Rita Nazareth

  • 円は一時149円89銭まで下落、その後は下げ埋める-ドル指数上昇
  • エヌビディアは3.7%高で終了、10年債利回り6営業日連続で低下
The New York Stock Exchange (NYSE) in New York, US. 
The New York Stock Exchange (NYSE) in New York, US.  Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

26日の米株式市場ではS&P500種株価指数がほぼ変わらず。米国債利回りは低下した。関税政策などトランプ米大統領の一連の発言を消化する動きとなった。

  円は対ドルで下げを埋めて1ドル=149円台前半。ドル指数は小幅上昇した。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数5956.060.810.01%
ダウ工業株30種平均43433.12-188.04-0.43%
ナスダック総合指数19075.2648.870.26%

  トランプ大統領は、カナダとメキシコ、欧州連合(EU)に対する関税措置について、相矛盾するようにみえる発言をいくつも行った。対カナダ・メキシコへの関税措置はこれまで表明していた3月でなく4月2日に発動すると述べた。

関連記事:トランプ氏、カナダ・メキシコ関税は4月2日発動-意図は不明瞭

  インタラクティブ・ブローカーズのスティーブ・ソスニック氏は、朝方の株価持ち直しは、これまでの反発を試す動きよりも長続きしたが、この日の関税に関する話が「ムードを台無しにした」と指摘。

  22Vリサーチのデニス・デブシェール氏は、トランプ氏の発言を受けて、国債利回りと株価は下げに転じたと説明した。

  ステート・ストリートのマービン・ロー氏は、「関税導入の時期や程度に関して政権からやや矛盾する発言が出てきたため、投資家は様子見に回っている。トランプ氏が関税計画を再び延期したり、縮小したりするのではないか、あるいは攻撃的な姿勢の始まりになるのか、議論は続いている」と述べた。

  その上で、国債利回り低下とドル高、株安の組み合わせは、広範な関税が経済成長に及ぼし得る負のループを投資家が理解し始めていることの表れだとロー氏は続けた。

  通常取引終了後にエヌビディアが発表した売上高見通しは、強気な内容となった。2-4月(第1四半期)売上高は約430億ドルを見込む。ブルームバーグが集計したアナリスト予想平均は423億ドルで、最高480億ドルの見通しもあった。

  エヌビディアは3.7%高で終了した。ナスダック100指数は0.2%高。一方、テスラやアップルは値下がりし、相場全体の上値を抑えた。

  その他の企業ニュースでは、アマゾン・ドット・コムはAIを搭載した新たな音声アシスタント「アレクサ」を発表した。10年余り前のデビュー後で最大の刷新となる。スーパー・マイクロ・コンピューターは一時23%急伸。遅れていた2024年度(6月30日終了)の年次報告書(フォーム10K)をナスダックが新たに定めた期限までに提出できたことで、上場廃止懸念が後退した。アップラビンは一時23%急落。空売り投資家2社が同社に批判的なリポートを発表した。

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国債

  米国債は上昇。7年債入札が良好な結果となった後、上げ幅を拡大した。10年債利回りは6営業日連続での低下となった。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.51%-4.7-1.02%
米10年債利回り4.25%-4.0-0.94%
米2年債利回り4.07%-2.3-0.55%
  米東部時間16時53分

  短期金融市場では今週、連邦準備制度理事会(FOMC)が0.25ポイントの利下げを今年2回、来年にはさらに1回実施するとの見通しが再び完全に織り込まれ、政策金利は3.65%前後まで低下すると予測されている。

  モルガン・スタンレーは、3.25%への利下げが織り込まれた場合、10年債利回りは4%を割り込む可能性があるとの見方を示した。同行は、28日に発表される1月の個人消費支出(PCE)価格指数が鈍化すると予想している。

  マシュー・ホーンバック氏率いるモルガン・スタンレーのストラテジストチームはリポートで「コアPCE価格指数の改善を受けて、FOMCの姿勢がハト派寄りになる場合、投資家はデュレーションを長くし、市場が織り込む金利の最低水準がさらに低下するだろう」と指摘した。

関連記事:米国債市場、FRBの方向転換を予想-インフレよりも景気鈍化を憂慮

  EYのチーフエコノミスト、グレゴリー・ダコ氏は「米経済は堅調な勢いを維持している」としつつ、「貿易や財政、規制政策を巡る不確実性の高まりが見通しを曇らせている」と指摘。「金融市場のボラティリティーにつながるほか、企業や消費者は様子見姿勢を強めるかもしれない」と述べた。

  シット・インベストメント・アソシエーツのブライス・ドティ氏は、この日実施された7年債入札も強い結果となったのは低調な経済指標を反映しているとし、「株式から債券へのローテーション」を後押しすると話した。

