国民民主党の税制調査会後、記者団の取材に答える古川元久代表代行(左)(25日午前、国会で)

国民民主党の税制調査会後、記者団の取材に答える古川元久代表代行(左)(25日午前、国会で)

 国民民主党が「年収103万円の壁」の見直しを巡る与党との協議で、公明党が示した妥協案を受け入れるかどうかでジレンマを抱えている。国民民主内には、妥協すれば夏の参院選に向けて支持を失いかねないことへの警戒感が強い一方、協議が破談となれば、結党以来重視してきた政策実現の機会を逃すためだ。

■主張

 国民民主の古川元久代表代行は25日の党税制調査会後の記者会見で、所得税の非課税枠の上乗せを年収に応じて変動させる与党案について、「所得制限をつけることはおかしい。撤廃を求めていきたい」と述べ、所得制限をつけない国民民主案の実現を主張した。

 3党協議で示された公明案は年収850万円の年収要件を設け、年収が低くなるほど段階的に非課税枠を上乗せする案だ。自民党が示した年収500万円以下を対象に上乗せする案を拡充したもので、年収200万円以下の場合は非課税枠が最低160万円となる。

 当初の政府案では、会社員らの非課税枠が123万円だったこともあり、国民民主内には「大幅に前進した案であることは確かで、所得制限さえ外せば容認できる」との声がある。

 ただ、国民民主はこれまで、所得制限なしの「178万円」を主張してきたこともあり、25日の党税制調査会では所得制限撤廃を求める声が相次ぎ、同日に予定されていた3党の税制調査会長による協議は見送られた。国民民主は昨年の衆院選で、積極的なSNS戦略で支持を拡大した経緯がある。党幹部は「今回の公明案に対し、SNS上では否定的な反応が多い。参院選に向けて安易な妥協はできない」と語る。

■与党

 一方、与党は25日、日本維新の会との間で、高校授業料の無償化を柱とする予算案修正で正式合意した。維新も年収の壁対策は掲げており、与党内では、国民民主との協議が決裂した場合、維新と協力して公明案を実現する案も取り沙汰されている。

 国民民主は従来、政策実現を優先して与党との政策協議もいとわない姿勢で、他の野党と一線を画してきた。看板政策である「年収103万円の壁」見直しが、自公維3党によって実現することは、政策実現の成果を維新に奪われることも意味する。古川氏は25日の記者会見で、「こちらから協議を打ち切るつもりはない」として、与党との協議を継続したい意向も示した。