再確認する内容だった。

  ベッセント氏はブルームバーグとのインタビューで、連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長を批判することは控えたいと述べ、トランプ政権は利下げの有無よりも、10年債利回りの低下につながる政策行動に重点を置いていると述べた。

外為

  ブルームバーグ・ドル指数は朝方の上昇分を失い、前日終値付近。波乱要因となり得る雇用統計の発表を7日に控え、一時は小幅安となる場面もあった。円は対ドルで上昇。一時は1ドル=151円24銭まで上げた。日本銀行の田村直樹審議委員によるコメントが影響した。ポンドは下落。イングランド銀行(英中央銀行)は25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げを決定。金融政策委員会(MPC)のうち、2人は0.5ポイントの引き下げを主張した。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1297.41-0.29-0.02%
ドル/円¥151.47-¥1.14-0.75%
ユーロ/ドル$1.0385-$0.0018-0.17%
  米東部時間16時51分

  主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は、一時0.1%下げた。米新規失業保険申請件数は21万9000件と、予想を上回った。

  1月の非農業部門雇用者数は17万人増が予想されている。ロサンゼルス近郊の大火事が影響するとみられている。

関連記事:米雇用者数、年次改定で下方修正へ-想定ほどは落ち込まない見通し

  UBSのエコノミスト、ソニア・メスキン氏は「1月は季節的な影響を受けやすい。天候要因もある」と指摘。単にノイズを予想するだけだと述べた。

  ベッセント米財務長官はブルームバーグとのインタビューで、米国はトランプ大統領の下でも「強いドル」政策を続けると表明した。

  ウェルズ・ファーゴの新興国市場担当エコノミスト兼外国為替ストラテジスト、ブレンダン・マッケンナ氏は「結局のところトランプ氏は弱いドルへの操縦はできないとわれわれは勘ぐっていたが、ベッセント氏のコメントは米政府機関が概して強いドル政策を今も支持するとの見方を裏付けたようだ」と話した。

  ベッセント氏はまた、政策金利に関してホワイトハウスは連邦準備制度理事会(FRB)議長に圧力をかけることはしないとも述べた。

  対円でのドルは週間では11月末以来の大幅な下げに向かっている。

  日銀の田村審議委員は、現在0.5%程度の政策金利を2025年度後半には少なくとも1%程度まで引き上げることが必要との見解を示した。

関連記事:ヘッジファンド、円への注目高める-関税発動延期でドルロング解消

原油

  原油先物相場は続落。トランプ大統領はこの日、原油価格の引き下げにあらためて強い意欲を示した。

  トランプ氏は全米祈祷朝食会での演説で、国内での石油生産を促進してエネルギー価格を下げると表明。トランプ政権の内務長官とエネルギー長官の下で「これまで誰もみたことがないほど多くの液体の金(原油・ガス)が地下から掘り出されることになる」とし、「われわれはエネルギー価格を下げるつもりであり、他のすべてはそれに続く」と語った。

Oil Whipsawed by Trump Policies
WTI先物出所:NYMEX

  フランチェスコ・マルトチャ氏らシティグループのアナリストは、「トランプ大統領が原油市場に与える影響は最終的には弱材料になろうとの見方を当社は維持する」とリポートで指摘。「具体的には、トランプ氏はこれまで一貫して、エネルギー価格の低下で米国のインフレ、金利、債務、生活費の問題を解決すると強調してきた。これこそ、同氏に大統領選勝利をもたらした核心的な問題だ」と記した。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物3月限は、前日比42セント(0.6%)安の1バレル=70.61ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント4月限は0.4%安の74.29ドルで引けた。

  金相場は反落。スポット価格は前日まで5営業日続伸し、過去最高値を更新していた。

  シティグループのアナリストは、トランプ米大統領の政治姿勢がもたらす地政学的緊張が安全資産への需要を強めるとの理由で、金の強気相場は継続するとみている。

  同行のアナリストチームはリポートで、投資家が安全資産として金を選好する動きは今後も続き、中央銀行も金準備を積み増す公算が大きいと指摘。金価格が向こう3カ月以内に1オンス=3000ドルに上昇するとの予想を示した。

関連記事:金価格は3000ドルに上昇へ、「トランプ2.0」の逃避需要継続-シティ

  金スポット価格はニューヨーク時間午後2時15分時点で、前日比15.59ドル(0.5%)安の1オンス=2851.65ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物4月限は、同16.30ドル(0.6%)安の2876.70ドルで引けた。

原題:Stocks Up Before Jobs as Amazon Hit in Late Hours: Markets Wrap(抜粋)

原題:Treasuries End Placid Session With Small Losses, Curve Flatter(抜粋)

原題:Dollar Wobbles Ahead of Jobs Report; Pound Down: Inside G-10(抜粋)

原題:Oil Dips as Trump’s Iran Plans, Vow to Lift Output Swing Market (抜粋)

原題:Trump Pledges to Drive Oil Prices Down  (抜粋)

原題:Citi Sees Gold Soaring to $3,000 on Tensions Triggered by Trump(抜粋)