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外為

  外国為替市場ではブルームバーグのドル指数が小幅に上昇。円は対ドルで朝方は軟調に推移し、一時0.6%安の1ドル=149円89銭まで売られたが、その後は下げを埋めた。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1286.391.710.13%
ドル/円¥149.10¥0.070.05%
ユーロ/ドル$1.0483-$0.0031-0.29%
  米東部時間16時53分

   三村淳財務官は、南アフリカ・ケープタウンで開幕した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の初日の討議後、日本銀行の政策に対する市場の見方と「齟齬(そご)はない」と述べた。

  三村財務官は足元の経済を踏まえて、日銀から金融政策の今後の見通しについてメッセージが出てきているとの認識を示し、そうしたメッセージとその背後にあると思われる市場の認識について、自分自身も「基本的に齟齬はない」と受け止めていると述べた。

  日銀は1月の決定会合で政策金利を0.5%に引き上げ、今後も経済物価情勢が見通し通りに改善していけば利上げを続けていく姿勢を示している。

関連記事:三村財務官、日本銀行の政策に対する市場の見方と「齟齬はない」

ドル・円の推移

  クレディ・アグリコルのG10FX戦略責任者、バレンティン・マリノフ氏は「米利下げ観測が引き続き強まっており、これが米国の金利と利回りを圧迫し、相対的なドルの魅力を損なっている」と指摘。「重要なデータの公表を週内に控え、為替投資家は様子見姿勢を続けるとみられる。ドルクロスがここ最近の狭いレンジから抜け出すことはなさそうだ」と述べた。

  TJM FXの戦略責任者アルバロ・ビバンコ氏は、「米国のデータはそれなりに弱い」と指摘。「市場はドルのロングポジションを軽くしたいと考えている」と話した。

  トランプ大統領がカナダとメキシコへの関税措置についてこれまで表明していた3月でなく4月2日に発動すると述べ、カナダ・ドルとメキシコ・ペソは上昇。欧州連合(EU)にも関税を課すと発言し、これはユーロの重しになった。

  XPインベスチメントスのストラテジスト、マルコ・オビエド氏(サンパウロ在勤)は、「トランプ氏は信用を失いつつある」と指摘。「市場は関税のストーリーを恐らくそれほど材料視しなくなるだろう」と述べた。

原油

  ニューヨーク原油先物相場は続落し、年初来安値を更新して終えた。トランプ米大統領から関税に関して矛盾するかのような発言が相次いだことが背景にある。

  トランプ大統領の政策を巡る不透明感と、貿易戦争が世界に広がるリスクがくすぶっており、原油の2大消費国である米国と中国の経済成長およびエネルギー需要見通しの重しとなっている。

US Oil Trades in the $60s Range as Outlook Weakens | Commercial inventories in US fell by 2.3M bbls last week

  SEBのチーフ商品アナリスト、ビャルネ・シールドロップ氏は 「トランプ大統領の措置は消費者と企業の信頼感を損ない、実際の消費も下押しするだろう」と述べた。

  ホワイトハウスがウクライナのゼレンスキー大統領の訪米日程を確認したことも相場を圧迫した。ウクライナ停戦合意が実現すれば、ロシア産原油の供給が拡大するとの思惑を誘った。またイラクは、クルド人自治区との間で石油輸出を再開することで合意した。

関連記事:トランプ氏がゼレンスキー氏と28日会談、ウクライナ資源取引に署名へ

  トランプ氏はこの日、ベネズエラでの事業運営に必要な石油ライセンスを取り消すつもりだと発言。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成する「OPECプラス」による減産縮小先送りの可能性など、潜在的なプラス材料もあったが、貿易や供給に関するニュースに打ち消された。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物4月限は前日比31セント(0.4%)安の1バレル=68.62ドル。ロンドンICEの北海ブレント4月限は0.7%下げて72.53ドル。

  金スポット価格は総じて小動き。最高値更新が続いていたこともあり、前日は利益確定の動きが出ていた。

  スポット価格は1オンス=2915ドル近辺と、24日につけた最高値を約40ドル下回っている。

  足元では弱い指標を受けた米利下げ観測の高まりや、金を裏付けとする上場投資信託(ETF)への需要が相場を支えている。ブルームバーグがまとめたデータによると、先週の金ETFへの純流入額は2022年以来の大きさとなった。

  スタンダードチャータードのアナリスト、スキ・クーパー氏は、ETFへのマネー流入が「金相場の次の上昇局面をけん引し、テクニカルトレンドと現物市場の弱さを相殺する以上の効果をもたらすかもしれない」と述べた。

  市場はまた、トランプ大統領が商務省に調査を指示した銅に対する関税の行方や、28日発表の個人消費支出(PCE)価格指数にも注目している。

  金スポット相場はニューヨーク時間午後3時17分現在、前日比1.88ドル安の1オンス=2913.09ドル。一方、ニューヨーク商品取引所の金先物4月限は前日比11.80ドル(0.4%)高の2930.60ドル。

原題:Stock Traders Puzzled by Tariff Talks as Nvidia Up: Markets Wrap(抜粋)

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